第14話買い物と苦手なタイプ
「公爵様ですか?私、メイベルって言います。今日はお姉様のドレスを買いに来たんですかぁ?」
「そうだが…」
クロード様はメイベルにニコリともしない。
でもメイベルにとったらそんなことは気にならないのだろう。
「では、私の好みをお伝えしなくてはいけませんね」
「何故だ?」
「えっ、だってドレスを買って下さるのでしょう?」
わけがわからないという雰囲気のクロード様といつも通り私のドレスを取る予定に思われるメイベルは話が噛み合っていないようだった。
この場でメイベルの発言の意味がわかるのは私だけだろう。
「ドレスを買うのはラケルにだ。君ではない」
クロード様は私に、とハッキリ言って下さった。
いつも両親なら、私のドレスもメイベルが着ることを前提に買うことが多いからここ1年ほどはメイベルと買いに来ることはなかった。
いつものことと思いつつも、やはり自分のドレスを勝手に持っていかれるのは不愉快だったのだ。
でも、クロード様は私に、と言って下さった。
当たり前のことかもしれないが、私には嬉しい言葉だったのだ。
「メイベル、このドレスだけはあげませんよ。二人とも店で恥ずかしい真似は止めて下さいね」
そう言うとメイベルは、でもぉ、と食いつこうとするが、クロード様は二人を見据えるようにハッキリと言った。
「ラケルとの時間を邪魔しないでもらおう。…ラケル、行こうか」
「はい」
そして、クロード様が私の肩を引き寄せ奥のゲストルームへ連れて行ってくれた。
ゲストルームでソファーに二人で並んで座ると目の前にグラスに注がれたシャンパンとドレスのカタログが置かれた。
マダムとスタッフは、ごゆっくりお選び下さい。とクロード様に気を遣ったのか、私達二人にしてくれた。
隣のクロード様は、大股を開き下を向いて座っている。
「…あれが妹か?」
「そうですよ」
「…なんだ」
「何ですか?」
「ああいうタイプが苦手なんだ」
「……」
クロード様はメイベルが苦手らしい。
「どうしてあんな甘えた話し方なんだ!」
「す、すみません」
「ラケルのせいじゃない。似てなくて良かった」
クロード様は深呼吸し、取り乱してすまないと言った。
「いえ、取り乱したと言うほどでは…」
「ドレスのことだが、妹が勝手に持って行くと言ったな」
「多分今回も狙ってますね。でも、今回だけは絶対渡しませんから」
せっかくクロード様が買って下さるのに、帰ったら早速隠してやるわ!
「問題は隠すところですね。汚したくないですし」
「…俺の邸に置いておくか?明日は俺の邸で支度をしたらどうだ?」
「ご迷惑では?」
「邸は俺だけしかいない。両親は領地の本邸に住んでいるし、使用人にもラケルが来ることは伝えておくから」
「でも、ドレスは一人で支度は出来ません。髪も結わないといけませんし…」
結婚したら侍女をつけるけど、今はメイドに手伝ってもらっている。
普段着なら一人でも問題ないが、ドレスはさすがに一人で支度は無理だ。
「母上が来た時に母上の侍女と一緒に支度を手伝っているメイドがいる。その者に支度をさせよう」
クロード様の邸に置いておくとメイベルに持っていかれることはないが、いいのかしら。
「…私がお邸にお邪魔して、将来クロード様の縁談に傷がつきませんか?」
「そんなことはない。…ラケル、君が嫌ではないなら…」
そう言われ、置いて頂こうかと脳裏をかすった時、クロード様は真剣な顔でこちらを見ていた。
「…では、お言葉に甘えて明日はクロード様のお邸で支度をさせて頂きますね」
「また、明日も迎えに行くからな」
「はい」
そして、この日に買って頂いたドレスはアラステア邸に届けて頂いた。
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