第9話ため息が出ます

クロード様が仕事が終われば来るというから、今度こそお茶ぐらい準備しなくては。


そう思い、邸のメイドにお茶やクッキーを持って来てもらい、テーブルに並べ待っていた。




そして、扉のノックの音が聞こえ、来たわ!と待ち構えたように笑顔で扉を開けた。




ノックをしてきた扉を開けると、そこにはクロード様ではなく、ハロルド様がいた。




ハァー、とため息が出そうだった。


さっきまでの笑顔を返して欲しい。




「何のご用ですか?」


「ラケル、君の態度は問題だ」


「はぁ、私の、ですか?」




来るなりそう言い出したハロルド様は偉そうな態度で今にもふんぞり返りそうだった。




「どうしてメイベルに意地悪をするんだ。夕べも俺の気を引こうとメイベルにも当て付けのように出ていって」


「私がいつ意地悪を?それに夕べは食事に誘われたと言ったはずです」




ハロルド様の言い分では、メイベルがハロルド様がいない時に、私が婚約者を横取りされたとメイベルに罵声を浴びせていることになっていた。




「昨日も部屋で近づくなと言ったらしいじゃないか?どう言い訳する。メイベルは泣いていたぞ」


「勝手にドレスを取っていくから、部屋に入らないでね。と言っただけです」


「言い訳は聞かん」




聞く気がないなら来るな!


もうすぐでクロード様が来るのに!


メイベルの泣き落としは技の一つですよ!




「君が俺の気を引きたいのはわかる。だが無駄だ。正式に婚約破棄の書面を交わしたからな。父上が領地から帰られたらそう報告する!」




まだ報告してないのか!


手紙くらい出せ!


婚約破棄に新しい婚約者なんてハーヴィ伯爵には報告するべきでしょう!


元々はハーヴィ伯爵が私をハロルド様の婚約者にと、申し込んできたのですから。


我が家が何も言わないのはわかるけど、ハーヴィ伯爵が言わないのはまだ知らなかったのか、と今わかった。


ハロルド様は一体この数日何をしていたのか。


いや、言わなくてもわかる。


メイベルとイチャついていたんだわ。




「ハロルド様、お父上のハーヴィ伯爵に早く報告した方がよろしいですよ。婚約なんて伯爵家にとったら大事なことです。それと、気を引く気は全くありませんから。勘違いをなさらないで下さい」


「また強がりを言って…、そういうところがメイベルと違い可愛くないのだ」




フンッと鼻を鳴らすハロルド様に苛つき、眉間にシワが寄った時、ハロルド様の後ろからクロード様の声がした。


暗がりで来ていたことに気付かなかったのだ。




「誰が可愛くないと?」




凄みのある声を発し、姿が平屋の灯りで見えるとクロード様はハロルド様を睨み付け迫力があった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る