第7話少しの気遣い
クロード様が手配して下さった馬車に乗り込み、クロード様との待ち合わせ場所に行くと、すでにクロード様は立って待っていた。
クロード様は自然に馬車の扉を開けて下さり私を降ろしてくれた。
「来てくれてありがとう」
「いえ、お待たせしましたか?」
「先程来たばかりで待つほどではない」
クロード様はタキシードに着替えており、騎士の隊服とはまた違ったイケメンぶりだった。
「仕事帰りではなかったですか?」
「食事をすると約束をしていたから、今日はタキシードを持って出勤したのだ」
どうやら、仕事終わりに着替えて来たらしい。
「ラケル」
「はい」
「迎えに行くと言って、迎えに行けずすまない。仕事で遅くなると思って…」
「お仕事ですから、大丈夫ですよ。お疲れ様です。馬車も手配して下さりありがとうございます」
そう言うとクロード様は、少しはにかむように笑った。
「食事なのだが、レストランの個室でいいだろうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
クロード様についてレストランに行くと中々の高級レストランだった。
既に予約をしていたのか、難なく案内された。
「予約をして下さっていたのですか? 」
「本当は邸に呼ぼうと思っていたのだが、いきなりではラケルが困ってしまうかと…」
そりゃ、いきなり彼女のフリをした偽物の彼女は呼べませんよね。
「お気遣いありがとうございます」
偽物の彼女だが、クロード様が私を気遣ってくれたことは事実だ。
ほんの少しの気遣いだが、なんだか嬉しくなり、素直にありがとうが言えた。
テーブルに着き、クロード様にこれからのことを聞いた。
いわば作戦の概要が知りたい。
「クロード様、彼女のフリとはどうしたらいいのですか?」
「…彼女がいると言ってしまったから、しばらくは付き合うフリをして欲しい」
「それはどのような?」
「………」
クロード様は無言だった。
まさか何も考えてないのか、と思うほどだった。
上司のご令嬢は、ルシール・ベイツ公爵令嬢という名前でクロード様にとって苦手なタイプらしい。
どんなタイプか聞くと、説明しづらい、と苦々しい顔になった。
「上司に今度晩餐に招待されている」
「ということは?」
「一緒に行って彼女らしく振る舞って欲しい」
「そこで見せ付けるわけですね」
「…君が嫌なら…」
「大丈夫です!しっかり彼女のフリをしますよ!」
クロード様に向かってガッツポーズをすると、クロード様は口角を少し上げ、微笑むように笑った。
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