第2話騎士様がやって来た
石畳の広がる街の中心には大きな噴水がある。
昼にはまだ早いが人の往来はいつも通りまずまずだ。
大きな噴水の側には、お知らせや求人募集のチラシが貼ってある。
結婚出来なかったら仕事は必要かも。
そう思い、足を止めた。
酒場のウエイトレスや皿洗い、様々な求人がある中で、騎士団の受付嬢の募集があった。
騎士団の受付嬢なら試験はあるが、まあまあの給料だろう。
試験はまだ何ヵ月か先だが、一応とっておこうと思い、チラシを一枚バックに折り畳み入れた。
近くには花屋もあり、部屋に花を飾るのもいいかもしれないと思い、寄ってみた。
「こんにちは、アイリスさん」
花屋の女主人のアイリスさんは顔見知りだ。
うちの邸にも花を届けて下さる。
「こんにちは、ラケル様。今日はどうされました?」
「少し花を頂こうかと思いまして」
「はい、ごゆっくり選んで下さい」
そう言うも、アイリスさんは店先でキョロキョロしていた。
話を聞くと配達の方がまだ帰って来ないらしく次の配達の時間が押しているようだった。
「私で良ければ、店番くらいしますよ」
「しかし…ラケル様にそんなこと…」
「短時間ですよね?大丈夫ですよ」
申し訳なさそうなアイリスさんを押すように、私は店番をした。
アイリスさんはすぐに帰りますから、と言って簡単な値段表の説明と予約の仕方を説明した。
店番と言っても、イベントもないから花屋に行列が出来ることはない。
カウンターに座り花の値段表を見ていると一人の騎士様がやって来た。
「いらっしゃいませ」
「花を予約したいのだが…」
「はい、どのようなものにいたしましょうか?」
「…わからないのだが…」
…わからないと言われても困る。
わからないなら来るな!、と言いたい。
心の声を隠し、アイリスさんの店が不評にならないように笑顔で接した。
「…どのような目的で?」
「…女性に贈るのだが…」
なんだ、彼女か。
それはそうだ。
この騎士様は見た目はかなり男前だ。
サラサラの銀髪に整った顔立ちだから、彼女がいてもおかしくない。
「では籠盛りにしましょうか?籠代もかかりますけど」
「かまわない」
籠の大きさを聞くと店で一番大きな籠盛りを騎士様は頼んだ。
「色はどうしますか?可愛い色にしましょうか?」
「そうだな…任せても良いだろうか?」
「はい。畏まりました」
花に近づき笑顔で色を聞くと騎士様は自分で選ぶ気がないのか、そう言った。
しかし、少しはにかんでいた。
きっと彼女を思い出しているのかなと思った。
予約表に名前を記入してもらい、明日には取りに来るらしい。
まあ、私は今だけの店番だからもう会うことはないと思っていた。
「…ではよろしく頼む」
「はい、お任せ下さい」
「…ありがとう」
また笑顔で言うと、騎士様も少し微笑んでいた。
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