婚約破棄をされたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。
屋月 トム伽
第1話婚約破棄は突然に、そして庭の平屋に移ります
「婚約を破棄して欲しい。」
そう告げたのは、婚約者のハロルド様だ。
ハロルド様はハーヴィ伯爵家の嫡男だ。
私の婚約者のはずがどうやら妹と結婚したいらしい。
いつも人のものを欲しがる妹はわざわざ私の婚約者まで欲しかったようだ。
「ラケルが俺のことが好きなのはわかるが、妹のメイベルを好きになってしまったんだ。」
「お姉様、ごめんなさい。」
いやいや、好きだったことはないですよ。
ハロルド様と私は政略結婚ですよね?
目の前のソファーに座り寄り添っている二人は悲劇の主人公のように酔っていた。
「では、婚約破棄ということでよろしいですね?」
「ああ、婚約破棄のサインをしてくれ。」
用意周到に婚約破棄の書面を出し、私はサインをして、では失礼します。と部屋から出ていった。
両親はどうせ反対はしないだろう。
ハーヴィ伯爵家に娘が嫁ぐのだから。
しかし、婚約破棄はきっと噂になる。
しかも妹に婚約者を取られたのだから。
しばらくは縁談の話もないだろう。
そして、やはり両親からはしばらく夜会には行かないようにと言われた。
婚約破棄されるようなことは恥さらしだと。
そうなったのは妹のせいだが両親は妹を甘やかし、今回のことも私のせいだと決めつけていた。
それからも、ハロルド様はよく妹に会いに来る。
よく婚約破棄した相手がいる邸に来られるな、と思う。
私が元婚約者だと忘れているのかと思うほどだ。
メイベルは私に見せつけたいのかニヤニヤと勝ち誇った顔になり、ハロルド様はメイベルに甘えられて鼻の下が伸びている。
どうせなら、妹のメイベルがハロルド様の邸に行けばいいのに。
見せつけられても、好きだったことはないのだから嫉妬するわけがない。
しかし、居心地は悪い。
だから、私は両親に提案した。
「庭の平屋に私は移ります。」
どうせ反対しないのはわかっている。
今の私は婚約破棄された厄介者だ。
「そんな…お姉様…まるで私への当て付けですわ。」
当て付けはお前だ!と言いたい。
「ラケル、妹に意地悪をするんじゃない。」
お父様はそう言うけど、今の言葉は当て付けですか。
「お姉様は私に嫉妬しているんですわ。ヒドイです…」
メイベルはいつも通り、両親に泣きついた。
もう何でもいいからほっといて欲しい。
「しばらく頭を冷やさせましょう。」
お母様も私が意地悪な当て付けだと思っていた。
「しかし、1ヶ月後の王宮の夜会には必ず出るんだぞ。」
「わかりました。」
そして、私は庭の平屋に移ることができた。
庭の平屋は暖炉も浴室もあるから生活には困らない。
小さいがお湯を沸かせるくらいのキッチンもある。
ベッドには新しいシーツをメイドに敷いてもらい、中々快適だった。
翌朝は意外とスッキリし、久しぶりに買い物でも行くか、と着替えを済ませた。
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