第2話

親友・航平の通夜の翌日、火葬場に俺は来ていた。


昨日は通夜で亡くなった航平からの驚きの遺言を受け取った後、俺は一度帰宅して実家の両親に電話で事情を説明した。

実家は埼玉県の大宮市にあるのだが、なるべく仕事に行く前の朝ギリギリまで寝ていたいという理由から都内の会社近くのアパートで一人暮らしをしている。

事情を説明すると流石に両親も驚いてはいたが『とりあえず落ち着いてからでいいからそのうち一度実家に帰って来い』とのことだった。


…そのうちとはいつだろうか?

すぐに帰って来いと言わない辺り、俺は両親に信頼されているのだろう。

まぁとりあえず1ヶ月以内には一度帰った方が良さそうだ…。


✳︎


火葬している間、航平の遺族の人たちと併設してある宴会場のような感じの待合室で火葬が終わるのを待っていた。

昨晩の航平の遺言のこともあり、航平の親戚たちが『あんな見ず知らずのやつに妹の琴葉を任せて大丈夫なのか』と大騒ぎになっているだろうと俺は思っていた。


しかしその予想は大ハズレであった。

航平の親戚たちは皆自分の老後のこと等を気にしてか、琴葉ちゃんを引き取ることを渋っていたのだ。

あろうことか、航平の遺言で俺が琴葉ちゃんの保護者になるかもしれないと知ると『琴葉をよろしくお願いします』と挨拶してくる人までいる。


たしかに琴葉ちゃんはまだ高校生で、将来大学に進学するかもしれない。

そうなると学費は誰が負担するのだろうか?

離れた大学に入ったら生活費等は誰が負担するのだろうか?

そういう点が心配だったのだろう。

心配事が片付いたからと、待合室で酒を飲みながら親戚同士で談笑している人までいるのだ。


酷い親戚たちだと思いつつも、自分がその立場ならどうするだろうと考えてはみたが、気分が悪くなったので考えるのをやめにした。


「…さて、琴葉ちゃんと少し話をした方が良さそうだな。」


俺が保護者の代わりでも良いのか、今後琴葉ちゃんがどうしたいかを聞く為に、待合室の隅の方に1人で座っている琴葉ちゃんの所へ俺は向かった。

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