四十六日目 背負った教科書
当たり前のことだが、教科書を詰めたリュックはとても重い。
買ったばかりの教科書、これから使うもの。まだ新しく、折れ目もついていなければ書き込みもしていない、まっさらな教科書だ。
それをリュックいっぱいに詰めて、どこか弾んだ足で歩く。授業が始まれば、この教科書たちを使うのだ。学びたいことがたくさんできるのがいまから楽しみだった。
もう用事は済んでいるのだけれど、もう帰路に着くのはもったいない気がして、近くのファミレスに寄る。ドリンクバーと少し食べられるようなものを頼んで、いそいそと教科書を取り出した。どれも興味のあることばかりで、開くだけでもわくわくした。
教科書たちに並ぶ文字たちを見て、なんのことを言っているのかわからないものも多い。けれど、これからわかるようになっていくのだ。そう思うと、よりいっそうこれからが楽しみになってくる。
リュックは一ヶ月ほど前に買ったばかりのもの。それまでに使っていたものはいろいろなところがちぎれたりしていて、せっかくだから新調しようということにしたのだ。新しくして正解だったと思う。びかぴかのランドセルみたいな気持ちでもあった。
「あれ、こんなところに」
頼んだ料理を待って教科書に目を通していると、かけられる声があった。
振り返った先には、進学先こそ違うもののこのファミレスの近くの学校へ進学する予定の友人だ。
「教科書買ったの?」
「そう。新しいものって何か開きたくなるんだよ」
「わかる」
話を聞けば、どうやら彼女も学校に用があって行った帰りらしい。
「じゃあついでだし一緒に買い物しない? 新しい服も欲しくって」
「いいね。私も迷ってたとこなんだ」
もちろん、料理を食べ終わってから。
あれやこれやとこれからの話をするのも楽しい。話は、料理が来るまで途切れることはなかった。
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