四十四日目 知ってたよ

 今日はやけにカラスが飛んでいる。

 空は曇っていまにも雨が降りそうで、遠くのほうでごろごろと空がうなるのも聞こえる気がした。傘は一応持ってきてはいるけれど、雨は降らないでほしいというのが本音だ。

 半強制的に受け取らされた新聞をゴミ箱に捨てて、さてどこで昼食を取ろうかと考えながら歩いた。

 空腹ではあるのだが、大量にものが食べたいというわけでもない。軽くつまめる程度のものがいい。パスタがいいだろうか。それとも、ポテトをつまむくらいでいいだろうか。

 そんなことを考えて、結局いつものレストランに行こう、ということで落ち着いた。慣れないところに行ってみるよりも、行き慣れた場所のほうがいいと思ったのだ。なんだか不穏な今日は特に。

 いつものレストラン、いつも食べるメニュー、いつも飲むもの。いつものとおりだ。不穏な空気はあくまで気のせい。

 ……そう思いたかったのだけれど。

 食べ終わってレストランを出た途端、黒ずくめの男に声をかけられた。

「……なんか用?」

「これを」

 渡されたのは、一通の封筒。開けば、そこには通知の文言があった。

「君の相棒は、つい昨日、帰らぬ人となった」

「……そう」

 噛み締めるようにその手紙を見つめた。先週までは一緒に出かけたりもしていた相棒はもういない。

 手紙を男に叩きつけるようにして返して、その場を去った。

 人気のないところまでくると、懐から、紙切れを取り出す。相棒が仕事に出ていく前に、机に置いていった紙切れ。ノートかなにかからちぎったような、乱雑なそれ。

『お前が好きそうな店があってさあ』

 書いてあるのは、それだけ。

 一体どんな店で、どこにあるのかは不明なままになってしまった。

 くしゃりとそれを握りしめると、カア、とひとつ鳴いて肩に止まったのは相棒のペットであったカラスだ。どうやら探していたらしい。

「カア!」

 そのカラスは肩から離れない。次の相棒はお前だとでもいいたいのだろうか。

「……しょうがないな」

 なあ、相棒。お前が死んだの、ほんとは知ってたんだ。夢で見た。まさか本当になるだなんてな。

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