三十六日目 かぼちゃに招待状
「……よし」
くり抜いて顔を作ったかぼちゃを、どんと置いた。ちょっと怖そうに笑った顔と、穏やかに笑っている顔と、怒ったような顔。それを、台に三つ並べて完成。
「ガーランドってこう、斜めでいいの?」
「おっけー」
紫とオレンジと黒が順番になっているガーランドは、部屋の対角線上にわたすことにした。あとは風船などを吊るしたり浮かべたり壁につけたり。そうして準備はだいたいおしまいだ。
「手紙ってちゃんと届いたかな」
「届いたって聞いたよ。なんかめちゃくちゃおしゃれだったって聞いたんだけどまじ?」
「うん。黒い封筒と便箋に、白いペンで招待の旨を書いて、赤い封蝋で送った」
「ガチじゃん。それ誕生日パーティーとかクリスマスとかにやればよかったのでは」
「クリスマスとかにもパーティーするならおんなじ感じで送るよ?」
「そうなのね……」
せっかくパーティーをみんなでするならと思ったのだ。だから、シーリングセットもレターセットも買った。シーリングスタンプは今までやったことがなかったけれど、やってみたら思っていたよりも楽しかったから続けたい。クリスマスのときは、もっと違う封蝋にしようか。蝋はたくさん種類があるらしいから。
「あ、そろそろ着くって。クラッカー用意するぞ!!」
おー! と準備をしていた面々が一斉に入口に集う。誕生日でもないのに、こんなに大仰なことをしているのがふととてもおかしいことのように見えて、くすりと笑いがこぼれた。
「なあに、お前が企画したんじゃんよ」
「そうなんだけど、なんか、ちょっとおかしく見えてきた」
「そう思うならおまえが一番おかしいのでは?」
「参加してるみんなだって連帯責任だよ!」
にやりと皆の口角が上がる。もう近くだって、と実況されるたび、わくわくする気持ちもどんどん上がってくる。そうして、足音と話し声が聞こえてきて、扉を開ける音がして。
「ハッピーハロウィン!」
掛け声と同時に、ぱあん、と弾ける音がいくつも。ああ、誕生日とかじゃないのにな。
けれど、驚きとともに来た人たちの表情に笑みが増えて、自分も気づけば笑っていた。
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