三十二日目 開けるリボン
これをつけてね、と目隠しをされて、もうどれくらいたっただろう。
時計はおろか周りが全く見えないのだから時の経過がわかるはずもないけれど。柔らかいソファのようなところに座らせられて、待っててと言われてしばらくたった。
久しぶりに友人と会えるからと胸を躍らせていた。待ち合わせ場所についたら、目隠しをされた上でどこかに案内されて、現在は待たされている。周りからごそごそ聞こえなくもないけれど、何が起こっているかはわからない。
「もうちょっと待ってて」
「もうすぐだからー!」
何人かの友人の声。声を聞いて、一人ではないのだな、とわかって安心したのがひとつ、何をしているのかが気になるのがひとつ。
「……も、もうちょっと?」
「もうおわる!」
外すよ、と一声。外されてまず眩しさに目をすがめた。ようやくまともに周囲を眺めたとたん、ぱん、ぱん、と破裂音がいくつも鳴る。見れば、友人たちがクラッカーを構えたりパーティー帽を被せたりしているのが見えて、呆然とした。瞬きをして目をこすって、それでも困惑が隠せない。
「え、……え?」
背中を押されて、大きなテーブルの上に並ぶ料理たちの前に座る。煌びやかな料理たちは、自分の誕生日を祝うために作られたらしい。
「今日誕生日でしょ? 前から盛大に祝いたいねって話してたんだ」
「そうなんだ……」
「この前留学から帰ってきたばかりで、忙しかったみたいで全然会えてなかったしさ。はい、これ、俺たちからのプレゼント」
渡されたのは、一抱えほどもあるものだった。綺麗にラッピングされて、リボンでくくられている。ラッピングの紙と合う色のリボンは綺麗に結ばれていて、開けてもいいかと目を向ければ、開けなと嬉しそうに促された。
「わ、」
入っていたのは、ちょうど欲しいと思っていたものたち。しかもひとつだけではなくて、いくつもいくつも出てきた。聞けば、みんなで持ち寄ったりして用意したのだ、ということだった。
「……ありがとう」
そう告げたときの友人たちの嬉しそうな顔に、祝ってもらえてよかった、と、心底思った。
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