十四日目 フクロウに織る

 かたん、かたん、と紡がれていく様子を眺めるのが好きだった。

「わたしもできるようになる?」

「練習すればね。綺麗になるまでには大変な時間がかかるけれども、何度もやればいずれできるようになる」

 ならがんばるよ! そういって、幼い頃の少女は、何度も何度も練習をした。ひとつひとつにきらきらと目を輝かせるものだから、教える祖母も楽しくなっていた。

「さいきんひとつかんせいしたの! ほら、きれいないろでしょ」

 月も昇った夜、少女は友達に話しかける。今日の報告は、ひとつ織物ができあがったこと。

「いとのいろはね、わたしがきめたんだ。あなたのはねみたいにしろくてきれいだったから、しろいいとと、あなたのめのいろのきいろにしたの」

 それを受けて、友達は、──白フクロウは、ばさりと羽を広げた。少しだけ、その様子は誇らしげだった。

 もっとれんしゅうして、うまくおりものをつくれるようになるんだ! と宣言したところで、夜ご飯に呼ばれた。

「それじゃあ、またあしたね!」



 そんなことをしていた昔と今は、なんにも変わっていないのだなとしみじみ思う。

「ほら、……ちょうどいいね。ぴったり」

 するりと巻いたそれはフクロウにちょうどいい。不思議そうに首を傾げるから、それが何かわかっていないのだろう。

「まあ生活に必要ないから、私がちょっと巻いてみたかっただけなんだけどさ」

 首に合うように細く短く織られたマフラー。フクロウの首にはぴったりにできたけれど、あっても不便なだけだろうことは知っていた。

 ひとつ、幼い頃からの親友のフクロウが鳴く。

「嬉しそうにしてくれるなら私も嬉しいよ。昔よりは綺麗になったでしょう? これでもまだまだなんだよ、職人ってほんとにすごいよね」

 高校卒業するし、私ももっと練習するんだ、と微笑んだ。いつも、このフクロウは黙って話を聞いてくれる。聞いてくれているという確信が、なんとなく彼女にはある。

 模様作れるようになりたいなあ、という呟きまで、目を閉じたフクロウに聞こえていただろうか。

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