五日目 退屈の神さま
とあるところに、なんでも造ることができる神さまがいました。
神さまはなんでも造ることができたので、いつも新しい植物や物を造っては飽きたら捨て、あるいは形を変えたりということを繰り返していました。
だいたいなんでもできて、なんでも揃えることができたので、神さまはすぐに飽きてしまいます。造ったものたちを捨て去ってしまえば、神さまはひとり。だんだんと神さまは、寂しくなってきてしまいました。
そこで、話し相手になってくれるものを造ろう、と思い立ちました。そうだ、いないならつくってしまえばいいのです。神さまには作れないものなどないのですから。
そうと決まれば、うきうきと神さまは作り始めます。ああでこうでと考えながら、かわいらしい姿の動物を作り出しました。
「そなた、楽しい話をしてくれよ。わたしは楽しくなる話が聞きたい」
作り出したその生き物に、神さまは話しかけました。
「はい、神さま。今日は、外の水辺で、見たことのない生き物を見つけました。水面に揺れていたのでどうしたものかと触れてみようとしたのですが、水に触れるばかりで触ることは叶いませんでした」
「それはそなたそのものだ。よいよい、面白いではないか。わたしも今朝面白いことがあったのだ」
神さまは呵呵と笑うと、自分の面白かった話をし始めます。けれど、話の終わりになっても、話し相手の生き物は口元をぴくりと動かすこともしません。しかし、真顔のままに、生き物は言いました。
「わあ、面白い。とてもおもしろい話ですね」
「笑っていないではないか。つまらないというのか」
あまりにも真顔で面白いというので、ついにその生き物を神さまは壊してしまいました。
そのあとも、笑ってくれる生き物は作ることはできませんでした。神さまはひとりぼっちのまま、自分と会話を楽しんでくれるだれかが来るのを、今も待っているに違いありません。
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