第118話 体育祭翌日

体育祭翌日の昼、キッチンからは食材を切る気持ちの良い音が聞こえてくる。

美咲とメイドさん達はテキパキとご飯を作っていて、見ているだけでも感心する。


「3人はまだ寝てるの?」

美咲のことを眺めていたら、手を止めてこっちを見てきた。


「愛美とアリサは体育祭で疲れたのかもね」


俺が起きた時には2人はまだぐっすりだった。

起きた時に両隣に美少女が寝てるって最高のシチュエーションだよな。

毎日のことだけど、未だに幸せを感じる。


「体育祭もあるだろうけど、ほとんど浩介のせいじゃないの〜?」

左隣でテレビを見ていた渚が揶揄ってきた。


「なんのことかな?俺にはさっぱり」

彼女達もノリノリだったし俺だけのせいではない。

そもそも可愛すぎるのが悪い。


「あの子達は受験生なんだから、ほどほどにしてあげないとね?」

右隣で本を読んでいた杏奈は少し呆れた様な顔をしていた。


「まあ、確かにそうだね」

杏奈に言われると誤魔化せない。

間近でこの綺麗すぎる顔でそう言われるとな・・・。

誤魔化しついでに頭を撫でると、少しだけ嬉しそうな顔になった。


「おはよ〜!」

「おはよう!寝過ぎちゃった!」

そういう話をしていると、丁度2人がリビングに入って来た。


お揃いのロングTシャツの下から綺麗な太ももが見える。

肩にタオルがかかっていて、髪は濡れている。

シャワーを浴びてきたらしい。


Tシャツの下はパンツを履いているのかショートパンツを履いているのかが気になる。

もしかしたら何も履いていないかもしれない。


実際に観測するまでは確定しないのだから、ノーパンだと思っていた方が幸せだよな。

・・・シュレディンガーのパンツだ、後でしっかり観測しないと。

アホな事を考えすぎた。


「おはよ、よく寝れた?」


「うん!ぐっすり!」


「えへへ、昨日は夜までいっぱい体動かしたからね〜!」


「ちょっとー、アリサ!」


「どうしたの〜?愛美も昨日は一生懸命だったね〜!」

愛美は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。


そういうアリサの方が夜は大人しい癖に。

初めての時も恥ずかしがって可愛かったけど、未だに初々しくて可愛い。


アリサが恥ずかしいからって姉妹丼はまだお預け状態だし。

愛美の方が経験も多くて慣れている・・・口に出しては言わないけど。


「アリサ、そういうこと言わない」


「は〜い!」


「みんなお昼ご飯出来たから食べよ!」


「美味しそ〜!さっすが美咲先輩!昨日もありがと〜!」


「ありがとう!そう言って貰えると嬉しいよ!」

あ、ここは俺が一番に言って点数稼ぎしたかったのに先を越された。


「美味しそうだね、美咲いつもありがとう」

美咲を抱きしめつつお礼を言う。

正直こういうのは気障な感じがしてちょっときつい、けどこういう事は普段から口に出して言わないと気持ちは伝わらないからな。


「浩介もありがとう!」

アリサには先を越されたけど、まあ及第点かな?




「おはよー!皆んな朝ご飯はもう食べた?聖奈お腹ペッコペコ!」


「聖奈おはよ、てかもう昼過ぎだけど」

というか何で起きてくるのが一番遅いんだ・・・。


「もう皆んなご飯食べ終わったから聖奈の分はないよ〜!夜まで我慢だね〜!」

渚はここぞとばかりに聖奈を揶揄っている。


「えー!?ひどーい!お腹すいたー!!!!」

騒がしいなあ。

まあ、優しい美咲はちゃんと聖奈の分も用意していて、すぐに静かになった。





「ただいま戻りました。言われました通りにマンションの方の掃除をして参りました。郵便受けが溜まっていましたのでこちらにお持ちしました」

夕方、メイドさんに声をかけられ手紙や封筒の束を渡された。


最近メイドさん達の言葉遣いが凄く丁寧になってきた。

新しく雇った人の中に接客業をしていた人がいて、皆んなに教えているらしい。

そのおかげかメイドさん達がかなり本職・・・がどんなものかは知らないけど、それっぽくなってきた。


「ありがとう、助かるよ」

メイドさん達に会社のマンションの掃除を頼んでいた。

設立の時に登記の為に借りて以来一度も入っていないけど、そのまま放置しておくのも良くないからな。


手紙は・・・テレビ局に新聞社、それに出版社か。

中身を見なくてもなんとなく内容が想像できる。


多分会社の登記簿からなんとか調べたんだろうな。

あとは大量保有報告書に載っている住所かな?


まあ、あそこは普通にバレるよな。

あのマンションには住んでいないから問題無いけど。


中を見てみると案の定長者番付の件についての取材依頼だった。


まだまだランキングは日本の中でも43位と下の方だけど、ほとんど情報が出て来なくて気になったんだろうな。

手紙はそのままゴミ箱に投げ捨てた。


どうせ数年のうちにバレるだろうけど、もう少し身の回りの安全を固めてからが良い。

もう少し人を増やしてからだな。


それに愛美達が高校生というのも不味い。

もしも関係がバレたりしたら最悪刑務所行きだし。

せめて来年までは隠し通さないと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る