第116話 4月中旬

「浩介と渚はゼミどうだった?教授いい人だった?」


「めっちゃいい人だよ、サークルの顧問もやってくれてる人だからよく知ってるし」


3年次からはゼミに参加することになる。

今年でほとんど全部の単位を取り終わって、来年は週に1回のゼミだけを取る予定だ。

東京に移住するし、飛行機通学とか意味の分からない事になるな。


「美咲達はどう?由依ちゃんも一緒?」


「そう!結構厳しそうな先生だった!でも勉強になるって有名だから楽しみかな!」

こういうところは本当に真面目だよなあ。

美咲の良いところでもある。


「さっすが美咲だね〜!私の彼女なだけあるよ〜!」


俺のゼミは楽なことで有名で、それが選んだ理由の一つだった。

あと美咲は渚の彼女ではなく俺の彼女だ。


・・・いや美咲と渚に関しては3人で付き合う事になったから合ってると言えば合ってる、のか?

たまに2人で寝てるみたいだしな。


「聖奈と杏奈は?」


「私達は楽しそうな所で選んだかな」


「小学校の先生と児童になりきって模擬授業とかするんだってー!」


「聖奈は小学生役はうまそうだよね〜!」

確かに。


「ちょっとー、それどういう意味ー!?」


「渚が言ったのは、聖奈が可愛いって事だよ」


「そういうこと〜!」

テキトーだなあ。

まあ渚は聖奈に対して一見当たりが強く見えるけど、普通に仲はいい。

夜の相性も良さそうだし。


渚曰く、聖奈はいじり甲斐があるそうだ。色々な意味で。

聖奈は聖奈で渚のいじりは気持ちがいいそうだ。色々な意味で。

聖奈はただのドMかな?


俺は2人のいじりが行きすぎていないかをみて、時々フォローしている。

彼女同士の仲が悪くなって困るのは俺だからな。


幸い今まで喧嘩になった事も無いし、何かで対立した時には大抵渚が折れるんだけど、渚は渚で強かだ。

皆んなが気付かない内に利益を得ている。


「えへへ、そっかー!」


「でも杏奈の授業とか受けてみたいね、こんな美人さんが先生だったら絶対勉強に身が入るでしょ」

逆に集中できない可能性もある。


「そうかな?でも子供に怖がられちゃうかも」


「杏奈は教員免許は取るんだよね〜?先生になるの〜?」


「免許は取るけど、モデルの仕事があるから先生にはならないかな」

なんか勿体無いような気もする。

でも将来子供が産まれた時に先生が家にいると安心ではあるなあ。


「もったいないなー!」


「いや聖奈だって声優になるんでしょ?」


「あ、確かにー!」

毎週養成所に通っているけど・・・身についてるのかな?

彼女の中でこの子が一番心配だ。


ちなみに愛美達高校生組は今日家に来ていない。

高校3年生になって、受験勉強が忙しいみたいだ。

彩華もピアノコンクールに出るみたいで、練習に励んでいるらしい。


今度3人に頑張っているご褒美として何か買ってプレゼントしようかな?

勉強で頭使ってるだろうし甘いものとか、あとは形に残るものも渡したいなあ。





「それで、愛美達に何あげたら良いと思う?」

次の土曜日、早速近くのデパートに買い物に来ている。


「んー、普通の女子高生が喜ぶ物はもう持ってそうですよね〜?」


「確かにね、私も浩介には色々買ってもらってるしね」


女の子が好きな物に詳しそうな杏奈に付き合いを頼んだら香菜ちゃんもついてきた。

同じ女子高生もいた方がいいと考えたらしく杏奈が頼んだみたいだ。


外商さんを家に呼んでも良かったけど、お店で色々見ていくのも楽しいからな。

香菜ちゃんも付いてきたから当たりだった。


香菜ちゃんとの仲を深める絶好の機会だし。

3人だけど実質デートみたいなものだよな?

まあ、香菜ちゃんは100%善意で来てくれているのにそれを利用するのも少し気が引けるけど。


「取り敢えず色々お店見てみますかー?」


「そうしよっか」


「あ!そうだ、香菜ちゃん高校入学おめでとう。真っ先に言うべきだったね」

あぶない、まだおめでとうを言っていなかった。

後で入学祝いも渡さないと。


「ありがとうございます!そんな気にしなくても大丈夫ですよ〜!」


「高校生になった気分はどう?」

制服姿も見たいなあ、たしかオーソドックスなセーラー服だったはず。


「楽しいです!でも家と遠いからちょっと大変かな〜!」


「女子校なんだっけ?」


「そうなんです!10月の学園祭あるみたいなので遊びに来てください!」


「いいね、楽しそう」

絶対行く、これは何を置いても行くしかない。


3人でお喋りをしながらウィンドウショッピングをしてプレゼントを探す。


「可愛い〜!こういうブランドって憧れですよね!いいな〜!」

テンションが上がっている香菜ちゃん可愛いなあ。


「これ可愛い!時計とかどうですか?ピンク色のベルトが可愛い!って高っ!」

ショーケースの中の値札を見て目を丸くして驚いている。


「いいね、それ買っちゃおうか」


「ええぇぇ!?だってこれ!いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、いっせん・・・!?」


「時計だったら入試の時にも使えて良いかもね・・・でもこれはちょっと派手かな、ダイヤとか付いてるし。こっちの大人しめの方がいいかも」

杏奈はようやくこういう買い物とかプレゼントに慣れてくれた。

金銭感覚に関しては言っても無駄だと思われているのかもしれない。


「じゃあ、大人しめのやつも両方にしよう」

こっちは一桁安い。


「ええぇぇぇ・・・」


「うん?どうしたの?」

素知らぬふりをして店員さんに包んでもらう。


ついでに香菜ちゃんの入学祝いの分もこっそり店員さんに伝える。

在庫あるかな?


お金で釣る訳でも無いし、釣られる様な子では無いと思うけど。

若いうちからこれに慣れさせて他の男では物足りなく感じる様になってくれたらいいな。

この金銭感覚はかなり教育に悪そうだけど、将来は本人もかなり稼ぐし大丈夫だろう。


「3人分ですよね?1人2個ずつですよね??」


「そうだね?」

香菜ちゃんの分も含めて4人分だけど。


「香菜ちゃん、浩介はいつもこんな感じだから。驚いてたらキリがないよ?」


「そ、そうなんですね〜?」

どちらかというと引かれてる気もするけど、まあいいか。


店員さんに綺麗に包装して貰い店を出た。

香菜ちゃんの分は他の袋に紛れ込ませてある。

さすがいいお店の店員さんは気がきくなあ。


かなり高額の買い物だけど、支払いはクレジットで済ませられる様になったから便利だ。


少し前にブラックカードのインビテーションが届いていて、ようやくそれが使える様になった。

ブラックカードには限度額が無いとか巷では言われているけどそんなことは無く、ちゃんと限度額がある。

多分俺は個人だとかなり限度額が高い方だと思うけど。


その後も杏奈や香菜ちゃんはバッグやアクセサリーにお菓子など色々と提案してくれて、俺はそのお勧めされたものを片っ端から購入していった。

途中でランチとディナーも一緒に食べれたし、大満足の1日だった。


「いっぱい買いましたね〜?」


「愛美達が喜ぶといいね」


「そうだね、今日は2人ともありがとう。助かったよ」


「なんか、普段の買い物より疲れましたよ〜・・・」


「そう?なんかごめんね。はいこれ、お詫びとお礼と入学祝い」

余分に買っていた時計を袋から取り出して香菜ちゃんに渡す。


「えええぇぇぇ!そんな、受け取れないですよ!」


「気にしないで、それに受け取るまで帰れないよ?」


「ええぇぇぇ、杏奈さん・・・」

香菜ちゃんは杏奈の方を向いて助けを求めている。


「受け取ってもいいんじゃない?今日は一日付き合ってもらっちゃったし」


「杏奈さんまで・・・あ!これって最初に見た時計?」

渋々受け取りながら袋の中を覗いている。


「そうそう、愛美達と同じやつで申し訳ないけど、香菜ちゃんも気に入ってそうだったから」


「そっか〜、って同じってことはすっごく高いやつですよね!?」


「まあまあ、気にしないで。じゃあ家まで送るね」


「ちょっと〜!?」

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