第114話 43位
3月末
「今日からよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。では仕事の手順なんかはそっちの美咲と由依に聞いてください」
2人の先導で大勢の女性がぞろぞろとリビングから出て行った。
「いっぱい集まったね〜!」
「これからは警備とかにも気をつけないといけないしね」
目の前のテーブルにはアメリカの経済雑誌の日本版が置かれている。
遂に載ってしまった・・・長者番付。
資産額700億円で日本人の中で43位にランクインしていた。
職業も年齢も空欄で、名前と資産しか載っていないけど。
「でも前に浩介に説明して貰った時はもっと沢山なかったっけー?もしかして失敗しちゃったー・・・?」
凄いな、聖奈でもちゃんと覚えてたんだ。
「これは取材してる記者さんが把握できる資産しか計算してないからね。資産は全然減ってないから安心して」
「そっかー!よかったー!」
この雑誌に載っている資産は、日本企業の大株主として公表されているものに、土地とかの不動産を合わせたもの。
外国企業や保有割合の少ない企業は公表されていない為に計算には入っていない。
だから日本版にはギリギリで掲載されてしまったが、幸い本家の方には掲載されていないし、テレビでも上位の人しか報道されていない。
まだ取材の依頼も来ていない。
そもそも連絡先を知られていないから連絡の取りようが無いのかも知れないけど。
資産管理会社の登記簿に載っている住所も適当に借りているマンションの住所だけで部屋番号すら書いていないからな。
とは言え会社経営者でも有名人でもない、謎の人物としてメディアに興味を持たれる可能性もある。
俺のことを知っている大学の知り合いとかからバレそうだし。
身の回りの安全に気をつけないと。
と言うことで人を雇った。
求人自体は去年から出していたことが功を奏したかな?
雇い入れるのはもちろん女性のみ。
彼女達には少し変な目で見られたが説明したら納得してくれた。
外出時のトイレとか男だとどうしても守れない場所なんかもあるからな。
今メイドをしてくれている楓先輩と、その友達で投資研究会の先輩4人も卒業して4月から正社員として働いてくれることになっている。
これからは正社員30人と、バイトが6人の合計36人を雇用することになる。
正社員は警備員やボディーガードが16人、メイドが4人、調理師が2、運転手が4人、事務員4人で、バイトの6人は今まで通りメイドとして働いてもらう。
警備員なんかは自衛隊や警察を辞めて来てくれるから安心感がすごい。
「でもこんなに雇って会社は大丈夫なの?収益はあんまりないんじゃなかったっけ?」
「うん大丈夫だよ。渚、杏奈に説明してあげて?」
今は資産管理会社の財務面なんかは渚に任せているから説明を丸投げする。
「えっとね〜、収益が少ないって言っても浩介の収入に比べたらの話で、これくらい雇っても大丈夫だよ〜!」
「そうなんだ?」
大雑把な説明だなあ・・・まあ詳しく財務状況を説明しても分からないと思うけど。
資産管理会社の収入は所有している株式の配当だけだが、今年の配当予想を見ると大体9億円ちょっとが入る予定だ。
俺個人の収入に比べたら有って無いような物だけど。
彼女4人に払っている報酬や、正社員やバイトの給与、それに手当や福利厚生、保険料を含めても人件費は5億にも満たない。
税金の事も考えてもまだまだ余裕があるしもっと人を増やしてもいいくらいだ。
ちなみに、資産管理会社と呼んでいるが、正式名称は株式会社NIFと言う。
ナカムラ・インベストメント・ファンドの頭文字からとっていて、会社名を見ても何の会社かはさっぱりだな。
将来的にはもっと資産を増やして投資を専門に行う企業と、メイドさんとかを雇う企業とに分ける予定だ。
「ただいま」
「あ!お兄ちゃんおかえりー」
「あらおかえり、もっと頻繁に帰って来ればいいのに」
「この前も成人式の時に帰って来たでしょ?それに色々忙しいからね」
その日の午後、父親に久しぶりに家で晩飯でも食べに帰ってこいと言われて実家に帰ってきた。
呼びだされる心当たりもあるしな。
「みたいだな、これみてびっくりしたぞ?すごいじゃないか」
父親の手には長者番付の載っている雑誌があった。
まあ、これだよな。
「まあ、そうかな?」
「最初にお前が投資をするって言った時も、お金を借りたいって言った時も心配したが、全く心配は要らなかったな」
「だよな、俺もその話を聞いた時は何言ってんだこいつって思ってたけど」
兄貴もいたのか!?・・・影薄いなあ。
「何でここにいるの?仕事クビになったの?」
兄貴は東京の大学を卒業した後、東京で就職していた。
社会人何年目だっけ?3年くらいになるのかな?
「なわけないやろ?親父に呼ばれてな、仕事やめて戻ってきたんだよ」
なんだ、ほんとに辞めたのか。
「跡を継ぐ為にな、そろそろウチで経営の事とか色々と勉強してもらわんと困るからな」
「そうなんだ」
あぁ、そういえばそうだった。
前世でも思ったけど兄貴がいてよかった。
親の跡を継いで仕事をするとか面倒だしな、助かる。
「しかし700億とはな、どうやったらそんなに投資に成功するんだ?」
「んー、まあかなり色々な企業のことは調べてるからね。新しい技術とか情報にも興味を持って、将来がどうなるかとか考えたりね」
そんなことはしてないけど。
「そうか、ちゃんとやってるんだな。東京にも家を建てるんだろ?いつ引っ越すんだ?」
「来年の4月かな?順調に行けば3年でほとんど単位もほとんど取り終わるだろうし。彩華の大学入学に合わせてって感じかな」
「いいのか?もし面倒だったら別にいいんだぞ?」
「我儘じゃないよ!お兄ちゃんもそう思うよね?」
「まあ、全然負担ではないから大丈夫だよ。彩華の事がなくてもそうするつもりだったし、我儘なのは今に始まったことじゃないし」
「ちょっとー!」
「そうか、彩華の我儘に付き合わせて悪いな。美咲ちゃんとはどうだ?他の友達とも仲良くやってるのか?」
今日は珍しくお喋りだなあ・・・まあ流石に気にはなるか。
「パパも無視するの!?ねえ、ママー!」
周りが騒がしいな。
「いい感じだよ、友達とも楽しくやってるし」
「結婚はどうするんだ?」
「それはまだ考えてないよ」
実際どうしようか・・・彼女の誰か1人だけとの結婚はありえない、でも重婚は不可能。
式だけ挙げて誰とも籍を入れずに内縁関係で済ませるしかない。
それぞれと一旦籍を入れて名字だけ合わせる手もあるか。
俺の離婚歴が凄い事になるけど。
「そうか、まああの子くらい良い娘はそうそういないだろ。早いうちに考えておきなさい」
「うん、分かってる」
「ご飯出来たからテーブルまで運ぶの手伝ってね」
何というか、自分で運んだりするのも久しぶりだな。
家事は全部メイドさんに任せてるからなあ。
「「「「「いただきます」」」」」
「久しぶりねー、家族皆んな揃ってご飯食べるの」
「普段は美咲ちゃんのご飯たべてるの?」
「うん、まあそんな感じ」
メイドさんが作ることもあるけど。
彩華は口が軽そうで意外と喋らないでいてくれてるんだよな。
意外と兄思いのいい子だ、意外と。
「今度家に呼んでウチの家庭料理も教えないとねー」
そんな機会あるかな?
「そういえば兄貴は彼女とか出来たの?」
転生する前には結婚をして、子供までいた。
「ん?あぁ、一応な。今はまだ東京にいるけど、こっちでの生活が落ち着いたら呼ぼうと思ってる」
「そうなんだ」
前世と同じ人かな?それとも変わっていたりするんだろうか?
・・・俺が投資の世界で暴れまわっているせいで歴史が変わっていたら怖いな。
今の所大きな影響はなさそうなんだけど、変わっていたら今後の投資にも慎重にならざるをえなくなる。
こればっかりは祈るしかないな。
それぞれの近況などを話しながらご飯も食べ終わり、落ち着いたところで自分の家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます