第112話 2月のとある日

2月


「センパイは良いな〜!私も早く遊びたいな〜!」


アリサが膝の上で駄々をこねている。

モコモコの部屋着を着ていて触り心地が良い、人形を抱いているみたいだ。

愛美とアリサは昨日から家に泊まっていて、部屋着でくつろいでいる。


「いや、アリサ達は今年受験生でしょ?」


大学の授業も終わり、春休みがやってきた。

高校生組は可哀想なことに3月まで待たないといけない。


「そうだけど〜、でも春休みの旅行は楽しみだね!」


「ちゃんと勉強もするんだよ?大学入れないと東京に来るのも難しくなっちゃうだろうし」


3月には海外旅行にに行く予定も立ててある。

受験生と言っても受験まではまだ1年あるし、受験前最後の楽しみとしては良いだろう。

それに俺も楽しみな事があるからな。


「確かに〜!じゃあセンパイ勉強教えて〜?」


振り返ってこっちを見てきた。

顔が近い。

可愛いすぎて付き合った今でもドキッとする。


でも、俺勉強得意な訳では無いんだけどな、むしろ嫌いだし・・・でもガッカリさせるのもアレだしなあ。

多分美咲とか渚の方が教えるのは上手いだろうに。


「あ!先輩私もー!」


隣で俺にくっついて座っている愛美もアリサに便乗してきた。

・・・しょうがない。


「じゃあ、美咲達も呼んでみんなで勉強会でもしよっか」

多分2人が期待している物じゃ無いけど、美咲達がいてくれた方が俺も安心だ。


「やったー!」


「2人がよかったな〜、でもそれはそれで楽しそ〜!」


「というか彩華はどうしたの?昨日も来なかったけど」

なんせ俺の妹だからな、あいつが一番勉強が必要だろう。


「聞いてないの?今度コンクール受けるから、レッスン増やしてもらったみたいだよ!」

あー、そういえば音大受けたいとか言ってたな、結構本気だったのか。


「そうなんだ、結構頑張ってるんだね」


「彩華も頑張ってるし、私たちも頑張らないとね!」


「むむ〜、そうだね〜。あ、センパ〜イ!頑張ったらご褒美欲しいな〜!」


なんか聖奈の時にもこういうことがあった気がする。

やっぱり義理とはいえ姉妹似てくるんだなあ。


「いいよ。愛美もなんでも言ってね」


「やった〜!なにして貰おっかな〜!楽しみだね〜!」


「うん!」


ということで急遽勉強会をすることになった。

こういうのは久しぶりだなあ。


俺たちが受験生の頃はよくやっていた。

大学に入ってからも課題を一緒にやったりはしていたけど、学部が違うし教え合うこともなかった。



「ねえ、なんでみんなには聞くのに聖奈にだけは聞かないのー?愛美にも質問してるのにー!」

聖奈がアリサに文句を言っているが、質問されて分かるのかな?


「だってお姉ちゃん分からないでしょ〜?」


「分かんないけどー!」

なんで言ったんだ・・・。


「でしょ〜?知ってるから聞かないの〜!」


「だって聖奈だけ聞かれないの寂しいもん!」

そういう問題か?


「お姉ちゃんには勉強は期待してないからね〜」


「もー!」


「ほらほら、喧嘩しない。仲良くね?」


「だってー!」


「あ、そうだ聖奈!これが終わったら俺とゲームしようよ。教えてもらいたいとやつあるんだよね〜、ゲームは聖奈じゃないと分からないから」


「えー、そうなのー?浩介はしょうがないなー!良いよー、聖奈が教えてあげるー!」


全く、しょうがないなあこの子は。

これじゃあアリサとどっちがお姉ちゃんか分からない。


「え、良いな〜!私もセンパイと遊びた〜い!」


「今度ご褒美の時にね?したいこと考えておいてよ」


「は〜い!」





2月28日


「ふ〜、やっと終わったね〜!」


「ありがとう、助かったよ」


「ふふ〜ん、もっと褒めていいよ〜?」


「渚はすごい!えらい!かわいい!」


今年から税金関係はほとんどを渚に任せた。

もちろん大体の事は税理士に任せてはいるけど、確認とか手続きとか細々としたことはやらないといけないからな。


「なんかテキトーに言ってるでしょ〜!」


「ごめんごめん、でも渚のおかげで凄く助かったよ」


これからは渚に任せれば面倒なことをしなくても済む。

信頼できる彼女だからこそ任せられることだ。


「それにしても去年の稼ぎヤバいね〜、びっくりしちゃった〜!」


去年の利益額は3818億9300万円。


「そうだね、自分でもびっくり。その分税金もかなり多いけどね」


納税額も約780億円、誤差レベルだが復興税分も増えて半端じゃない額だ。

ただ今年はしっかりと資金を確保していたから株の売却なんかをせずに済んだ。


もともと口座に残っている109億7500万円に、FXの決済で1200億5000万円、コロフラ株の売却で204億7500万円、合計1515億円あった。


納税しても証券口座とFX口座に735億円残っている。

普段の生活に使う銀行口座にもまだ15億ちょっと残っているし。


「結構お金残ってたけど投資しないのもったいないね〜」


「この前も言ったけど、今はなぁ」


お金を投資せずに余らせておくのはもったいないが、今の所FXも株式もあまりいい時期ではない。

投資に関してはもう少し時間をおくことにする。

そういえば、今日はアレもあるはずだけどまだかな?



夜、テレビをつけてニュースをしばらく見ているとようやく流れてきた。


『〜が民事再生法の適用を申請し、同日受理されたと発表しました』

『〜社長は記者会見でピットコインがなくなってしまい申し訳ない、と謝罪しました。』



「これ、浩介のは大丈夫なの〜?」


「うん、俺のは大丈夫だよ。ちゃんと自分で管理してるから」


「そういう事も出来るんだ〜」


今日、大手ピットコイン取引所が破綻した。

この会社は不正アクセスによって合計85万ピットコインが消失した。

直近の取引価格で470億円程度の損害だ。


もちろん俺はピットコインを自分のパソコンに保管してあって、取引所には預けていない。

これがあることは分かっていたし。


ピットコインの価格も去年の12月には12万を超えていたが、その半分にまで下がっている。

買い集めている俺からしたらありがたい事だな。


「去年からすっごい下がってるね〜?買い時かな〜?」


「もうちょっと待った方が良いかも、これからどんどんピットコインに対する不安も増えていくだろうし」


「そっか〜!でも浩介は将来性があると思ってるんだよね〜?」


「そうだね」


「じゃあもうちょっと様子見てみるね〜!」


来年の春くらいまでは下がり続けるはずだし、いい感じのところで渚にも勧めてみよう。

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