第111話 (2014年1月24日)逸材

1月24日


「ただいま〜!センパイ聞いてよ〜!今日大変だったんだよ〜?」


「おかえりアリサちゃん、どうしたの?」

帰ってくるなり俺に抱きついてきた。


「学校でね〜なんか知らない人から告白されたの〜、それで変なこと言うから〜」


「知らない人って同じ学校のひとじゃないの?」


「うん?制服着てたし同じ学校だと思うけど、知らない人だった〜」


「アリサ・・・同級生だよ?というか同じクラスだし・・・」

それは覚えておいてやれよ・・・可哀想に・・・しっかり者の愛美は知っていたみたいだ。


もしかして文化祭の時に話しかけてきた男じゃないか?

俺もあんまり覚えてないけど。


「そうなんだ〜?興味ないから知らな〜い!」


「愛美もついて行ったの?」


「うん!心配だったから!」


「そっか。それで、大丈夫だった?何もされなかった?」


「うん!彼氏いるからって断ったのに、もしかして浩介先輩ですか?浮気性だからやめておいた方がいいよって。言われなくてもセンパイが浮気性なのは知ってるし〜!」


やっぱり文化祭の男かもしれないな・・・やめておいた方がいいとは失礼な。

アリサはアリサで失礼だな?


彼女が沢山いるだけで、彼女じゃない女の子には手を出さない紳士なのに。

隠れて浮気しているわけでもないし。


「それ面倒だね、あんまりしつこいようだったら俺の方でもなんとかしてみるけど」


「ん〜、大丈夫だと思う!最後には大人しくなってたし諦めたんじゃないかな〜?」

ほんとかなあ・・・。


「うん、私も大丈夫だと思う・・・先輩の事を言われた後に、先輩との惚気話を長々としてたから。向こうも最後は泣きそうになってたし」


告白している好きな女の子から他の男との惚気を聞かされたのか・・・流石に同情する。

俺がやられたら脳が破壊されそうだ。

次の月曜からどんな顔して教室に来るんだろう・・・まあいいか。


「ま、まあ、そう言うことなら。もしなんかあったらすぐに言ってね、なんとかするから」


「は〜い!」


「そろそろ仕事に戻るね」



トレーディング部屋に戻ってコロフラ株の売却を終わらせた。


一株あたりの売却額は3500円、購入時には39万株だったが株式分割を経て585万株に増えていて、合計で204億7500万円になった。


27億3000万円で購入したので、177億4500万円の利益だ。

約1年でこの利益だし株式投資としてはかなり良い。


今年、2014年はなにか良い株があったかな?


・・・あんまり記憶にないな。


「なに悩んでるの〜?」

腕を組んで考えていると、隣の机でFXのチャートを眺めていた渚が話しかけてきた。


「次どこに投資しようかなって」


「あ〜ね、浩介でも悩むんだね〜?大体いつもはすぐに投資するところ決まってるのに〜」


「まあね、日本株も結構値上がりしちゃったし、外国株もめぼしい株は大体買っちゃったからね」


「そっか〜、もう持ってる株の買い増しはダメなの?」

そう言いながら自分の椅子から俺の膝の上に移動してきた。


「それでも良いんだけどね、それより良い株がなんかなかったかなって」

目の前にある渚の頭を撫でながら答える。


こうすると癒されるんだよなぁ、良い匂いもするしリラックス効果が半端ない。

考えるのに疲れた時に渚がいてくれると助かるんだ。


「むむ〜、私も最近はあんまり伸びそうな株見つけられてないんだよね〜」


「FXの調子はどう?」


「良い感じだよ〜!資金も溜まってきたし、そろそろ次に投資する株も探そうかなって思ってるとこ〜!」


「じゃあ、俺もどこか良いところ見つけたら教えるから、渚も良いところ見つけたら教えてね」


「りょ〜かい!・・・ねぇ〜、そんなに太もも好きなの〜?」

おっと、いつの間にか足の方にも手が伸びていたみたいだ。

全くの無意識だった。


「うん、渚の足が綺麗すぎてつい」


「しょうがないな〜・・・する?」


「する」



なぜか分からないが、良い運動になったし頭もスッキリした。

次の投資先もすぐに見つかりそうな気がする。


と思ったが、そろそろみんなの所に戻らないといけない時間だな。

身だしなみを整えてリビングに戻った。





次の日


「ただいま」

「お邪魔します!」

杏奈が友達を連れて家に帰ってきた。


朝から仕事で知り合った友達と遊びに出かけていたが、昼から雨が降ってきたため家に招待したらしい。


ついさっき、その子を家に連れてきても良いかという連絡が入っていて、可愛いモデルさんが来るかも、という下心もあり二つ返事でOKの返事を返していた。


「いらっしゃい」

ってこの子あれじゃん!


一眼見て気がついた。

1000年に一人の逸材とか言われている子だ。


ネットに上がっていた写真がメディアにも取り上げられて、ちょうど今大注目されている。

今は中学3年生のはずで、テレビや映画で活躍し始める直前といった頃だ。


「この子知ってる?香菜ちゃんって言うんだけど」

もちろん知っている、前世でもファンとまではいかないが、よくテレビでは見ていたからな。


「初めまして!高橋香菜(たかはしかな)です!」


「中村浩介です。よろしくね」


「あ!杏奈さんが言ってた彼氏さんですよね!色々自慢してましたよー?よろしくお願いします!」


自慢してたって人伝に聞くのはなんか嬉しいな。

杏奈は普段あまり感情を表に出さないからな。

なんて言ってたんだろう、後で香菜ちゃんに聞いてみるか。


「もう、そのことは秘密って言ったでしょ?」


「あら?この前テレビで見た気がする!」


「わー!かわいー!」


「杏奈とはどういう繋がりなの〜?」


「私12月に東京行ったでしょ?雑誌の仕事だったんだけど、その時知り合ったの」


「来週私と杏奈さんが載った雑誌が発売されるんです!」


「私はちょっと載ってるくらいだけどね」


「楽しみだね、発売されたらすぐ買わないと」

杏奈そこまで活躍してたのか・・・すごいな。


「撮影の時杏奈さんに色々教えてもらったんです!出身も同じだし、すぐ仲良くなっちゃいました!」


「そうなんだ、これからも杏奈と仲良くしてあげてね?」


「はい!こちらこそです!」


この繋がりは大事にしないと。

今はアイドルもしているし、今後も芸能界で活躍するから彼女にできるかは分からないけど。


「香菜ちゃんって幾つなの〜?」


「今14歳の中学3年生です!」


「じゃあ私の2つ下だねー!学校はどこなのー・・・」


アリサちゃんや愛美達も歳が近いこともあってすぐに仲良く会話している。

その調子で仲良くなって欲しい。

あわよくば定期的に家に来てくれるようになったらいいんだけどな。



香菜ちゃんは晩御飯の前に帰って行った。

また家に来ると言っていたし、今後も楽しみだな。

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