第96話 デート

「先輩!今日はよろしくね!」


「うん、こちらこそ。何かしたいこと決めてる?」


今日は愛美と2人でデートの日。

高校生の彼女とは1日中一緒にいるということが少ない。


ほぼ毎日と言っていいほど家に来てはいるが、大抵夜には家に帰さないといけないからな。

妹達と一緒に帰るとはいえ、寂しい思いをさせているかも知れない。


「えっとねー、私の部屋で一日一緒に過ごしたいなー!」


「いいよ、そうしよっか」


この家にはもちろん愛美の部屋もある。

たまに泊まる時に使っているのと、将来大学生になった時に一緒に住むためだ。


愛美の部屋はまだ物は少ないが、お泊まり用の着替えなどはちゃんと置いてある。

ピンクを基調とした女の子らしい部屋だ。


「〜〜でね、でね、今年はアリサちゃんとも同じクラスになれるから楽しみなんだ!」


「あそっか、アリサちゃんも俺たちと同じ大学目指すんだもんね?よかったね」


「そうなの〜!あとねー、後輩の子に可愛い子がいてねー、最近は先輩先輩って声かけてくれるんだー!」


愛美は部屋に入ってから3時間ほどずっと喋り続けている。

俺は大抵聞き役で、基本的にはこの子が話すことに相槌を打つことが多い。


楽しいことは楽しいんだけど、疲れないのだろうか?

隣に座っている愛美の髪を撫でながら聞いているから癒されるけど。


「〜〜あとね、今年は修学旅行もあるから楽しみなんだー!でも先輩と長い時間離れるの寂しいかも」


「お、じゃあ俺もそれに合わせて旅行しよっかな?」


「え、ほんと!?来て欲しいなー!自由行動とか一緒に行こうよー!」


あ、半分冗談だったんだけどな。

予定合わせられるかな?あとで確認しておこう。


「でも彩華とかアリサちゃんはいいかも知れないけど、でも他のお友達とかは知らない人いたら嫌なんじゃない?」


「そうかなー?そんなことないよー!みんないい子達だもん!」


「そっか、じゃあ予定考えてみるね」


「わーい!あ、お腹すいたね!ご飯食べようよ!」


「もうそんな時間か〜、どっか食べに行く?」


「今日はね、私が作ろうと思ってるんだ!美咲先輩に特訓してもらったから!」


愛美も料理が上手くなったな、とてもおいしかった。

もちろん俺も隣で手伝いながら2人で料理をした。


この後も朝まで一緒に2人だけで過ごした。

愛美はお風呂でも、ベッドの中でもずっと夜遅くまで喋り続けていた。


いつも以上に楽しそうにしていたのが印象深かった。

やっぱり寂しかったのかも知れないな。

もっと2人だけで過ごす時間を増やしてあげないといけない。





「せんぱ〜い!昨日はお楽しみでしたね〜?」


今日はアリサちゃんと遊ぶ。

昨日は初めて家に泊まって、聖奈達と遊んでいたようだ。


アリサちゃんとは今日だけで、晩御飯を食べたらデート終了だ。

まだ彼女ではないからな、夜は流石に一緒には居れない。


「今日何かしたいことある?」

アリサちゃんの言葉はスルーして、要望を聞く。


「センパイのしたいことでいいよ〜!センパイがしたいなら愛美と同じ事してもいいよ〜?」

ニヤニヤしながら腕に掴まってきた。


「はいはい、じゃあ車に乗ってどっか行く?」


「あ、いいね〜!私ラブホとか行ってみたいかも〜!友達が言ってたんだけど、最近のはすごい豪華なんだって〜!」


「そんな所には行かないけどね。俺19になったし、アリサちゃんとそんなとこ行ったら捕まるよ」


「え〜!愛美とはあんな事やこんな事してるのに〜?じゃあ〜水族館とかでもいいよ〜?」


水族館にするか、2人で車に乗り込み出発する。

この子派手な見た目してるからか、この2人乗りの派手なスポーツカーに乗っていても似合うな。

派手と言っても、金髪や碧眼は元々生まれ持ったものなんだけどな。


「そういえば愛美達と同じクラスになるんだってね?」


「そうなんだ〜!私立文系クラスって一つしかないしね〜、楽しみだな〜!」


「俺たちと同じ大学目指すんだよね?アリサちゃんは行きたい学部とかあるの?」


「あ〜、それちょっと悩んでる〜!センパイと同じにするか、お姉ちゃんと同じにするかかな〜?」


「経済学部か教育学部?」


「うん!センパイみたいに投資で稼ぐのもカッコいいな〜って思うし〜、教育学部だったらお姉ちゃんも居るし楽かな〜って」


「じっくり考えたらいいよ、もしかしたら他にもやりたいこと見つかるかも知れないしね」


「そうだね〜!でも私センパイの愛人になる予定だからな〜、どっちかって言うと経済の方で考えてる〜!」


この子はすぐこういう冗談を言う。

こうやってデートをしているし、俺に対して好意が無いわけではないのかも知れないけど、この子の言うことを本気にし過ぎると痛い目を見そうだ。


付き合いたいのは確かだけどな。

出会って1年も経って居ないし、聖奈の妹というのもあって少し慎重に進めないとまずいだろう。

どちらも失う事になったら悔やみきれないし。


「そんな予定あるんだ?」


「そうなの〜!知らなかったの〜?」


「知らなかったなー、そういえばアリサちゃんは彼氏とか作らないの?」


「え〜、だって同級生とか子供っぽいし〜!別にいいかな〜って!」


「アリサちゃん大人っぽいもんね、周りの男は子供っぽく見えちゃうよね」

知らんけど。


「でしょ〜?困っちゃうよね〜!私は付き合うなら、センパイみたいに自分でちゃんと稼いで自立してる人がいいな〜!」


「それは、同級生じゃ難しいんじゃないかな?」


普通の高校生にそれを求めるのは酷だろう。

めちゃくちゃハードル高いぞそれ。


「でもセンパイは小学生の頃から自分で稼いでるんでしょ〜?すごいよね〜!すっごくカッコいいと思うよ〜!」


それを言われると、嬉しいけどちょっと心が痛い。全部前世の知識のおかげだから。

・・・まあちゃんと株価とかを覚えてた自分のおかげではあるけど。


色々と話しているうちに水族館に到着した。

ここには美咲達とも来たことがあるけど、実際魚を見る楽しさってそこまでわからないんだよな〜。

綺麗だとは思うけど・・・どちらかというと水族館で目を輝かせている女の子を見る方が好きだ。


アリサちゃんと手を繋いで、水槽を見て歩く。

もちろん俺から繋いだわけではなく、アリサちゃんからくっついてきた。

こう言うところがこの子の可愛いところだ。



「せんぱ〜い、そろそろご飯にしない〜?お腹空いて来ちゃった〜!センパイのおすすめのお店連れてって〜?」


「ん〜寿司とかどう?」


「いいね〜!お寿司大好き!」


魚見てたからつい寿司って言ったけど、あんまり細かい事を気にする子じゃなくて助かった。

人によっては嫌われるかも知れない、気をつけないと。



「センパイ今日はありがとう!すっごく楽しかったよ〜!また連れてってね〜!」

食べ終わった後、家に帰ってきてデートの時間は終わった。


「こちらこそ楽しかったよ、相手してくれてありがとう」


「私も朝まで2人だけがよかったな〜・・・」

少し寂しそうな顔をして、甘えた声で言ってきた。


うっ・・・可愛い・・・でもここは我慢しないと。

聖奈の気持ちを確認するのが先だ。


「みんなと遊ぶのも楽しいでしょ?今日もお泊まりできるんだし、それで我慢ね?」


「反応つまんないな〜?もうちょっと気にしてくれてもいいのに〜!」

内心ドキッとしていたけど、気がつかれなくて済んだみたいだ。


「可愛いなって思ったけどね。そう言うことはちゃんと段階を踏んでからだね」


「は〜い!お姉ちゃんの部屋行ってくるね〜!」


いまいち本気なのかどうか分からんな〜。

聖奈の気持ちも確認しないといけないし・・・どうしようかなあ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る