第89話 (2012年11月21日)初任給

「せんぱ〜い!おでかけしよ〜?」


「んー、昨日疲れたからな〜。今日はちょっと」


「え〜、まあ渚先輩と出店忙しそうだったもんね〜!」


「そうそう、来週なら良いよ」


10月15日、大学の学園祭が終わって次の日、高校生組も家に来てゆったり過ごしている。

昨日俺たちは、お好み焼きの出店を出して、美咲達はステージでダンスを踊っていた。


高校生の時の出店とは違って経済学部らしく、企画書や決算書などしっかりと計算して計画していて、サークル活動の一環のような感じだったな。


後から聞いたが、彼女達はみんなミスコンにも誘われていたみたいだ、断ったらしいけど。

アナウンサーになるわけでも、モデルになるわけでもなく、必要ないそうだ。

杏奈はすでにモデルとして事務所に所属しているしな。


彼女達を自慢したかった気持ちもあるが、面倒の方が多いだろう。

他の男に目をつけられても困るし。


「じゃあなんか別のことして遊ぼうよ〜!」


「ちょっとー!浩介、今聖奈とゲームしてるでしょー?取らないでよー、一緒にやるなら良いけどー?」


「アリサちゃんもやってみる?」


「ん〜、じゃあちょっとだけやってみる!このゲームやったことないからセンパイ教えてね〜!」


「聖奈の方が強いから、聖奈が教えるよー!」


聖奈はゲームセンスが良くて、普通に負けることが多い。

この子運動神経も悪くなくて、声が綺麗で歌も上手く、ゲームも上手い、あと顔が良い。

勉強が少し苦手なくらいで、かなりスペック高い。


「え〜、センパイが良いな〜」


「なんでよー!ダンスの練習の時は頼ってきたくせにー!」


先月、9月末には愛美達の文化祭にも遊びに行った。

愛美と妹は同じクラスで、縁日のようなミニゲームをやっていた。


クラスの男の子からの、「誰だこいつ」みたいな目で睨んできたことで、愛美がどれだけ人気なのが分かった。

可愛いもんな、残念だけどもう俺と付き合っているんだよな〜。


アリサちゃんはステージでダンスを披露していた。

この練習を聖奈に手伝って貰っていた。

姉妹揃って体を動かすのが好きな様だ。


ツインテールに纏めた綺麗な金髪が揺れて綺麗で、めちゃくちゃ可愛かった。

1人だけ腰の位置が違ってスタイルが段違いだったな。


「良いじゃん!お姉ちゃんよりセンパイの方が優しいもん!」


「聖奈だって優しいよー!アリサに怒ったことないじゃん!」


「ほらほら、喧嘩しない、仲良くね?」

喧嘩するほど仲がいいとは言うが、2人揃うとよくこうなる。


「は〜い!お姉ちゃん言われてるよ〜?」


「アリサもでしょー!?早くコントローラー持ってー?やるよー!」



「ねえ!浩介!今ATM行ってきたんだけど、残高がおかしい事になってたんだけど!なんでだろう!?」


夕方、美咲と杏奈が買い物から帰ってきてリビングに駆け込んできた。

昨日渚に協力してもらいながら、資産管理会社の給料を振り込んでおいたからそれのことだろう。


月末締めで翌15日支払いになっているからな。

9月1日入社扱いで、今日が最初の給料日になる。


「それ会社の給料だよ、安心して?」


「え、給料って70万円くらい入金されてるんだけど!?間違ってるよ?」

額面で100万円、手取りだとそれくらいになる。


「「え?」」

聖奈やアリサちゃんも驚いている。


「うん、それであってるよ?100万円って言ったでしょ?」


「うん?え?」


「だから、月給100万円だよ?」


「は!?月?年じゃなくて?」


「うん、もちろん。そのつもりで話してたけど?」


「いやいや、おかしいよ!貰いすぎだって!」


先に手伝ってもらっていた渚も同じような反応してたな〜。

ちゃんと黙っててくれたようだ。

振り込んで仕舞えばこっちの物だからな。


「そんなことないよ、家事のことを考えたら普通じゃない?全部外注したらそれくらいになるし。最近家事労働は年収1000万円ってテレビでもあったでしょ?」


各分野のプロの給料で計算しているから、計算がおかしいんだけどな。

そんなことはどうでもいいけど。


「いやでも・・・」


「聖奈お手伝いくらいだけどいいのー?」


「それだけ美咲達には感謝してるってことだから、受け取って?それに本当に今の資産からしたら大した額じゃないからね。もう振り込んじゃったから今更戻せないし」


「う〜ん・・・わかったよ〜。じゃあ、何かお仕事手伝えることがあったら教えて?なんでもするから!」

「私も」

「聖奈もー!」


「ありがとう、多分これから手伝ってもらうことはあるから、その時に頼むね」


「お姉ちゃんいいな〜!私も働きたいな〜!」


「アリサちゃんは高校卒業してからね?愛美もまだだから」


「そっか〜、ざんね〜ん」


「渚はこの事知ってるの?」


「昨日も手伝ってもらったから知ってるよ。今は愛美達とビリヤードでもしてるんじゃないかな?」


「へー?ちょっと渚の所に行ってくるね?」

渚がんばれよ〜。


なんとかなったな。


割とマジで大した事ない額なんだよな〜、だから資産のことを詳しく知っている渚も少し説得したらすぐに手伝ってくれたしな。

バイトの由依ちゃんでも彼女達の半分くらいの時給を渡している計算になる。


サークルの先輩にもバイトのことを話したが、結構好感触だった。

5人分の家事は大変だろうし、早く美咲の負担を減らしてあげたい。





11月21日


サイハーエージェント株を購入した。

ここはオンライン広告や、ゲーム、メディア事業を行っている企業で、今は株価が低い水準で推移している。

御多分に洩れずこの企業も政権交代の影響で株価は上昇する。


一株16万円で2万5000株を合計40億円で購入できた。


ユーロ円相場が順調に推移していて、含み益もかなりでているので、余剰資金をFX口座から移動する。

証券口座は204億3000万円になった。


「浩介って不動産投資はしないの〜?」


「それも考えてはいるよ。まだ株とかFXでもいけるけど、どうしても資金が大きくなるとね」


「やっぱり値動きとかに影響が大きいから〜?」


「うん、それに持株比率が大きくなり過ぎないようにも気をつけてるからね」


「そっか〜!でも浩介の場合はやっぱり株とかの方が利益率は高いよね〜?」


「そうだね、不動産だと急激な値上がりとかはしないからね。やるとしてももう少し先かな」


どうしても不動産投資は投資額の数%の収益になるからな。

ある程度安定はしているが、資産を増やす事には向いていない。


将来的にも人口が減ると、それだけ需要も減るからな。

未来の知識も当てにならないし、しっかり考えないといけない。

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