第84話 夏休み

8月1日


今日は家のすぐ隣にある大きな公園で花火大会がある。

もう夏休みに入った高校生組もウチに集まっていて、今は浴衣に着替えている。


「お待たせ!」


「お、可愛いね!みんな似合ってるよ」


「ありがと〜!じゃあ、屋台行こっか〜」


今年は屋台で買い物だけをして、すぐ家に帰ってくる。

なんといっても家から見えるからな。


リビングからは公園の池が目の前に見えるし、花火もそこで上がる。

去年までのように、凄い人だかりの中で見なくてもいいし、クーラーのついた涼しい場所から見ることもできる。


「ふ〜、暑かったね〜!」


「いっぱい買ってきたし、早速食べようよー!」


「ほら、お姉ちゃん落ち着いてね〜」


「なんかアリサの方がお姉ちゃんみたいだね!」

愛美の言う通りだな。聖奈よりアリサちゃんの方が落ち着いている。


「むー、そんなことないよー!」


「あ、始まったよ!」


美咲が言った通り窓の外を見ると、花火の打ち上がっている筋が見えた。

空に大きな光が輝く、遅れて大きな音も聞こえてきた。


「きれ〜!」


「せんぱ〜い!外で見ようよ〜!」


「いいよ、みんなも外出よっか」

アリサちゃんに手を引かれて外に出る、外で見ると音の迫力が全然違う。


「あ、プールにも映ってる!綺麗だね!」


「ほんとだ〜!来年はプールに入りながら花火見るのもありかも〜!」


「それいいね、そうしよう」

花火を見るか、水着姿を見るか、忙しくなりそうだ。


「家からこんな近くに見れるって、すごい贅沢だね」

杏奈も綺麗だな〜。スタイルのいい美人って浴衣姿も様になるよな。


「だね、目の前には遮るものもないし」


下をみると、凄い人だかりで大変そうだ。

これはなかなか優越感があるかもしれない。





8月11日


期末試験が終わり夏休みに入った。

大学の夏休みはまる1ヶ月も休みがあるのが嬉しい。


明後日から東京で5日ほど過ごし、アメリカ旅行に向かう。

杏奈だけは撮影の仕事もあって、一緒にいられない時間もあるけど。


「静かだね〜、先輩なにするー?」


「一日家にいてもいいし、どっかに出かけてもいいよ。愛美は何かやりたいことある?」


今日は美咲、渚、聖奈、杏奈の4人は揃って実家に帰っている。

流石に夏休み中に1回くらいは帰って来なさい、と親がうるさいらしい。


みんなは揃って帰る事を愛美に伝えて、2人だけで過ごせるようにしてくれた。

普段一緒に過ごせない愛美に配慮してくれたみたいだ。


「ん〜!悩むー!2人だけで家にいるのもレアだしな〜!でもお出かけもしたいしどうしよう!?」


「じゃあ、お昼はゆっくりして、夕方になったらご飯とか食べに行こっか?」


「あ!それがいいかもー!映画みようよ!ポップコーン作るねー?」


「おっけー、ホームシアターの用意するよ。なに観る?」


「ん〜、先輩のおすすめで!」


用意といっても電動スクリーンを降ろすボタンを押すだけで、自分の手でする必要もない。

あとはプロジェクターの電源を押すくらいだ。


なに観ようかな、適当にハリウッド映画にするか。


キッチンからはパチパチとポップコーンの弾ける音が聞こえてくる。

食欲のそそる香ばしい匂いもしてきた。

今のうちに、いい感じのレストランの予約もしておこう。


「できたよー!一緒に食べよ!」


「ありがとう」


愛美はローテーブルにお皿を置いて、こちらに身を寄せてくる。

今までこうやって、愛美と2人でお家デートというのもなかなか出来なかったな。


やっぱり高校の近くに家を建てて正解だった。

聖奈の妹のアリサちゃんも家に来るようになったし。


サラサラとした髪が腕に当たって気持ちがいい。

ずっと頭を撫でていたくなるな。


映画を見たあとは、イチャイチャしながら過ごした。

2時間ほど経って、レストランの予約時間が近くなった。


「ふぅ、お腹すいたね」


「ね〜、どこ行く?」


「さっき予約しておいたから、楽しみにしてて」


レストランまでは車で移動する。

こうやって行動範囲が広がるのも車のいいところだ。


30分ほどのドライブをして目的地に到着した。


「わー!海だー!」

海の目の前にあるイタリアンのお店だ。


「いいでしょ、ここ夕日見ながら食べれるんだよ」


「いいね〜!綺麗!」


前世で来たことがあってよかった。料理も美味しいし、何より景色がいい。

今度みんなも連れてこよう。


帰りは車で、愛美を家まで送った。

近くだし、実家にも顔を出しておくか。


「ただいま〜」


「あら?浩介帰ってきたの?先に言ってくれればご飯用意してたのに」


「ご飯は食べたから大丈夫。たまには顔見せようと思って」


「あ、お兄ちゃん!どうしたの?」


「彩華の荷物持っていくよ。空港まで持って行くの大変でしょ?」

ついでだし旅行の荷物も持っていってやろう。


「え、ちょっと待って!すぐ詰め込むから!」

まだ準備終わっていなかったか。まあ、急だからしょうがないか。


「最近どうだ?勉強は頑張ってるか?」


「うん、順調だよ」

父親も元気そうだな。


「ならいい。投資はどんな感じだ?」


「いい感じだよ、それこそ一生困らないくらいには」


「そうか、昔お前が投資したいって聞いた時にはあまり気にしなかったが、そこまで成功するとは思わなかったな。彼女との関係はどうだ?」


「それも順調。なにも問題ないよ」


「大事にしてやれよ?まあ、順調ならよかった」


「うん、ありがとう」


「お兄ちゃん、出来たよ!」


「お、じゃあ持ってくから、明日ウチに泊まるでしょ?」


「うん!楽しみだねー!」


「じゃ、帰るから」


「海外は気をつけろよ」

「あら、もう帰るの?もう遅いし泊まって行ったら?明日ご飯も作るよ?」


「旅行の準備とかもあるから、今日は帰るよ」


久しぶりに1人で過ごすしな。

彼女といるのも楽しいけど、1人で過ごすのもいいだろう。


なかなか最近は見ることもなかったけど、ネット小説とか読みたいし、配信とかも見たいしな。

前世ではいつもそれで時間を潰していた。


あ〜、Vtuberとか見たいな。もう7年くらい観ていないのか?

あれが出てくるのって2017年とかだったかな?


まだまだ先だな〜。

出てきたら投資とかしたいな。前世よりももっと楽しめるかも。

1人で思う存分に趣味を楽しむ。



・・・でもやっぱり1人で寝るのは寂しいかもしれない。

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