第66話 高校3年生


「お待たせ〜!今日は私が全部案内するからね〜!」

春休みに入り、渚にランチに誘われたので電車に乗って移動する。


「ありがとう、今日もおしゃれで可愛いね」


「でしょ〜?知ってる!でもありがと〜!」


「それで、どこに行くの?」


「それは着いてからのお楽しみ〜!」


電車からタクシーに乗り換え、目的地らしい店に着く。

初めて来る店だ、結構高級感あるな。


「和食屋さんかな?」


「ここね、お父さんに頼んで予約してもらったんだ〜!」


「へぇー、あのお父さんの。じゃあかなり期待できそうだね!」

接待とかも良く行くだろうし、いい店を知っていそうだ。


店に入ると個室に通される。事前に注文は済ませているようで、

渡されたメニューは飲み物のみ、コースの内容が書かれた紙は既にテーブルに置かれていた。


「ここの懐石が美味しいんだって〜!」


「楽しみだね!」


美味しい料理に舌鼓をうっていると、渚が話しかけてきた。


「私達ももう長いよね〜、もう5年半も付き合ってるんだよね〜!2年続いてる友達とか、周りのみんなは長いねとか、よく続くねとか言ってたけど」


「もうそんなに経ったんだね、そういえばもうすぐ渚との2000日記念日だしね」


「そういうのしっかり覚えてるの偉いよね〜、普通の男は女の子の方から言わないと気にしないらしいのに」


「そこはちゃんとしないとだからね。記念日はしっかり覚えてるよ」


覚えてはいない。付き合った日からカレンダーにメモをして確認しているだけだ。

1ヶ月とか半年とか1000日もそれぞれお祝いした。

こういう細かいところをしっかり出来てないとダメだよな。


正直めんどくさいし、どうでもいいと思っているけど、女の子からしたら大事なところみたいだ。

ただ、4人と付き合うと記念日が多すぎて困る。特に最初の頃は期間が短いから特に大変だった。


「浩介のそういうところ、好きだよ」


「俺も渚の好きなところはいくらでも言えるよ?可愛いし、髪が綺麗だし、肌も綺麗だし」


「見た目だけ〜?」


「そんなわけないでしょ?気が利くし、努力家だし、優しいし、いつも周りに気を遣ってくれるところとか、渚がいると安心感があるよね・・・いつも助けられてる」


「えへへ、ありがと〜!ちゃんと見てくれてるんだね〜」


「もちろん!大事な彼女だからね。ちなみに美咲と俺どっちが好き?」

真面目な話が続いたので、少し茶化しながら質問する。


「も〜せっかくいい話だったのに〜!どっちも同じくらい好きだよ〜」

同じくらいか。いつの間にか美咲と並んでいたようだ。

最初は美咲が1番だったけど、純粋に嬉しいな。


色々と話していると、食事が終わり店員さんが伝票を持ってきた。

どのくらいだろう、結構かかったかな?


「あ、いいからいいから〜!今日は私が出すからね〜!いつものお返しだよ〜!」


財布を取り出そうとすると、止められた。そういえば前にご馳走してくれるって言ってたな。

ここはありがたく好意を受け取っておこう。


「ありがとう!ご馳走さま」

万札を7枚くらい渡してたな・・・ランチでこの値段って、お義父さんいいもの食べてるな〜。


「これでようやく1歩って感じだね〜、まだ足りないけどちゃんとお返しするからね〜!」


「気にしなくてもいいんだけどね〜、これからもよろしくね?」


「うん!ずっとみんなで一緒だからね!」





4月、高校3年生になった。

春休みは旅行に行けるような状況でもなく、3年生は体育祭の準備もあったので、なかなか忙しかった。


家の方は、設計事務所との打ち合わせも終わり手付金として半分の5億円も振り込み、今建っている建物の取り壊しも始まった。


「家も来年の4月までには間に合いそうでよかったね!」


「そうだね、美咲達が手伝ってくれたおかげでオシャレになりそうだし」


「美咲センスいいもんね〜!」


「早く完成したところ見たいね!」



教室に着くと、女の子達が杏奈を囲んでいた。


「どうしたの?」


「あ、これ見てー!杏奈が写ってるんだよ」

杏奈が答える前に、周りにいた子が先に雑誌を見せてきた。


「あ、ほんとだ!すごい!」

ローカル誌だが、街を歩いているときに頼まれたらしい。


「その場でスカウトもされたんだってー!」


「そうなの?すごいじゃん!受けたの?」


「うん、挑戦してみようかなって思って」


「おめでとう!」

美咲達も自分のことのように喜んでいる。



「浩介のおかげだよ?」

昼休み、いつものメンバーでご飯を食べている時に杏奈がこっそり話しかけてきた。


「なんで?そんなことないでしょ?」


「ううん、スカウトされた日ね、浩介に買ってもらった服とかバッグとか身につけてたから写真撮って貰えたんだと思う」


「でも昔もスカウトされてたんだし、杏奈に魅力があるからだよ」


「その時も浩介に買ってもらった服着てたから。それに最初の時は自信なかったけど後押しして貰えたし」

前世でも俺とは関係なしにスカウトされてたから違うと思うけどな。

しかし、自信なかったのか。前世でも誰かに後押しして貰えてたのかな?


「そっか、理由はともかく嬉しいね」

まあ、勝手に勘違いしてくれる分にはいいか。

卑怯だが証明する術がないし、目標の為にもなるし。


「だから、感謝してる。ありがとう」


「ねー、浩介はどう思うー?」

聖奈がこちらに話を振ってきた。


「あぁ、ごめんごめん。なんの話だっけ?」


「もーちゃんと話聞いてよー!体育祭、応援団かチアのどっちがいいかなって聞いたのー!」


「聖奈はチアが似合うと思うな、可愛いし。衣装も似合うと思うよ?」


「そっかー!じゃあそうしよっかなー!でも応援団もかっこいいんだよねー!」


「みんなはどうするの?」


「私はチアにしようかなって思ってる!」

「私もかな〜!」

「私は応援団の方にしようかなって」

「私も杏奈と同じく応援団かなー」


杏奈と由依ちゃんは応援団をやるらしい。

俺のクラスは男子の人数が少ないので、応援団には女子もかなり入ることになっている。

チアの衣装もいいが、女子の場合法被の下に晒しを巻いていてなかなかに良い。



家に帰り、新しく申請したピットコインの取引所の画面を開く。

先月末から毎日少しづつ購入している。


価格は1ピットコインあたり500円前後で推移している。

やっすいな〜。未来では考えられない水準だ。


しかし、前世よりも値段が上がるのが早い気がするけど、俺のせいか?

現時点で発行済みのピットコインは500万枚程度。取引されている量もごく僅かと言っていい。


今日までで購入できたのは、たったの2万ピットコインほど。

それだけでも価格にかなりの影響が出ているようだ。


この取引所はセキュリティーが甘いので購入した分は全て自分のウォレットに保管してある。

後々大規模な盗難事件も起こしているからな、気をつけないと。

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