第45話 宿泊研修
今年の宿泊研修は京都旅行だ。
2泊3日で、新入生との交流イベントと、勉強会、自由行動の時間がある。
「こうすけくんと2人っていうのは珍しいね」
京都へ向かう新幹線の中では、杏奈ちゃんと隣同士で座っている。
3年も一緒にいて、2人きりで話す機会というのもほとんどなかった。遊ぶときは6人一緒だ。
「だよね、いつも部活メンバーの6人だもんね〜。杏奈ちゃんって家では何してるの?」
「んー、ファッション誌見たり、歌ったり」
「へ〜、確かにいつもおしゃれだもんね〜。歌も上手いし!」
「そんなことないよ〜、美咲の方がスタイルいいし、おしゃれだよ〜」
「あはは、美咲もおしゃれだけどね、杏奈ちゃんも綺麗だし」
「あとは、音楽聴いたりも好きかな〜」
「どんな曲聴くの〜?」
「gree○とか、流行りの曲が多いかな〜」
「あ、それいいよね〜」
「ほんと?私、この人たちのこの曲好きなんだ〜」
そう言って、音楽プレイヤーを取り出し、片方のイヤホンを差し出してくる。
あ、このシチュエーションいいな。イヤホンの片方ずつを2人で使うって憧れてた。
しかも、相手側の方ではなく、反対側の耳につけているため、顔と顔が近い。
「あ、これ好き!趣味が合うね〜」
そういうと杏奈ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
京都駅に着くと、まずホテルに向かい、交流イベントがある。
宿泊施設の宴会場で、新入生クラスの班と2組合同で、クイズ大会に参加したり、簡単なゲームをし、夜は勉強会だ。
「杏奈ちゃんこの問題分かる?」
「わかんない」
「杏奈ちゃんこれ好き?」
「うーん、別に」
新入生の男が話しかけているが、杏奈ちゃんはそっけない。
初対面だが元からチャラいのか、高校生デビューなのか、積極性がすごいな。
次の日は1日自由行動になる。
「あ、いたいたー!」
「お、美咲、渚、聖奈!みんな揃ってるね!」
それぞれのクラス、3つの班で一緒に行動する。
しかし人数が多い。全部で24人もいるのだから、それはそうだろう。
「聖奈、清水寺行ってみたい!」
「いいね、みんなもそれでいい?」
「いいよー」
22人分の返事が帰ってくる。流石にこの人数だと周りの迷惑になりそうだ。
「渚ちゃん、荷物持ってあげようか?」
「美咲ちゃん、夜って暇かな?話したいことあるんだけど・・・」
「聖奈ちゃんって好きな人いる?」
一緒に行動している男子が次々と3人に話しかけている。
旅行で浮かれているのだろうか?夜誘って何する気だ?告白か?
まあ、そんなことは許さないんだけど。
「美咲!渚!聖奈!こっちきて〜」
「由依!一緒に歩こ!」
杏奈ちゃんと同時に声が出た。気が合うな。
「「「「はーい!」」」」
「6人で一緒に歩こう!」
声をかけていた男子から睨まれるが気にしない。
「よかったー、クラスが変わってからすごく話しかけられるようになったんだよねー」
「はい、浩介荷物持って〜」
「えぇ、それくらい自分で持ちなよ・・・少しだけな?」
「聖奈も6人一緒じゃなくなってから沢山話しかけられて疲れるー!」
これまでは、2年の時以外は一緒に行動してたから、男たちは話しかける機会がなかったんだろう。離れた今がチャンスだと思っているのかもしれない。
そうこうしているうちに清水寺についた。
「へ〜、この石の間を目をつぶって歩けば恋愛成就だってよ?」
「私はいいかなー!もう叶ってるしー!」
彼女の3人はあまり興味なさそうだ。
「私達はやってみようかな?」
杏奈ちゃんと由依ちゃんは興味しんしんで、チャレンジするらしい。
「お、杏奈ちゃんすごい!できたね!」
杏奈ちゃんは無事に成功した。恋愛成就の相手が俺だったらいいんだけど。
「由依ーどこ行ってるのー?そっちじゃないよー」
由依ちゃんは方向感覚がなかったようだ。いつか叶うといいな?
「お守り買ってこっか?」
「うん!」
6人分のお守りを買って行った。俺たち4人分は家内安全。杏奈ちゃんと由依ちゃんは恋愛成就だった。
「えへへ、私たちはもうこのお守りでいいよねー!」
「ね!」
そんなことをしていると、他の観光客に紛れて、他の班のメンバーとは逸れてしまった。
まあ、不可抗力だし?逸れたんならしょうがない。
「6人でいこっか?」
「「「「「うん!」」」」」
清水の舞台で写真を撮り、バスに乗って銀閣や金閣など、有名な観光地を巡る。
「どこ行ってたの?探したのに!」
「ごめんごめん、いつの間にかいなかったんだからしょうがない」
夕方、ホテルに戻ると、班のメンバーから怒られた。
美咲達もそれぞれ怒られているようだ。
3日目のお昼にはもう新幹線の中だ。
行きと同じく、杏奈ちゃんと一緒に座る。
「これ早速つけてみたんだー」
そう言ってカバンにつけた恋愛成就のお守りを見せてくる。
「叶うといいね!」
「うん、ねえ一緒に音楽聞こ?」
杏奈ちゃんの好感度も結構いいっぽいな。
・・・彼女がいることを知っているから、警戒心がないだけかもしれないが。
まあどちらにせようまく行っている気がする。
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