第27話 春

2月14日、平日の今日は学校中で甘い匂いがしていた。



「はい、こうすけ!バレンタインのチョコ!」


「こっちは私のー!美咲と2人で集まって作ったんだー!」


「お、ありがとう!」

この日ばかりは堂々とお菓子を持ってきても怒られない。まあ、普段から教師のいないところで食べてるんだけど。


「こうすけー、聖奈のもあげるー!」


「私たちも、はいこれ」

今年は部活メンバー5人からチョコをもらえてホクホクだ。

女の子同士でも交換し合っている。女の子同士がキャッキャしている光景は美しい。

しかし5人分だとお返しも大変だ、何あげよう?




3月中旬に終業式があり、ようやく春休みになる。


春休み初日、ちょうどホワイトデーなので部活メンバーで遊びに行くときにお返しを持っていく。悩んだ末、海外の高級メーカーのお菓子を買って行った。銀行口座の残高が心許なくなってしまった、残り14万ほどしか残っていない。


「わー!ありがとー!」


「美味しそう!」

好評なようでよかった。


「この後どこ行こっかー!」


「聖奈カラオケいきたーい」


「いいね、行こっか」


「え、杏奈ちゃん歌うまっ!?」

カラオケに行き、いの一番に聖奈が歌った後杏奈ちゃんの番になる。

杏奈ちゃんは今人気の女性歌手の曲を歌っていた。この曲懐かしいなあ・・・


「杏奈カッコいー!」

ほんとに綺麗な声だ、前世では聞いた事がなかったが惚れなおしそうだ。


「渚、一緒に歌おっか!」


「おっけー!」

改めて思うがこの2人は本当に仲がいい。渚は美咲にベタ惚れしているが、美咲は渚のことは親友レベルにしか思っていない気がする・・・心のうちは本人にしかわからないが。


俺も現世ではまだ新しい、2021年でも人気のあった粉っぽい曲を歌う。

春になってあたたくなり、雪のゆの時もない時期だから季節はずれだが。


「次、由依ちゃんの番!」

楽しいが、6人でカラオケに来ると如何せん待ち時間が長くなる。

注文したポテトを摘みながら楽しそうにしている渚を見る。


・・・この子が報われるようにしないとな。そのときには美咲が恥ずかしい思いをすることになりそうな気もするが。




3月下旬、兄も無事大学に合格し受験が終わったので、久しぶりに家族全員で東京旅行にいく。


美咲ちゃん家族も同時に東京旅行に行くらしく、予定を合わせて一緒にネズミーに行くことになった。

ちなみに渚も美咲家族と一緒に行くらしい、あそこの両親は忙しくていつも家にいないからな。


「ネズミーついたー!」


「楽しいねー!」

2人とも入園したばかりだというのにもう楽しそうだ。俺もウキウキしているからか心なしか足取りが早くなる。ネズミーの園内ではそれぞれの家族と離れて、3人で回る。


「これ可愛いー!」

ネズミの耳のついたカチューシャを見ていたので購入する。


「ごめんね、ありがとう!」


「あはは、こうすけ似合ってるー」

なぜか俺の分まで買わされた。3人でいるときには俺がお金を出すことにしている、気にしなくていいと言っているのに、美咲はまだなれないようで申し訳なさそうにしていた。渚は最初から何も気にしない、こういう性格もかわいいものだ、あまり気にされてもこっちが困る。


「少し濡れたねー!」

ネズミーランドでも一番奥まった場所にある滝壺に落ちるアトラクションに乗ると水飛沫がかかる。水も滴るいい女の完成だ・・・女の子の濡れた髪っていいよな。


「あはは、楽しかったー!」


「美咲握ってる手がガチガチだったね」


「もう!そういうの言わなくていいじゃん!怖かったんだもん!」


「いいなー私も隣に座りたかったー!」


「次交代ね!」


「あ、美咲下向いちゃってるー」


「わ、落ちる瞬間に写真撮られるんだ!恥ずかしー!」


「これは買っておかないと」

アトラクションの出口で写真が売られているので購入する。たかが写真でなんでこんなに高いんだろうか。夢の国では思い出を残すのにもお金がかかる。


「お腹すいたねー!」


「ペッコペコだよー」

お昼は海賊のアトラクションに併設されているレストランに行く。昼でも夜でも常に薄暗く、雰囲気がいいところだ。


「えい!」


「あ、行儀悪いなあ」


「いいじゃん!ポテト余ってるんでしょ〜?」


「しょうがないなあ、はい交換」

行儀が悪いので、お皿ごと交換して残ったポテトを渡す。ちなみに俺は嫌いなものを最初に食べ、好きなものは最後まで取ってくタイプだ。


「ありがとー!」


「また渚はそういうことする〜、こうすけ、美咲の半分あげるね?」


「ありがとう!」

少しは美咲を見習ってほしい。


「花火綺麗だね!」


「きれー!」


両手を2人と繋ぎ、花火を見る。

夏に見た花火とはまた違って、テーマパークで見る花火もすごく綺麗だった。


「また来ようね!」


「うん!」


楽しい時間はすぐ過ぎるもので、東京旅行はすぐ終わる。


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