第3話 取引準備

「本屋さんにも行きたい!」


「はいはい、本屋さんね」


銀行から帰るときについでに四季報(上場企業の情報や株価データなどが書いてある本)などの本を買ってもらうことにした。


前世では過去のチャートを見てこの時に買っていれば今どれくらい儲かっていたか、妄想するのが好きだったが、実際現世の細かい情報について詳しいことを知っているわけではない。

目星をつけている企業はあるものの、詳しい情報を手に入れないといけない。


前世で実際に取引したことあるのはFxと仮想通貨くらいで株の取引はないのだ。


妹がねだったのでケーキやお菓子を買いに行き家に帰った。

晩御飯を食べたあと、買ってきた本を読みながら今日は寝ることにした。


「おはよー今日は塾あるからすぐ帰ってきなさいよ」


次の日母に言われて、忘れていたが習い事をしていたことを思い出した。

小学校6年の時は塾が週に2回、ピアノと習字を週に1回やっていたのだ。


我ながら忙しすぎるだろ・・・これは減らしたほうがいいな、投資に使う時間を増やさないと。

どうせ字はそんなに上手くならなかったし、習字はやめよう。


「わかったー」


とりあえず返事をして学校へ行き、委員会もなかったので何事もなく帰ってきた。



当時通っていた塾は家からすぐ通える場所にある大手進学塾だった。


「ヤッホーこうすけ宿題やった?」


女の子が声をかけてくる。嬉しいことに、当時通っていた塾のクラスは女の子ばかりで男は自分ともう一人しかいなかった。


「ヤッホー え、宿題とかあったっけ??」


そんなものは知らないし、覚えていない。


「あーあ、怒られるよー」


転生してくる前の授業で出されていたみたいだ


「ごめん、今急いでやるからうつさせて!」


「えーしょうがないなあ」

優しい子で助かった。持つべきものはやっぱり友達である


「聖奈(せいな)ちゃんは優しいなあ」


「でしょー!」


この子は小学校は違うが、自分と同じく受験をして同じ中学に行く子だ。

今のうちにつばつけておきたい子の一人だ。


聖奈ちゃんのおかげで怒られることなく授業を終えることができた。


「今度お礼するからさ、何がいい?」


「え、急にどうしたのいつもそんなこと言わないくせにー」


「いやほんと助かったからさー」


「えー、じゃあ今度聖奈にお菓子ちょうだい!」


「わかった、今度持ってくるね!」

小学生らしい要求で助かる


家に帰り晩御飯を食べたあと、もう日課と言っていいであろう株のチェックと、いい銘柄探しに没頭する。


これなんかいいんじゃないか?ソフトウェアの開発なんかしてるハイボウズ、坊主頭のマスコットがなんともいえない会社だが、確かここも来年の頭に高騰してたはずだ。


しかし株というものは気の長い投資だな。Fxをやっていた弊害なのだろうが、年単位で投資をしなきゃならないことがすごくまどろっこしい。


もう少し前世に近い、もっと先の株なら多少わかるんだが、2005年の株価なんてほとんど覚えていないからデイトレード(1日単位で取引すること)も難しい、困ったもんだ。


とりあえず、他に良さそうな株が無ければここにしよう。小学生はもう寝る時間だ。




今日はお昼休みに委員会があるから美咲ちゃんと二人で話せる日なのでウキウキだ。


「おはよー」

今日も今日とて学校へ行き挨拶をする。挨拶は大事だ。古事記にもそう書いてある。

お昼になると美咲ちゃんと二人で放送室へ行き、やらなければいけないことをする。


放送委員会はそもそも給食時間に放送したり、音楽をかけたり、掃除の時間に放送室の掃除をしたり、下校の放送をしなければいけない。駄弁るだけではないのだ。

まあやることが終わればあとは暇な時間だ。


「それで、答え教えてよー!」

美咲ちゃんが一昨日の話の続きを聞いてくる。


「じゃあ、答えいう前に美咲ちゃんの好きな人のヒントも教えてよ!」


「んーどうしよっかなー」


「じゃあヒントね、同じ放送委員会の人!」


「ほうほう、俺のことかなー?」


「違うよー、もっとかっこいい人!」

俺じゃなかったかー、知ってた。

自慢じゃないが俺はカッコいいという範疇には入らない。


・・・決して不細工ではない、と自分では思っているがまず身長が足りない。

それも背の順で並ぶ時に男子の中で一番前を争うレベルだ。


せっかく成長期に転生できたのだから頑張って背を伸ばさなくては。

それはともかく、どうにかしてこっちを見てもらわないとなあ。


「えー俺もかっこいいでしょー?」


「んー、どっちかっていうとかわいい」

小学生に可愛いって言われるのは少し情けない・・・


「もっとかっこいい人かー誰だろ?同じ学年だと男子は少ないし、かっこいい人っていたっけ?」


「んー、そうだね〜」

同じ学年じゃなさそうかな?


「え、年下?」


「んーーーーー、どうでしょう、秘密!」

この反応は違うっぽいな、同じ学年でも年下でもなければ、委員会担当の先生かな?


「へー、加藤先生かな?」


「え、え?え、なんでわかったのー?」

アホの子かわいい


「先生のどんなとこが好きなの?」


「なんとなく大人って感じがして」

「もー私のことはいいでしょ?こうすけくんは?」


「美咲ちゃん」


「ん?」


「いや、だから美咲ちゃん」


「え!?」


「美咲ちゃんが好き、今は返事とかしなくていいからゆっくり考えてみて」


「あ、わ、わかった!か、考えてみる!」

とりあえず、こっちを意識させることから始めよう。


・・・多分先生が好きっていうのは大人の男性への憧れが大きくて恋愛感情じゃないんだろうなって思っておく。ひとまず好きな人が同級生じゃなくてよかった。



取引開始まであと4日



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田中聖奈たなか せいな


学校は違うが塾の同級生。

前世では同じ中学高校に進学し、そこそこ仲の良い友達だった。


ロシアと日本のハーフで髪の毛は茶髪。見た目も性格も明るく人気がある。

背は小さいが出るとこは出ている。

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