第3話
「お、お待ちください!」
「そうです!」
声を掛けてきたのは侯爵家嫡男と伯爵家の次男だった。彼らの後ろには多くの男性貴族が控えている。
「何故ですか?私は傷物令嬢です。この場に相応しくないのはお分かりでしょう?」
彼らがどうして私に声をかけてきたのかは分かっている。
婚約破棄されても、腐っても私は公爵令嬢。
今目の前にいる人達のように公爵家と繋がりを持ちたい貴族は大勢いるのだ。
「いいえ、エリーズ様は傷物ではありません!傷物はあちらにいらっしゃるモーリス様です!」
「そうですよ、エリーズ様を傷物と言う人など会場におりません!」
貴方達の真後ろの人に言われましたけどね。
面倒だなと思っていると今度は女性貴族達もやって来ます。男性貴族に囲まれて良い気になるなと言いに来たのでしょうか。
「エリーズ様、可哀想ですわ」
「ええ。あんなのに縛り付けられていて…」
「今日ようやく解放されたのです!お祝いをしなくては!」
謎の盛り上がりを見せ始める女性貴族達。
どうやらモーリスの評判が悪過ぎて同情を寄せられていたようです。
それにしても男性貴族にも女性貴族にも嫌われているってモーリスは本当にどうしようもない王子ですね。
「皆様、ありがとうございます。ですが、会場にいるのはこの国の貴族だけではありません。あまり騒ぎ立てると皆様まで常識知らずだと思われますわ」
モーリスはともかくとして私のせいで皆が常識知らずだと他国に認識されるのは困る。
にっこりと微笑めば皆は頬を赤らめ恥ずかしそうにした。常識のある方々ばかりですから自分達のやっている事に気が付いたのでしょう。
「そ、そうですわね…」
「あぁ…。あれと一緒にされるのは嫌だもんな」
私を取り囲む貴族は皆一度モーリス達を見てから目を逸らす。
彼、嫌われすぎじゃない?
「これ以上の混乱を避ける為にも私は会場を出ますわ。傷物になってしまいましたがこれからも仲良くしてくださいね」
微笑み、淑女の礼をする。そして彼らの向こう側でどうしたら良いのか分からない他国の王族達に向かって謝罪をする。
「この度はこのような事態になってしまい大変申し訳ございません。私が言うのも烏滸がましいのですが、舞踏会を楽しんで頂ければ、と思います」
粛々と謝罪を繰り出せば「君は悪くないだろう」「悪いのはあっちの駄目殿下だ」と言う声が聞こえてくる。
他国の王族にも駄目人間呼ばわりされる第二王子って…。
失笑しそうになる気持ちを堪えながら礼をして、会場を後にした。
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