性格の悪い願い星

田村サブロウ

掌編小説

 夏の夜の一幕。


 今夜は流星群が見える日だと7時のニュースのコラムで知った少女ウタハは、せっかくだから願い事をしてみようと思った。


 マンションのベランダに出て、星を待ち構える。


「まぁ、願ったからって叶うとは限らないだろうけど……縁起がいいことには変わらないからね」


 待つこと数分後、夜の星空に変化が訪れる。


 白い線を描いては消えていく星が、つぎつぎと見えたのだ。流星群が始まったのだ。


「よし、さっそく願いを! タケルくんと結ばれたい、タケルくんと結ばれたい、タケルくんと結ばれたい……」


 流れ星に3回願いを唱えると、願い事が叶う。


 そのジンクスに従い、ウタハは願いを確かに3回言い切った。


 これで縁起がよくなったと自己満足に浸ったウタハが、ベランダから室内に帰っていく、その直前。


「……あれ? あの星、なんかだんだん大きく……って、近づいてきてる!!?」


 流星群のうちのひとつがどんどん大きくなっていった。遠近法に従って、近づいてきていた。


 やがて流星は速度を落として、宙に対空する。


 巨大な発行する球体状の光。その中央に変な生き物が見えた。


 顔は「☆」の形の星型顔で、下半身はスーツの男性。怪しい予感しかしない風貌だ。


『おじょうさん』


「ッ!?」


 妙な感覚にウタハは驚く。脳内に直接、男声が聞こえた。


『おじょうさん。あなたが私に3回願い事をした、ウタハおじょうさんですね?』


「え、う、うん! そうだけどー!?」


 ウタハは声に出して返答した。言葉が通じるのか定かではないが、一応。


『確認したいことがあります。あなたが結ばれたいと願ったタケルくんは、左の金のタケルくんですか? それとも右の銀のタケルくんですか?』


 星顔の男はウタハに語りかけながら、2つの金属の人形を左右に出してみせた。


 左側には金色の人の像。右側には銀色の人の像がある。


「ッ……どちらも、違いまーす! 私が結ばれたいのは、河野タケルくん! 私の学校のクラスメイトです! れっきとした人間です!」


 金属と結婚する趣味なんて持ち合わせていないウタハは、星顔の男が提示した二択を拒否する。


 どうしよう。話の展開からして、このままだと金の像と銀の像を押しつけられて……あれ? 別にいいのでは? 財産になるし。


『なんと正直なことか! ではあなたは、その河野タケルくんを金と銀より優先するというのですね? 年端もいかない世間知らずでチンケで生意気で幼稚なガキンチョのタケルくんを、売れば100万はくだらない金銀の像よりも』


「いきなりタケルくんをディスってんじゃねぇー!!!」


 ウタハは星顔の男に植木鉢をぶん投げた。SMAAAAAASH!!!


『ウボアー!』


 顔面に植木鉢がめり込んだ星顔の男はへんてこな悲鳴だけ残して、周囲の光もろとも溶けるように消えていった……。


「はぁ、はぁ。なんだったのよ一体」


 ウタハは自問するも、あの星顔の男の正体などわかるはずもなし。


 とりあえず蜃気楼でも見たことにして、今回の出来事は忘れることにしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

性格の悪い願い星 田村サブロウ @Shuchan_KKYM

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ