第2話
『特別警戒警報発令。この町に駐在する軍人は全員出動。警戒にあたれ』
町の各所に配置されたスピーカーから繰り返し警報が流されている。少し前まで賑やかだった大通りも、その警報と共に人っ子一人いなくなった。
それはそうであろう。『特別警戒警報』が発令されたのだ。天災やテロレベルの『警戒警報』では無い。よもやそれは戦争が始まったのと同じくらいのレベルなのである。
私は今、静まりかえった大通りを、この町に配備されている西方部隊駐屯所の三階の窓から見下ろしている。
あれは一週間程前の事である。
駐屯所の執務室で事務仕事をしていた私の元に、一件の無線連絡が入ってきた。寄越してきたのは西方部隊一班。
『町の東北にある森の中で、討伐対象者、対象者レベル3Sである
『了解。ただし深追いするな。奴は【神殺し】の通り名をもつ牡丹。討伐者レベルもSSS。もう一度言う。無理して深追いだけはするなよ』
『はい、わかりました。隊長、それでは捜索に行ってきます』
この無線でのやり取りのあと、一班とは連絡が途絶えた。私は二日待ったが全く音沙汰のない事に胸騒ぎがし、西方部隊の二班から五班に一班の探索と【神殺し】の捜索を命じた。
一班は直ぐに見つかった。この町から東北にある森の中。そこには原型を留めていない肉塊があちらこちらに散乱し、鳥や獣たちからも食われてしまっていた。
西方部隊。
それは、この国の精鋭たる軍人達が集められ東西南北に配置された特殊部隊の一つで、西を任せられた部隊である。
その一班が無残にも惨殺されていたのである。詳しい捜査が行われた。その結果は……恐らく一人による犯行。散らばっていた肉塊の傷口が同一の武具である事が分かった。
恐らく犯人は【神殺し】牡丹である事には間違いないと思われた。彼女なら、それだけの事をやってのけるだろう。使用武具だけではなく、【神殺し】の実力は、多方面から寄せられる情報にて明らかになっていたからである。
何故、【神殺し】は、この【九州】だけを標的にする。
そう【神殺し】と呼ばれている牡丹は、他の地区に目も向けず、この【九州】だけを狙い、暴れまわっている。
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