終 最期ノ死合い

-明転する舞台。

-沖田とジョーがいる。


ジョー「暗殺課。まさかそんな組織が実在したなんてな」

沖 田「面白い情報じゃろ。信じるかどうかは自由じゃが」

ジョー「あんたからの情報を疑う訳ないよ。ここ最近の奇妙な殺しにも説明をつけら

   れるしな」

沖 田「売りつけといてなんじゃが、この情報を扱うのは危険じゃぞ。いくらお主で

   ほどの情報屋でもな」

ジョー「命を狙われるかもしれないって?そんなの、この世界に生きてりゃ当然でし

   ょう」

沖 田「それもそうじゃな。では、後を頼むぞ」

ジョー「任せてくれ。…それじゃあ」

沖 田「達者でな」


-その場を離れる舞台からハケるジョー。

-入れ替わりに糸泉がやって来る。


沖 田「遅かったの」

糸 泉「調べものがあってね。さっきの情報屋だよね。あの事話したの?」

沖 田「ああ。ちょっとした嫌がらせじゃ」

糸 泉「いい気味ね。でも、今回はえらい結果になったね。殺し屋だけじゃなく、護

   り屋の方もマズいかもね」

沖 田「若いもんはこれから大変じゃの。そういえば、登美子ちゃんはどうじゃっ

   た?」

糸 泉「あれっきり眠ったままさ。原因も分からないみたいでね。まさか妖刀の呪い

   のせいだなんて、真っ当な医者には話せないしね」

沖 田「そうか…。いつか目覚めて、普通の生活を手に入れてほしいのぅ」

糸 泉「そうだね。…ほんと、人殺しで生きる人間が、家族なんてつくるもんじゃな

   いね」

沖 田「そうじゃな。わしも大切な人の家族を、復讐鬼に変えてしまった」

糸 泉「…あんたのせいじゃないよ」

沖 田「何?」

糸 泉「調べものって言ったでしょ。あんたを騙してパパを殺させたのは、あたしの

   叔父さんだった」

沖 田「師匠の弟さんか?」

糸 泉「地位争いに負けた腹いせだってさ」

沖 田「私怨で家族を手に掛けたか。人の家族を悪く言いたくはないが、どんな場所世界

   にも面汚しはいるもんじゃな」

糸 泉「あんな奴もう家族じゃないよ。…でもやっぱり、パパを殺したあんたとは、

   はっきりケジメは付けたいんだよ」

沖 田「そうじゃろうな。ワシらも所詮は殺し屋じゃ。武器はあるのか?」

糸 泉「心配には及ばないよ」


-傀儡となった佐々斬り小次郎が現れる。


沖 田「佐々斬りとはの…」

糸 泉「あの子登美子ちゃんの治療費代わりさ。リーの方はもう壊れちまった

   しね」

沖 田「そうか。では、始めよう。そろそろワシも、退休みをとろうと思っと

   ったんじゃ。ここで、決着を付けさせてもらうぞ」

糸 泉「ああ。異議はないよ。これで最後だ」


-対峙する沖田と糸泉。

-しばしの緊張の後、両者が動いた。


沖と糸『はっ!!』


-武器を捨て、佐々斬りの攻撃を受け倒れる沖田。


沖 田「ぐはっ…」

糸 泉「なっ!そ、掃除郎。あんたわざと…」

沖 田「言った…じゃろう。そろそろ…休むと…」

糸 泉「ばか!だからってこんなやり方…」

沖 田「ふふ…わしは殺し屋じゃからな。泉…いや、きぬちゃん。お父さんを殺して

   しまって…すまなかったのう…」

糸 泉「そんなこと、今さら言われたって!」

沖 田「そうじゃな。…遅すぎたの。ワシは…謝ることすらも…してやれんかった。

   きぬちゃん…これでもう…復讐は終わりじゃ。お主がこの世界にいる理由は、

   もうない。どうか、糸泉としてでなく、きぬちゃんとして…これからを生きて

   くれ」

糸 泉「そ、そんなことあたしには…」

沖 田「できるとも。お主は、あの人の娘なんじゃからな。…はは。もし生まれ変わ

   ることができたら、今度は人殺しなどせぬ人生をおくって、ジジイになりたい

   のう。そんな…ただの…ジジイに…ワシは…」

糸 泉「掃除郎…」


-沖田掃除郎絶命。


糸 泉「…あ~あ、みんな死んじゃった。きっとみんな地獄に行ったんだろうね。残

   念だけど、あたしは当分行けそうにないよ。ジジイに約束させられちまったか

   らね。でも、そんな長くはないと思うからせいぜい、地獄の首吊り台の上で、

   歌いながら、笑っていればいいさ」


-暗転する舞台。

-闇の中からジョーの声がする。


ジョ声「どうだった?これが、殺し屋と護り屋たちの物語さ。この後はどうなったか

   って?残念だが、それはまた別の機会にさせてもらおう。ああ最後に宣伝をひ

   とついいいか?この中で、どうしても殺したい奴がいるっていう奴はいない

   か?もし、その気持ちを抑えきれなくなったら、是非彼らに声をかけてくれ。

   だが、気を付けろ。今の時代、殺し屋の陰には必ず護り屋がいる。金を払えば

   楽に人を殺せるなんてことはありえない。だから、仕事を依頼するときはこ

   れだけは肝に据えておきな。やったら必ず、やり返されるんだ」


 終

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