十一 三ノ死合い

-明転する舞台。

-鈴木が本田に追い詰められている。


本 田「おいおい、鈴木さん。もういい加減、諦めたらどうだ?」

鈴 木「頼む!助けてくれ」

本 田「往生際が悪いな」

鈴 木「ば、倍だ!田中の倍の額を出す」

本 田「悪いがこっちは利益よりも信用が第一なんでな。ぱぱっと死んでくれ」

富 岡「待てー!」


-富岡が駆け付け、本田を止める。


本 田「てめぇ!富岡!」

富 岡「鈴木さん逃げろ!」


-その隙に逃げる舞台からハケる鈴木。

-富岡を振り払う本田。


本 田「くそ。泉の奴。足止めはどうしたんだよ」

富 岡「そう上手くはいかせねえよ」

本 田「へっ。何偉そうに言ってんだ。首の皮一枚繋がっただけのくせしてよ。もういいぜ。あいつの始末は泉に任すさ。もう

富 岡「決着付けるか?」

本 田「ああ。もう言いつけなんぞ関係ねえ。ここでお前を殺す」

富 岡「俺に勝てるとでも思ってるのか?」

本 田「当然だろ」


-持っている酒瓶から酒を一気に煽る本田。


本 田「お前も知ってるだろ?俺の体質を。酔えば酔うほど、俺の身体からは感覚や

   制限が薄れる。痛みも限界も無くなるのさ」

富 岡「どっちも身体には大切な器官だ。そんなふざけた飲み方してる奴に俺が劣る

   かよ」

本 田「健康志向の筋肉バカが失礼な事言ってんじゃねえ。俺はいい酒飲みだ」

富 岡「知るか!」


-マッスル富岡対アルコール本田の一騎打ちが始まる。

-酒を飲みながら戦う本田は富岡の攻撃をものともせず、次第に富岡が追い込まれていく。


本 田「どうした?お前の自慢の筋肉も大したことないな。さっきから何にも感じな

   いぞ」

富 岡「へっ。それはどうかな?」

本 田「何?…ぐっ!」


-急に痛みに悶え始める本田。


本 田「これは、どういうことだ?痛みが…酔いが消えていく」

富 岡「やっぱりお前はいい酒飲みなんかじゃねえ。自分が飲んでるものが何なのか

   も分かってないんだからな」

本 田「何?まさかてめえ。俺の酒に何か…」

富 岡「お前の言う通り俺は健康志向でな。アルコールの分解を助ける薬を入れとい

   てやったぜ」

本 田「何だと。てめえ、卑怯な真似しやがって」

富 岡「卑怯?言っただろ。俺はアスリートじゃねぇ。殺し屋なんだよ。負けると分

   かってる試合に挑んだりはしねぇ、確実に勝つための準備をしただけさ」

本 田「く、くそ~~~!」

富 岡「終わりだ」


-苦しむ本田にトドメをさす富岡。アルコール本田絶命。

-少しして鈴木が戻ってくる。


鈴 木「終わったんですか?」

富 岡「ああ鈴木さん。もう大丈夫だよ」

鈴 木「護り屋は?これで全員片付いたんですか?」

富 岡「いや、今最後の一人と掃除郎さんが戦ってるよ。加勢に戻りたいけど、どこ

   をどうやって来たかなぁ」

鈴 木「どう来たのか覚えてないんですか?」

富 岡「恥ずかしながら、タチで」

鈴 木「まぁ、あの伝説とも呼ばれた方なら、そこまで心配することないんじゃない

   ですか?それに富岡さん。全身傷だらけじゃないですか」

富 岡「こんなのいつもの事ですよ」

鈴 木「ちょっと、見せてください。応急処置ぐらいはできますから」


-富岡を壁の方に誘導する鈴木。


富 岡「ありがとう。なんか悪いね」

鈴 木「…人がいいですね」

富 岡「え?」


-壁から刀が突き出て、富岡を貫く。


富 岡「グハッ!!!な、なに…」


-刀が引き抜かれ崩れ落ちる。マッスル富丘絶命。


鈴 木「…死亡確認」


-二人の死を確かめその場を離れる舞台からハケる鈴木。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る