二 護り屋の百貨店

-場面は変わり、ケンビデパート。こちらも店仕舞いの時間。

-蛍の光が流れる中、糸泉・ザン・本田が出てくる。


本 田「泉。リーさん。お疲れ様」

ザ ン「お疲れ様です」

糸 泉「ええ」

本 田「いやぁ、今日もうちの酒は絶好調でしたよ」

ザ ン「私の漢方もよく売れました。よいことです」

本 田「泉は?」

糸 泉「うちはいつも好調よ。当然でしょ。でも、本田も最近は調子いいじゃない

   の。そので」

本 田「おいおい。は関係ねえだろ。むしろ、こんなの俺がいるからこそ、

   客は酒が飲みたくなるのさ」

ザ ン「確かに、接客中にあれだけ酒を呷っていれば、釣られるお客さんもいらっ

   しゃるでしょうね」

糸 泉「赤字出すんじゃないわよ」

本 田「心配すんなよ。本物の酒好きは飲み方を間違えたりしねぇって」

ザ ン「…しかし、こうも好調だといささか拍子抜けですね」

本 田「どういう事だい?リーさん」

ザ ン「おやおや。堅気ボケしたんですか?本田さん」

糸 泉「無理もないんじゃない。最近はの仕事はさっぱりだし」

本 田「横谷横丁のことですか。別に忘れてはいませんよ。でも、依頼がなけりゃ、

   俺たちは動けないでしょう」

ザ ン「おや。しっかりと言いつけは守ってるのですね。てっきりまた私闘喧嘩に出向く

   ものだと思ってましたが」

糸 泉「あの筋肉バカとのは、もういいのかい?」

本 田「そんな訳ないだろ、泉。あの野郎とはいつか絶対ケリをつけてやる」

ザ ン「しかし、向こうはもはや消滅寸前です。が出向くような仕事が、

   果たして舞い込むことか…」

糸 泉「細々とぐらいなら、潔く消えてほしいものね」

ザ ン「おや泉さん。意外ですね。あそこを一番潰したいと考えていたのは、あなた

   だと思いましたが?」

糸 泉「…何のことかしらね。さぁ、そろそろ上がりましょう」

本 田「そうだな」

糸 泉「おや?」

本 田「どうしました?」

ザ ン「閉店したはずですが、お客が来たようです」


-三人の元に、スーツ姿の男田中が慌てて入って来る。


田 中「はぁはぁはぁ…」

本 田「おいおい。駆け込みにも程があるだろ。しかし、リーさんは相変わらずすご

   いな」

ザ ン「伊達に、と呼ばれていません。さぁ、呼吸を整えてくださ

   い。何が御入り用なのですか?」

本 田「仕事終わりに見えるし。あ!今晩の晩酌用の酒か?ならいいのがあるぜ」

田 中「た、助けてくれ」

本 田「は?」

田 中「助けてくれ!狙われてるんだ!」


-三人に立て続けに詰め寄る田中。


糸 泉「それなら、デパートでなく警察に駆け込んでくれるかい」

田 中「ダメだ!警察じゃ話にならない。殺し屋に狙われてるんだ。しかも、あの有

  名な殺し屋横丁に!奴らから助かるにはもうここに頼るしかないんだ。このケン  

  ビデパート。いや!護り屋デパートに!頼む!金ならある!どうか私を…」

ザ ン「失礼」


-田中を気絶させるザン。


ザ ン「落ち着いてから、話を聞きましょう」

糸 泉「そうね。でも、こんなタイミングってあるのね」

本 田「丁度良かったじゃねえか。正直な話、腕が鈍りそうで心配だったんだ」

ザ ン「大口の依頼そうですしね。期待できそうです」

本 田「それじゃ、ようこそ」

護り屋『護り屋デパートへ』


-暗転する舞台。

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