一 殺し屋の商店街
-場面は変わり、横谷横丁。店仕舞いの時間。
-沖田・佐々斬り・登美子・富岡が出てくる。
富 岡「お疲れ様でした」
登美子「お疲れ様です」
佐々斬「とは言っても、今日もさっぱりだったけどね」
沖 田「お前さんとこもか。うちも最後に客が来たのはいつだったかのう」
富 岡「うちも似たようなもんですよ。それもこれもあのデパートのせいですよ」
-遠くを見上げる富岡。
佐々斬「ええ。さすがに腹立たしく思いますね」
沖 田「そうじゃそうじゃあのケツ毛デパートめ!」
登美子「お、おじいちゃん!ケンビデパートですよ」
沖 田「おや。そうじゃったか」
富 岡「頼むよ沖田さん。まだボケるのは早いでしょう」
佐々斬「徘徊なんかして、迷子にならないでくださいよ」
沖 田「ふん。こちとら、生まれた時から道に迷っておったわい」
富 岡「しかし、本当に腹が立ちますよ。あのケンビデパート。こっちの邪魔だけな
らともかく…」
登美子「こっち?」
沖 田「富岡!」
富 岡「あ!すいません。何でもないよ。登美子ちゃん」
佐々斬「そ、そうだぞ」
登美子「はぁ…。あ、そういえば聞きましたか?栄子さんが引退を考えてるって」
富 岡「え!?毒殺しの姉さんが?」
登美子「はい!?」
富 岡「富岡!!!」
-持ってた箒で富岡どつく沖田。
登美子「あの。何です毒って?」
沖 田「すまんの登美子ちゃん。あれじゃ、あの。薬屋やっとるから、そういう笑え
んあだ名を付けられることもあるんじゃ。本人には言わないでやってくれ」
佐々斬「そうなんだ登美子」
登美子「わ、分かりました」
沖 田「しかし、あの栄子ちゃんが引退とはなぁ」
佐々斬「そういえば、今日もお店は閉まってましたね」
登美子「故郷に帰るかもとも言ってました。残念です。いい人なのに…」
佐々斬「そうだな、登美子。私も今度話してみるよ」
登美子「うん。…あの。もう暗くなるんで、片づけに入りませんか?」
佐々斬「ああ。そうだな」
沖 田「忌々しいデパートを睨んでても何もならんしな」
富 岡「…ちょっと待って」
-登美子に近づく富岡。
登美子「な、何ですか?」
富 岡「登美子ちゃん。ちょっと顔色が悪いよ。疲れてるんじゃない?」
佐々斬「そうなのか、登美子?」
登美子「いえ、そんなことは…」
富 岡「隠さなくていいよ。これでも健康については勉強してるんだから」
佐々斬「登美子。今日は早めに休みなさい」
沖 田「そうじゃな。若いからといって無理はするもんじゃない」
登美子「分かりました」
-
佐々斬「ありがとうな富岡くん。父親の私が気づくべきなのに」
富 岡「いえ…」
沖 田「しかし富岡。相変わらず登美子ちゃんの前で迂闊過ぎじゃぞ」
富 岡「すいません。皆さんといるとつい。でも、佐々木さん。登美子ちゃん、本当
に何も知らないんですか?」
佐々斬「ああ。あの子は何も知らない」
沖 田「しかし、大丈夫かのう登美子ちゃん。昔から頑張り屋さんだし、無理をして
るのかもしれんのう」
富 岡「店の手伝いしてくれてますが、学校とかも忙しいんじゃ?」
沖 田「確かに帰りが遅かったり、何をしてたか分からない日も増えてきたが、あの
子ももう年頃だし、下手に詮索はできなくてな」
富 岡「まぁ、難しい時期ですよね」
沖 田「あっという間に大きくなってしまったのう。さすがに、隠し通すのも無理が
出てきたと思うぞ」
佐々斬「やはりそうでしょうか…」
沖 田「栄子ちゃんと一緒で、お前さんも引退を考えたらどうじゃ?」
富 岡「そうですね。寂しくなるけど、登美子ちゃんのこともあるし。それに、栄子
さんとはイイ感じなんでしょ?登美子ちゃんも慕ってるし」
沖 田「おお、再婚という道もあるのぅ」
佐々斬「ちょっと、やめてくださいよ」
-そこに
鈴 木「あのぅ、すいません」
富 岡「ああ、いらっしゃいませ。お客さん運がいい。まだ営業中ですよ。いい身体
しますねぇお客さん。この大胸筋も立派だ」
-鈴木にはたかれる富岡。
鈴 木「胸です。それと、欲しいのはスポーツ用品ではありませんよ。マッスル富岡
さん」
殺し屋『…』
-裏の名が出され、雰囲気が変わる三人。
沖 田「皮肉なこともあるもんじゃのう。引退の話で盛り上がったところにこれと
は…」
佐々斬「いいじゃないですか。仕事あっての我々です」
富 岡「運がいいですね、お客さん。そちらも絶賛営業中ですよ。ようこそ」
殺し屋『殺し屋横丁へ』
-暗転する舞台。
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