0 一流の情報屋

【開演】

-暗転する舞台。スポットライトが付き、そこにジョーが立っている。


ジョー 「やぁ。初めましてのお客ばかりのようだな。一応聞くが、俺の情報

    を聞きに来たんだろ?料金チケット代はちゃんと払ってあるよな?基本

    は前払いだ。…よし。では聞かせよう。安心しなって。俺は一流の情報屋。

    ガセなんかは聞かせやしない。聞きたいのは、のことだよな。

    俺みたいな稼業も含めた、裏社会での最強の職人。今風に言えば、最強ジョ

    ブ。それが、"殺し屋"だ。中でもこの国には、伝説となった殺し屋集団がい

    る。それが横谷横丁。別名"殺し屋横丁"の面々だ。彼らの歴史は、全大陸争

    乱終結直後の時代まで遡る。当時の敗戦国指定されたこの国には、焼け焦げ

    た瓦礫と無法の混乱しか残っていなかった。遅々として進まない復興政府の

    法整備に代わって、力による平穏を実現させたのが、裏の世界の創設者。通

    称"親方"たちだった。彼らは復興政府の目をかいくぐるため、表の顔として

    商店を営むようになった。それが、殺し屋横丁の原型だった。なぜ、商店に

    したかと言われれば、親方たちの最初のシノギが闇市だったことに起因して 

    るのかもな。信じられないかもしれないが、最盛期はその名の通り、商店街

    の店主全員が凄腕の殺し屋だったのさ。やがてその名は、裏社会の生ける伝

    説に。表社会では都市伝説として語り継がれた。しかし、どんな世界にも斜

    陽の時は訪れるものさ。時代と法律が進むにつれて、必要悪という概念は薄

    れていった。需要が減れば、供給も減るのは表裏問わず世界の常識だ。しか

    も、追い打ちをかけるかのように天敵と呼べるような奴まで現れた。そう、

    待たせたな。ここで"護り屋"の登場さ。そして、その護り屋を抱えるのが大

    手百貨店ケンビデパート。通称"護り屋デパート"さ。正直な話、この護り屋

    という仕事がどのように生まれたのかは俺をもってしても分からない。ただ

    はっきりしているのは、その出自は裏社会ではないということだ。全うであ

    るはずの表の大企業が、勢力拡大のために裏の力を使い始めたらしい。裏の

    ために表の顔を使っていた殺し屋たちとはまさに真逆のルーツだな。対局

    は、圧倒的に殺し屋が劣勢だった。それは、裏だけじゃなく、表の仕事でも

    そうだった。新進のデパートに客を取られ、老舗の商店街に閑古鳥が鳴くな

    んてのはよく聞く話だろ?殺し屋横丁も商店街である以上、その流れに逆ら

    うことはできなかった。シャッターが目立ち始め、往年の殺し屋たちが次々

    と引退していった。完全な日没は目前に迫っていた。これから話すのは、そ

    んな時に起きた最後の閃光ともいうべき代物かもしれないな。…気が変わっ

    たって奴はいないか?では、聞かせるぜ」


-暗転する舞台。

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