第7話 - さらなる仲間を求めて -
「うわー、なんか全然面白くない人生だったんねー。それにしても歳が同じだったなんで驚きだー。そういう仕組みなんかな?」
勝負の後、夕方、食事も済ませ、しばし2羽で語らう。ツバサはこれまでの経緯や自分の人生を話した。大変だったね、など濁さずにはっきり面白くないと言い切るあたりは、レイらしい。どうやら我々は同級生で、同じ日に死んでしまったようだ。
「レイちゃんは、その、どうして死んじゃったの……?」
やはり気になって聞いてしまう。
「ん、あたしー? えっとね……スマホしてたら、車に引かれて死んだー」
とてもバツが悪そうだったがテヘっとした感じでカミングアウトされた。
「そ、それは……」
反応に困る。
「一応ねー、横断歩道だったし、一時停止してなかった車が突っ込んできたんだけど、まあ歩きスマホも大概だしなー」
「それにあたし……」
レイの話はこうだった。人生でもうあまりやりたいことは残っていなかった。常に遊びが好きで、友達も多く、おしゃれにカラオケにゲームにダンスにスポーツと、とにかくいろいろなことをやった。
ただ、どれもすぐ上手になるものの、どれもじきに程よい達成感で飽きてしまう。ずっと続けたいと思えるものが無かった。
――私と正反対だ、そういう悩みもあるんだ。
ハクセキレイになって、死んだショックよりも、これからの人間とは全く異なった環境での楽しみの気持ちのほうが上回ってしまった。この1年も、今までできなかった遊びを散々やったり試したり、いろいろ行った。未知の世界観が何よりも楽しかったと言う。
「でもこれからはツバサっちが楽しみを提供してくれるから大丈夫ー」
「レ、レイちゃんも、ちゃんと鳥魂集めるの協力してね……」
!!
不意に2羽同時に同じ方向に視線をやる。接近してくる飛翔体があった。それには見覚えがった。レイも同様だ。
「あれは……」
「ハト君だねー」
やがて目の前までハトはやってくる。木の枝の隣に着地した。
「お2人とも! よかった。無事に合流できたんですね」
「やーやーパシリ君、元気してたかーい?」
「ぱ、パシリではありません! ハイトです!」
「バイト?」
「ハイトです!」
「ハイト君ていうんだ」
「そかー、相変わらず平和そうな顔してるねー」
「してません! どんな顔ですか!」
「それでこんな時間にそんな血相変えて、またお姉さんたちを襲いにきたのかなー?」
「しません! 疲れてるんです! レイさんと話すともっと疲れるんです!」
▼
「はぁ、また天使様より、伝言を預かってきたんです」
息をおちつかせると本題を切り出す。
「やっぱバイトだったんかー」
「ハイトです!」
――はは、ちょっとレイちゃんのこの感性がうらやましい。
「おほん、ここからまた100キロくらい北に、同じく鳥魂をもった個体がいるとのことです。僕は今回は会いに行く予定がないので、探してみてください」
「さらに北か、この時期でもまだ夜は冷えそうだね」
3つ目の鳥魂の持ち主の情報を貰い、気がまた引き締まった。しかし今回はその種類も不明だと言う。実際に自分達の目で見て、確かめるしかなさそうだ。
「よーし行ってみよー、あ、でももう今日はもう寝ようー」
「そうだね。今日はしっかり休んで、明日から移動してみようよ」
「ぼくも今日はこの辺りで休ませてもらいます」
「やっぱり襲う気じゃん」
「違います!」
しばらく談笑し、じきに眠りについた。
▼
-朝-
「ではぼくは次の所へ向かいます。」
ハトのハイトは本日も忙しいらしくすぐに出立しようとする。
「ねーねー、あの天使ちゃんてどこにいるのー?」
それはツバサも疑問に思っていたことだ。最初の1回以来、会ったことが無い。
「ぼくもよく知らないんです。用があるときに急に目の前に現れる、というか、勝手に空間が転移して、そこに天使様が居るので……」
しかしとにかくたくさんの魂を管理しており、普段からとても忙しそうだと言う。話し方はゆるーい感じであるが。
「7個集めたら、どうやって報告すればいいの?」
「それは大丈夫です。集まった場所にじきに天使様から現われてくれますし、僕も逐一情報を聞いて、遣わされます」
「それでは! 2人もお気をつけて!」
ハイトは今度こそ飛び立って行った。本人も忙しそうだ。
北へ向けてレイと出立する。道中楽しみながら行こうと、いろいろなところへ寄り、道草をしながら移動した。
「ん? あれは……」
見ると木に巣箱が設置されていた。巣箱なので、人間が人工的に設置したものだ。野鳥の会などが行っていることもある。
「中に雛とかいるのかなー? 覗いてみよう」
「や、やめなよ! ツガイが居たら怒っちゃうよ」
しかし好奇心盛況なレイは巣箱の穴の中を覗きに行ってしまう。
「ぎゃ!」
「?」
フラフラとレイが戻って来る。
「雛たくさんいた。一斉に口を開けてきてつつかれたー」
「ど、どんまい」
大抵の雛達は物音がすると親が餌を運んできたと思って、全力で口を開けてくる。もうその動作しかできないくらい、同じことをしてくる。まれに好奇心からか不明だが、まったく関係ない種類の鳥が、異種の雛に餌を渡すことも見られる。
「コラー! あんた達ー!」
「ひぃ!」
親鳥が戻って来る。巣箱に手を出したことで、やっぱり怒っている。サイズは少しこちらのほうが大きい位なのに、ものともせず追い払いに来る。やはり巣営中は気が立っているようだ。
「あの特徴的な黒ネクタイは! シジュウカラだ」
「このイタズラセキレイめ! どっか行け!」
「うへへーー」
レイが追い払われる。巣箱で巣営をする代表格のシジュウカラ。しかし狙って巣箱を設置しても、なんと穴のサイズを1ミリでも間違えると、入ってくれないこともあるようだ。
久々に一人じゃない1日、レイのキャラクターもあり久々に充実(?)した日となった。
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