第2話 転生したら魔法使いになっていた
目を開けると、気持ちのいい青空が広がっていた。
そして、穏やかな波の音。
(ここはどこだろう)
少しクラクラする頭を押さえながら、あたしはぼんやりとした記憶を辿ろうとした。
が、違和感がする。
「ん? あれ?」
自分の着ている服が、なんか変だ。
「こんなに短くて、ふわふわな……!?」
肩と胸元が剥き出しのドレスに、柔らかな青地のマントを羽織っている。皮のグローブに皮のブーツ。
ドラクエか何かゲームの魔法使いみたいな格好だ。
見渡すと、そこはどうやら人気のない島みたいな場所だ。
「なんでこんなところにこんな格好で……」
そういえば生まれ変わる前、神様が言ってた。
『今度の世界でのお主の役割は宮廷魔術師。魔法が使えるぞ? どうじゃどうじゃ』
ウリウリ、と言った感じで言われたのだ。
「魔法? 本当かよ……」
半信半疑ながら、ファイヤーとか呟いてみる。
すると、指先にポワッと火の玉が燃え上がった。
「え、まじで!?」
咲坂結衣。派遣OL。金なし職なし彼氏なし。
なんか、久しぶりに、ワクワクした気持ちが湧き上がってまいりました……!
*
毎日毎日朝から晩まで働いて、満員電車に揺られて。
そんな忙しい日々をずっと送ってきたけれど。
今、時間はたっぷりとある。
そして魔法も使える。
なんか、身体も若くなっているような気がする。
「ちょっと、色々試してみよっかな?」
見上げたら、気持ちの良い空。
「……。飛べ!」
半信半疑で言ってみたが、ふわっと身体が持ち上がった。
「え? 本当に? ちょっと待って」
あわあわと声を上げたが、身体は風船のように、ふわふわゆっくりと浮かんでいく。
「わ、怖い! ちょっと、たんま!」
とか言ってるうちに、眼下に広々とした森が広がっていく。
青い山脈、そして、煙をあげる山。(火山?)
ここはどうやら、とても大きな島のようだ。けど、小高い丘の上に、一軒ぽつんと家が立っているのが見えた。
(人がいる、のかな?)
どうやら無人島、というわけではないようだ。
「よし、ゆっくり降りて!」
呪文は、はっきり告げると効くらしい。身体は緩やかに下がり、無事しっかりと地面にの到着した。
「うん。なんか、お腹空いちゃった」
あたしはんーー、と考えた。
「ご飯を作ろう!」
*
カリッカリに焼きたての鮭。
ほかほかに炊き立てのご飯。
そして、油揚げと玉ねぎのお味噌汁。
材料を出して、道具を出して。
あたしはあえて時間をかけて料理をした。
だって時間はたくさんある。
やらなきゃいけないものはない。
「んーー、幸せだっ!」
魔法で出した椅子に座って、思いっきり大声を出した。
あたしの声はどこまでもどこまでもこだましていた。
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