転生したらそこは魔法生物と爽やかな生物学者の暮らす島だった。

ゆうき

第1話 咲坂結衣。32歳。派遣OL。

ふんふんふん。

なんだかとってもいい匂いがする。


あたしは目を閉じたまま、クンクンとはなを動かした。


ご飯を食べたのは、一体いつのことだったか。


昨晩は、遅くまで残業。

20時過ぎまでのデスクワーク。


自席で軽く、カロリーメイトなんかをつまんだのを覚えている。


(でもこれは、あったかい炊き立ての、白米だわ)


そんなものを前に食べたのはいつだろう。


先週の日曜日のお昼くらいか……。


(あー食べたい!)

口の中につばがいっぱい沸き立ってくる。


あたしは、ガバッと体を起こした。


「あれ? ここはどこだろう」



「どんな生活をしたいんだい?」


「好きな時間に寝て起きて、好きなものを食べられたら、それで結構幸せです!」


「わかった。そう願うなら、叶えてあげよう」

 神様はそう言ってた。


そうだ、あたしは死んだ。


残業終わって、ふらふらで駅のホームに立っていた。


お給料は上がらないし、正社員にはなれないし、もう30を過ぎたのに彼氏もいない。希望ってなんだっけ。

(このまま生きてても、仕方ないのかも)


そう思ったとき、ふらっと体から力が抜けた。その後のことは覚えてない。


気がついたら、あたしは神様の前で、そう願っていたんです。

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