第10話 イケメン三銃士
僕は、バトミントン部が練習をやっている体育館をドアの隙間から覗いてみた。
体育館では僕の予想通り、バトミントン部がネットを張って練習をしていた。
一人の部員がネットの向こう側に向かってシャトルを豪速球で打つと、その向こう側にいる部員は体を躍動させながら、余裕の表情で打ち返す。
部員が足を踏み込む度に、聞こえてくる体育館シューズのキュッキュッという音や、凄まじいスピードで飛んでいくシャトルに僕は迫力を感じた。
「へぇーバドミントンってこんな感じなんだぁ…」
いやいや、感心している場合ではない。
僕は美晴の好きな人の調査をするためにここに来たんだ。
一時、集中してよくバド部の練習を観察していると、不意に肩にトントンという感触を覚えた。
振り返ってみるとそこには柚菜がいた。
「何してるのぉ?」
柚菜は後ろに手を組んで僕に話しかけてきた。
「あぁ、柚菜…あ、そういえばあの弁当すごく美味しかったよ」
「ほんとぉ?うれしいっ」
柚菜はとても嬉しそうだ。
ほんとに美味しかったなぁ…柚奈の弁当。
柚奈が作った弁当の味を思い返しながら僕はまた、バトミントン部の方へと視線を移した。
「そんなに真剣に見て、どしたの?バトミントン部になんかあるの?」
「あぁ…うん。ちょっと訳があってね…バトミントン部のある人たちをさがしているんだ」
「ある人たち?」
柚菜は、眉をひそめて考え込む。
「うん…」
「だれのこと?」
「大希さんと恵叶と…後は…正真?って人達を探しているんだけど…」
「あーその人たち!」
柚菜はその人たちのことを知っているのか、大きなリアクションを示した。
「ん?知っているの?」
「うん。バトミントン部のイケメン三銃士で有名だから」
バトミントン部のイケメン三銃士?
なんだそれ…少なくとも僕はそんな単語を学校生活を送っている中で使ったこともないし、聞いた事もなかった。
多分、僕が陰キャだからそういう情報をあまり知らないのだろう。
「へぇーそんな呼ばれ方してるんだ」
僕はその三銃士を見つけるべく、目を凝らして僕のイケメンレーダーを起動させながら体育館を覗いた。
「教えてあげよっか?」
柚菜は唐突に僕に近づいてきた。
それはもう、僕の肩に柚菜の身体が当たるほどに。
「ち…近いな…」
本当に僕はこういうのに弱い。なぜなら、生まれてきてからずーーーーーーーーーっとこんなシチュエーションが起きたような試しがなかったから。
「いいじゃん」
微笑みながらそう言う柚菜の横顔を見てみると、うっかり僕は見惚れてしまっていた。
僕の心臓は不自然にざわめき出す。
横顔……可愛すぎ……
「何?そんな見てぇ」
僕はじっくり柚菜の顔を見すぎて、本人に気づかれてしまった。
「いや、なんでもない」
僕はぎこちなく目線を体育館に戻した。
「今、ウォーミングアップしてるあのひとが大希さん」
柚菜が指さすほうに目を向けてみると、誰が見ても認めるような確かなイケメンがいた。
「あれか…大希さんって」
想像以上にイケメンで驚いた。
顔の様子をラーメンで比喩するならば、絶対的に塩ラーメンである。
それくらいあっさりしていて、爽やかな顔の好青年だ。
これくらいのクオリティのビジュアルだったら、全然美晴が好きになってもおかしくない感じだな。
もしも、この大希さんが僕のライバルだとしたら、必然的に戦いは厳しくなるだろう。
あんなイケメンに果たして、僕が立ち向かって行けるのか?と問われると微妙な所だ。
「で、今試合中のあの人が、恵叶」
また、僕は柚奈の示すほうに目を向けた。
「あぁ…あれが恵叶……」
これまた、イケメンだ………
顔のジャンルをラーメンに比喩するならば、先程の大希さんとは相対して、少し濃い顔のしょうゆラーメンのよう顔だ。
濃い顔とは言っても優しさが外面に滲みており、性格が柔和だということをいかにも想起させる。
顔のバランスは最高で、例え、福笑いを目隠しなしでやっても真似出来ない程に整っている。
またまた、こいつがライバルになったら厳しくなりそうだ。
「最後は……監督椅子でサボっているあの子」
確かに、なんか偉そうに監督いすに座っているイケメンがいるな…
「あれが……正真?」
「うん」
正真はふてぶてしい態度でみんなが一生懸命練習をやっている所を傍観する。
「…」
何様だよ。あれ。
「あれでもね…正真、バトミントン全国ベスト8なの」
「はぁっ!?嘘だぁ!」
「ほんと」
何故だろう。
なんで神はこんなふざけでる奴ばっかりに才能を与えるんだ?
なんか……居子が嫌っている理由が分かった気がする。
まぁ、でも顔は申し分ない程にかっこいいけどね。
ラーメンで比喩するなら…
トマトラーメンかな。
なんというか…存在がオシャレって感じの顔をしている。
チャラい顔ではないけど、清純な顔でもない。
絶妙に均衡が取れているので、まぁ、かっこいい。
でも万が一、こいつがライバルだったとしたら、絶対に負けたくはない。
こんな奴に負けたら、悔しくて仕方がない。
僕は才能よりも努力を信じる派だ。
「この3人がイケメン三銃士だよっ」
「なるほど…ありがとう教えてくれて」
顔のクオリティで言えば、イケメン三銃士だけあってみんな高かった。
果たして、この中に美晴の好きな人はいるのだろうか。
少なくとも、正真ではあって欲しくない。
またまた、フラグを立ててしまった今日この頃の九牙であった。
第10話 ~fin〜
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