第9話 バトミントン部のイケメン
「バドミントン部のイケメン?」
居子はりんごジュースをストローですすった後に言う。
「まぁ…何人かはいますけど…」
幸江はおせちのように豪華な弁当を食べながら、おもむろに答えた。
「え?まって?幸江の弁当すごくね?」
まず、僕はそのことが気になって仕方がなかった。
もしかすると、幸江の家は金持ちだから家政婦を雇っているのかもしれない。
「そう?普通じゃないですか?」
「普通じゃねーよ!」
そう言って僕は自分の弁当に目線を移す。
まぁ、僕の弁当はもっと豪華だけどね。
美味しそうな黄色をしている卵焼きに
きゃわいいたこさんウィンナー。
そして、バランスよくブロッコリーが弁当を彩る。
正味、ブロッコリーはあまり好きではないが、この弁当の中に入っているブロッコリーだったらいくらでも食べられそうだ。
「あんたの弁当、母さんが作ってんの?」
「いや、今日は柚菜ちゃんが作ってきてくれたんだ」
居子はメイドイン柚菜の弁当に目を移す。
「まぁまぁね…」
「えっ!うそ!?すごいじゃんこの弁当」
「そう…」
居子はプイッとそっぽを向く。
あ、もしかして…
居子…嫉妬してる?
いや、絶対そうじゃん。前にも見たもんこんな態度。確か、居子がラブレターを破った時にもこんな感じだった気がする。
若干不穏な空気が流れたが、なんとか何事もないままに時が過ぎてその場をやり過ごすことができた。
間一髪セーフだ。
弁当の話が一区切りついてから、居子はまた、口を開き始めた。
「で?バドミントン部にイケメンがいるかどうかなんて聞いてどうするのよ」
「え…えーと。あれだよ、そういう調査レポートに書くんだ」
僕はいかにもなウソをついてしまった。もっと、頭が働いていればもう少しマシな嘘が出てきたのかもしれない。
「ふーん」
嘘をついてごめんなさい。
「イケメンですか……大希さんとか恵叶があげられるでしょうか」
幸江は首をかしげる。
「そうね…そこら辺かしら…」
「大希さんと恵叶?」
これまた、初耳の名前だ。
「この二人くらいかな?」
居子がそう言うと、横の幸江が急いで居子に耳打ちをした。
「いいの?正真もイケメンだけど…言わなくて」
居子は幸江に合わせて小声で言う。
「いや、いいよ言わなくて。私、あいつ嫌いだからイケメンって認めたくないんだよね」
「おい、聞こえてるぞ!」
僕は音漏れを報告した。
本当に丸聞こえだった。
いくら小声だからといっても、この距離では少し無理があるだろう。
「うそっ!?」
居子は驚く。
「マジ…正真って誰なん?」
「あいつはね、ただの不細工クズ野郎。つまり、需要がない」
おそらく飲み終わっているであろうりんごジュースのストローを居子はずるずると吸い続ける。
「いや、嘘でしょ?本当はかっこいいんでしょ?」
僕は軽く突っ込んだ。
「どうなんでしょうねー」
幸江はあやふやな返しをする。
「まぁ、顔がかっこよかったとしても性格はクズそのものだからね」
居子はそう罵る。
正真か…
バトミントン部にはイケメンが3人いることが分かった。この情報を参照にして次は現地調査を始めるとするか。
第9話 ~fin〜
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