第11話

 私は完全勝利の味に酔いしれながら、自室でコーヒーを口にしていた。しかし、事の行く末がどうにも気になる。私は遠目に会場の出口に目をやった。

 しばらくして、会場から出て行くユリの姿が見えた。自慢の太ももをがくがくと震わせながら、息も乱れ乱れになっている。顔も見た事ないほど紅潮している。時間的には、そろそろ効力が切れる頃だ。

 ユリは私を眼中に捉えたのか、一目散のこちらに歩み寄る。


「や、やってくれましたわね…お姉様…」


「あら、なんのことかしら」


「けっ」


 見るからに不機嫌そうな顔だ。けれど、これまでの私なら快く思わなかったその顔も、もじもじして紅潮しているところを見ると可愛く思える。リュウゲン様様だ。

 ユリは両手で股の部分を押さえながら、顔で私に威嚇をする。正直全く威嚇にはなっていないけれど。


「お、覚えておきなさい!!この仕返しは必ずひゃうんっっ//////」


 悪戯心に、軽くおへそのあたりを突いてやった。ユリはこれまた聞いた事のない甘い声をあげ、こちらを涙目で睨みながら、逃げるようにその場を去っていった。彼女には死にそうな思いをさせられたけど、正直もうどうでも良くなってしまっていた。それくらいに彼女の反応は楽しかった。

 場所は変わり、休憩室でメリアと向き合っている。


「ミラ様、どうやらあれから会場は大変だったみたいですよ?私もびっくりしたんですが」


「ああ、もういいわメリア。だいたい想像はつくしね」


 発情しているようにしか見えないスタイル抜群の若い女を前に、貴族の男たちは黙って見てなどいられなかっただろう。あんなことやこんなことが代わる代わる行われたに違いない。私が会場から出る時も、嬌声っぽい声が聞こえたし。


「私も遠くから見ておりましたが…あの気高いユリ様のあのようなお姿…大変に美しかったですわ…」


 両手を頬にあて、顔を赤らめ、目にハートが浮かんでいる。やはりメリアもなかなかだ…


「まあこれで、しばらくは大人しくなるでしょう、ユリも」


「ええ。だといいのですが」


 メリアは未だどこか、不安そうだ。確かにユリはあの性格だ。このまま黙ってやられっぱなしとは考えにくいけど…


「ともかく、ミラ様には素晴らしいものを見せて頂きました。だからこそ、これからの事にも何卒お気をつけを」


「ええ、気は抜かないようにするわ」


 会話を終え、私は自室に戻る。またリュウゲンの所に行って、念のために次の宝札をもらっておいた方が良いのかなぁ。次もやるなら、一体何をお見舞いしてあげようかしら。

 …多分今の私の表情は、気持ち悪いくらいニマニマしているだろう。しかしそんな時、不意に扉がノックされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る