第8話
「…ミラ様?」
ついぼーっとしてしまっていたのか、メリアの声で我に帰る。今はとにかく、これからのことを考えないと。
「それでミラ様、どのような宝札をお受け取りに?」
私はメリアに、リュウゲンから受け取った花摘みの宝札を提示する。宝札に書かれている文字は私には読めなかったけれど、メリアには読めるらしい。
「それは、花摘みの宝札ですね。良いと思います」
「良、良いんだ?…よく分かんないけど」
メリアもまた、宝札に詳しいんだろうか?
「問題は、いつ使うかでございますね」
「ええ」
やはりそれが問題だ。この前みたいに3人での食事中に使ったって、たいして面白い光景は見られなさそうだし…
だとしたら花摘みの宝札が真価を発揮するのは、人数が多く、なかなかトイレに行けない状況…近々そんなことあったっけ…?
その事をメリアに相談すると、彼女はすこし考えて、ひとつのイベントの事を口にした。
「そういえば、近く貴族家で社交パーティーが開かれる予定です。かなりの人数が集まるようで、当然ユリ様もご参加されるかと」
「貴族パーティーね…」
それは使えそうだ。ユリは貴族間でもかなりの人気の女性で、毎回皆の前で長々と挨拶までやっている。貴族も貴族で、そんなユリに皆メロメロだ。…そんな視線が集まる中この花摘みの宝札を発動すれば…面白いことになるかも…
自分でもわかるくらい、顔にゲスな笑みが浮かんでいる。そんな私の表情を見て、メリアもどこか楽しそうだ。
「シンプルだけれど、作戦は決まったわね」
「はい、私も良いと思います」
本人がどう思ってるかは知らないけれど、はっきり言ってメリアもなかなかのサディストだ。まさに天使の顔と悪魔の顔を併せ持つ女、という表現がふさわしい。
「私は病欠ってことにして、パーティーは適当に変装でもして遠くから見させてもらうわ」
リーゼやユージといっしょにいては、妙な疑いなどをかけられても困る。まあその疑いは正解ではあるわけだけれど。
「では私は、準備に向かいますわ」
メリアは一礼し、部屋を後にした。パーティーは数日後だ。私の心は正直、これまでにないくらい浮かれている。ドMな女をいじめても何も楽しくないけれど、ドSな女をいじめるのはこの上ない興奮を覚える。…私も大概だな…
しかし、この戦いは向こうが勝手に始めたものだ。そちらがその気なら、覚悟を決めてもらおうじゃないか。相手を攻撃するということは、自分も攻撃される事を覚悟する事だ。あの高飛車な女が苦痛に悶える表情がもう少しで見られると思うと、今にも絶頂してしまいそうだ。
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