第6話

 机の上に宝札が並べられ、それぞれの効力の説明を聞いた。この中から、一枚選んで貰えるというのだけれど。


「じゃあ、どれ持っていく?」


「うーん…」


 どれも地味な効果だけれど、側から見て楽しめそうなのは花摘みの宝札かなぁ…生理の宝札も捨てがたいけれど、効力が未知数すぎるし…


「…じゃあ、花摘みを貰おうかな」


 私がこれを選択するのが分かっていたのか、リュウゲンはテンションを上げていっているように思える。


「おっけー!花摘みの宝札お買い上げ~!」


 そういえば聞いていなかってけれど、一枚いくらなんだろうか?これは私の勝手なイメージだけれど、こういうオカルト的なアイテムって高額な気が…

 私は恐る恐る、その疑問をリュウゲンに投げる。


「それで、い、一枚いくらなの?」


 しかしその答えは、私の想像していたものではなかった。


「あーいやいや、お金は別にいらないよ!」


 それはそれで、申し訳ないような、どこか不気味なような…と考えていたら、リュウゲンがそのまま続ける。


「それをあげる代わりに、その、お願いが…」


 お金でなく、条件付きの商品らしい。浄霊師が提示してくる条件とは、一体なんだろう…


「と、とりあえず、あっち向いてみて!」


「?、ええ、」


 言われるがまま、私は反対側を向く。こちらにも妙な人形や掛け軸が飾られていて、なかなか気持ち悪い。もう早くかえりた……ん!?!?


「おー思ったより大きくて柔らギュッハッ」


 この男いきなり後ろから私の胸を触り出し、求めてもない評価を口にし始めた。私は腕がまだあまり動かないため、右足でリュウゲンの横腹にローキックを入れ蹴飛ばした。彼は畳を削りながら部屋の壁まで吹っ飛び、ピクピクしている。私は反射的に思った事をそのまま口にした。


「は?は?なんでいきなり?なんで触った?こわいこわいこわい」


 やや感覚が戻ってきた腕で胸元を覆い、自分でも信じられないほどの軽蔑の目でリュウゲンを見る。彼はまるで渋いコーヒーを一服した後のような声で、低く呟いた。


「…この蹴り、素晴らしい…快感…」


 顔を見ると、どうやら興奮しているらしい。…メリアが言っていた覚悟が必要とは、この男が厳しいからではなく、ど変態だからという意味だったのか…


「ご、合格!持ってけ持ってけ!」


「はぁ…」


 …まぁこれくらいでこの宝札が手に入ったんだったら、安いものか。そう自分に言い聞かせ、机の上から花摘みの宝札手に取る。…この男嘘は言っていないと思うから、効力は十分なはず。あとは、これをいつ使うかだけれど…

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