第5話

「あの…これは?」


 自分でも分かるくらいに、呆れた声が出てしまう。どこからどう見ても、怪しい宗教アイテムにしか見えないんだもの…

 そんな私とは対照的に、リュウゲンは目をキラキラと輝かせながら説明を始めた。


「これは宝札と言います。要はお札ですね」


 そんな事は見ればわかる。私が知りたいのは…


「これの効力が、聞きたいって顔だね」


 おっとそこまで顔に出てしまっていたか。あっさり看破される。


「そうだねぇ。物は試しだ。とりあえず使って見せてあげよう」


 そう言うとリュウゲンは一枚の宝札を手に取り、突然私に投げつけた。私は突然の事にびっくりして全く動けず、お腹のあたりに宝札が命中した。途端、宝札が光を放ち始め、そのまま消えてしまった。


「よし」


「…?」


 …私は手品でも見せられているんだろうか?目の前で起きた出来事に全くついていけない。


「あ、あの…今のは?」


 リュウゲンは答えず、成り行きを見守っている様子だ。別に私の体にはなんの変化も…と思ったその時だった。


「!?」


「お、きたねきたね!」


 腕に力が…入らない。感覚はあるんだけど、力が入らず全く動かせない。両腕とも、宙ぶらりんな状態になっている。


「今使ったのは、腕遊の宝札!使われた側はしばらく腕の自由が無くなる!すごいでしょ!?」


「うわぁ…」


 地味だなぁ。確かに私はユリを殺してやりたいわけじゃなく、苦しめてやりたいわけだから、この宝札が役に立つ…のかもしれないけれど、それにしたって地味すぎる。っていうかこれユリに効果あるのかなぁ。


「…ちなみに、他の2枚にはどんな効力があるの?」


「だよね!気になるよね!」


 リュウゲンはすっごく嬉しそうに笑っている。気になるわけではないのだけれど、気にならないと言えば嘘になると言うか…


「まずこっち!これは花摘みの宝札だ!」


 嫌な予感がする。ま、まさかね…


「これを使われた人間はしばらくの間、凄まじい尿意に襲われるんだ!!」


「はあぁぁぁ…」


 あからさまに、大げさにため息をついた。当たってしまった…いつ使うのよそれ…


「しかもこの宝札、トイレに行っても解消しないすごい効力付きだ!」


「…」


 確かに使われた方は地獄を見るかもしれないけれど、地味すぎるなぁ。まぁでも最初はこういうのでもアリなのかなぁ。


「…それで、もう一つは?」


「ふっふっふ。こっちはもっとすごいぜ」


 さらに得意気に、リュウゲンが胸に手を叩く。


「こいつは生理の宝札と言って」


「うわあぁぁ…」


 これも聞かなくてもわかる。私は軽くドン引きしている。一体どういう精神状態だったらこんなもの思いつくんだ…私は頭を伏せ、どうしたものかと考えを巡らせる。そんな私を見て、目を輝かせながらリュウゲンが口を開いた。


「それで!?どれ使う!?使うんでしょ!?」


「う、うーん…」


 いやいっそのこと、試射がてら使ってみるのもありか…ユリに一体どこまで効くのか、見てみたい気持ちは正直ある。私は彼の方に向き直り、話を続ける事にした。

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