第3話

「まあまあ。ユリ様ったら」


 戻ってきたメリアにユリとのやりとりを告げると、やれやれといった表情でそう言った。メリアにも、思うところがあるんだろうか?


「ユリだけじゃなくて、ユージもユージよ全く…」


 あんまりメリアに愚痴は言いたくないんだけれど、口を開けば止まらない。メリアは優しい表情で、私の怒りを受け止めてくれる。そんな時、不意にメリアが私に問いかける。


「それでミラ様、何かこれからのアイディアはございますか?」


「うーん…」


 あの女に同じ思いをさせてやりたいとは言ったものの、正直何も作戦がない。私は毒薬を手に入れるルートなんて持ち合わせてないし…

 そんな私を見かねてか、メリアがひとつ作戦を提案してくれた。


「ミラ様が本気なら、紹介したい人物がいるのですが」


「人物?私に?」


「はい。ミラ様が、本当に本気であるなら」


 そこまで念押しするという事は、相当厳しい人物なんだろうか?生半可な覚悟じゃ、相手にされないって事なんだろうか?

 けれどここまでされておいて、黙って引き下がるわけにはいかない。メリアが紹介してくるという事は、間違いなく優秀な人なんだろう。私の返事は決まっていた。


「お願い、紹介して」


「承知しました」


 メリアが予定を手配してくれ、数日後、その人物の元を私は1人で訪れた。

 …ここはその人の自宅だと思うんだけれど、正直外観から不気味すぎる。なんて書いてあるのかわからないお札が無数に貼ってあったり、人形の生首とか普通に吊ってあったり…

 扉の前にはよく分からない干物みたいな物が干されている。メリアったら本当にここの人で合ってるのかな…

 しかしここまできた以上、目的の人物に会ってみなければ。私は覚悟を決め、扉を叩いた。


「すみませーん」


 途端、屋内からガシャゴショーンと派手な音がした。走っているのか、かなり早い足音がこちらに向かっているのが分かる。…もう正直かなり心配だ。

 ついに扉が開かれ、その人物が姿を表した。簡素な着物に身を包み、首に大きな数珠のような物を下げている。年齢は私と同じくらいだろうか。細身でかなりスタイルの良い男の人だ。

 その人物は無表情で、私の姿を足元から髪の毛まで舐めるように見てくる。変な人に会っちゃったなぁ…


「あ、あの、、」


「?、ああ、ごめんごめん」


 私の声で我に帰ったのか、その人物が初めて口を開いた。どうしても、なんだかうさんくさい人だなぁ、と思ってしまう。本当にこの人で大丈夫なんだろうか…


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る