シャクヤク はにかみ

鈴ちゃんがこの家に来てからもう一ヶ月が過ぎてしまいました。最近は鈴ちゃんが話し相手にも買い物にも付き合ってくれるので毎日が楽しくて仕方のない所為で時が流れるのが早いです。ただ最近更に感謝する事が出来てしまっいました。

それは私が風邪の時に看病してくれたことです。いつもはお父さんが看病してくれるのですがお父さんの料理は何というか…個性的な味がするから病気の時に食べるにはちょっと重めになってしまって全然食べれないんです。他の人に作ってもらおうにも作ってくれる人がいなかったですし。ですが今回は鈴ちゃんのお陰で風邪の時でも美味しいご飯を食べる事が出来ました。食事のありがたみがより一層分かる様になりました。

ただ私はまだ鈴ちゃんに何一つ恩を返せてないです。鈴ちゃんに聞こうにも鈴ちゃんのことだから遠慮しちゃって正直に答えてくれそうにないですし…どうしましょうか。

サプライズで買いに行く?そもそも私は一人で買い物に行けません。誰かに買って来てもらう?それは私からのプレゼントと言えるのでしょうか。


悩みに悩んだ末に鈴ちゃんへのプレゼントは鈴ちゃんと一緒に買いに行くことにしました。ただ鈴ちゃんが遠慮しないように鈴ちゃんのプレゼントである事は隠して買って、買ってからプレゼントします。

買いに行くのはこの間行ったホームセンターの手前にある商店街。ここにはクレープ屋、本屋、雑貨屋などの色々なお店が入っています。何より色々入っていますが雰囲気は古き良き商店街なんです。賑やかで人の流れが外より早くて店員さんの掛け声や客引きの声が聞こえて来て。そんな賑やかさだから私はこの商店街が小さな頃から大好きでした。

どこにでも連れて行ってくれるとお父さんやお母さんが言ってくれたらここに来たいって言うほどに。

そんな私が大好きな商店街に鈴ちゃんと二人で行きます。鈴ちゃんも商店街のこと好きになってくれるといいな。


商店街に着きました。今日は雑貨屋でお父さんに渡す用の小物を買うという設定でここに来ました。私の本当の目的である鈴ちゃんにお礼の品を買うという事を鈴ちゃんに伝えられなくて罪悪感に蝕まれます。

雑貨屋は入ってから三店舗目です。

私の移動速度でも何分とかかりません。

そこの雑貨屋には色々なものがありました。可愛いカチューシャに置物、可愛いシャーペン、シャー芯ケースなんかもありました。…お父さんの為に買いに来たって言ってここまで来たけどこれからどうしよう。お父さん様に可愛いもの買うのは不自然だよね。まあここまで来たら強行突破ということで頑張りましょう。えい、えい、おー。これアニメとかであこがれてたんですけど一人でやってもむなしいだけですね。


選ぶのに夢中になってしまってたらもう12時になってしましました。楽しいと時間が過ぎるのが早いです。幸いもう買い物は終わらせているのですが今から帰るとお昼ご飯はここで食べましょう。ここでご飯に丁度良さそうなのはたこ焼き、クレープ屋のおかずクレープでしょうか。

「鈴ちゃん。今日はここでご飯を食べようと思うんですけど何が食べたいですか?」「…えっと、特に何も無いです。」クレープ屋の方をじっと見ながら言われても説得力がないですね。「じゃあ今日は私がクレープの気分なのでクレープでいいですか?」

声での返事は何もなかったですが態度がものすごい喜んでいました。顔が幸せそうだったり、体が揺れていたり。ちょっと行儀が悪いけど今そんな細かい所を注意して楽しんでいるところに水を刺すわけにもいかないので私も一緒に楽しみます。

クレープ屋ではおかずクレープも様々な種類がありましたがお昼時になるとたこ焼き屋とかにお客さんが言ってしまうのもあってクレープ屋は空いていました。いつもだと何分か並ばないと行けないのに、嬉しい限りです。

「鈴ちゃん何にします?」「私は…えっとこの鳥の蒸し焼きクレープがいいです。」鳥の蒸し焼きクレープを見てみるとたしかに美味しそうだった。白い鶏肉に香ばしい香りが漂って来そうなほど美味しそうなソース。私もこれにしようかなとも思わなくもないんですがせっかくなら違うものをだべたいので私はサラダ巻きクレープにしました。

「美味しいです。鶏肉柔らかくて」

空いていることもあって店員さんがすぐに焼いてくれたおかげ5分もせずにクレープを食べることができています。

一生懸命にクレープを頬張っている鈴ちゃんは可愛いです。「えっと…一口食べますか?」鈴ちゃんが気を使ってクレープを差し出して来てくれました。

こういう時ぐらい思い切り楽しまないと損ですよね。


間接キスになるって意識したとたんに恥ずかしくてなんだかに笑ってしまいます。何せこういう事をするのは初めてですから。

楽しいです。また鈴ちゃんに幸せを貰ってしまいました。この今日買った赤いカチューシャで少しでも恩が返せるといいのですが。

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