新じゃがの話
先週から私の最高に可愛い妹の様子がおかしい。今まで一緒に寝てなかったのに一緒に寝たがるし私の仕事の家事を前よりも率先してやってくれるようになった。帰ってくるとマーキングみたいに顔をこすりつけられたりもする。なにが言いたいかというと前よりもかわいくなってるということである。
最近、僕がおかしい。元々最高に可愛いかった姉が最近特にかわいく見える。僕の心理状態になんかあったかなと思って色々調べてみたけど特になんもなかった。でもどうしても姉に甘えたくてしょうがないし家に帰って来た時にいつもの姉の匂いじゃないと落ち着かないというか嫉妬みたいな感情で覆われてしまう。
私たち姉妹は人に自慢できるぐらいには仲が良かったし私は可愛い妹が大好きだけどこんなずっと一緒だとなんか落ち着かない。なんか恥ずかしいというかもどかしいというか。こういう所は私もおかしいな。だから今週の木曜日は妹と離れて憂鬱な気持ちを押さえつけて学校に行ってみたら今度は妹のぬくもりというか天使な妹と一緒にいる空気が無くて寂しくなっちゃった。だからかなんか今週は疲れた。可愛い妹も疲れて見える。だから今週は鶏肉を使った料理を中心にしていきたいと思う。鶏肉、特にむね肉は疲労にいいと何処かで聞いたことがあるから。
今週は僕が僕を制御出来てなかった。だから最高に可愛いとかの言葉では表現しきれないほど可愛い姉に迷惑をかけてしまった。迷惑をかけちゃったからお詫びと言えるほどのものじゃないけどサプライズで僕の姉が好きなジャガイモを買っていく。しかも今の時期は新ジャガイモがあるから。この時期のじゃがいもは甘くておいしい。だから僕も好き。僕の最高に可愛いくて心まで綺麗な姉は喜んでくれるかな。
「おねぇ、ただいまー。」玄関から私の可愛い妹の声がする。今は鶏肉と格闘中で迎えに行けない。
可愛い妹は今日は自分の買い物があるからって言って朝ご飯を食べたら直ぐにショッピングモールに行ってしまった。ナンパとか怖かったから送り出したくなかったけど頑張って我慢して送り出せた。私はもも肉に塩麴を揉みこんでいる所。今日はこれをオーブンで低温で丁寧に加熱するという豪華なご飯。
私が帰ってきたときにはもう一生懸命な姿も最高に可愛い僕の姉が夕ご飯の準備をしていた。…ご飯を準備していた?「おねぇ、もしかして今日ジャガイモ使わない?」口に出してしまった。ジャガイモは日持ちするから今日じゃなくてもいいのに。早く使ってほしくて、一刻も早く僕の最高に可愛い姉に褒めてほしくて口に出してしまった。なんか最近ダメだな、感情に振り回されてる。「徳、もしかしてジャガイモ買ってきてくれたの?」「うん…でも今日の夜ご飯には使えないよね…」「全然。丁度欲しかったの」さっきまで悲しかったのがウソみたいに嬉しくなってきた。…自覚できる程度に情緒が安定しないな。
お肉の付け合わせをどうしようかって悩んでたら最高に可愛い妹がジャガイモを買って来てくれた。これから買いに行かなきゃと思ってたから嬉しい。買ってきてくれたことに関してちゃんとお礼をして感謝しながらジャガイモをぶつ切りにしてお肉の周りに並べてオーブンの中へ入れる。
丸々一時間かけて火を入れた鶏肉のいい匂いが僕の部屋まで流れてきた。食欲がそそられる独特の香ばしいような匂いがする。リビングに行くとうちで一番大きな鍋敷きの上に鉄板が置いてあった。
火が通っていることは確認してるから早速食べるために取り分ける。それでも生焼けでないことを確認しながら。鶏肉の生焼けは怖いからね。取り終えたら早速食べる。
「「いただきます。」」
早速僕が一番気になっていた鶏肉を食べる。
口の中に鶏肉独特のさっぱりとした肉汁があふれてくる。それにこの麹の優しい塩味に麹焼き特有のこの表現のしようもないほど食欲をそそる香り。感想はつまり最高に美味しい。
私の可愛い妹が買ってきてくれた新じゃが。感謝しながら食べる。
やっぱりいつものじゃがいもより甘くて、ホクホクさが段違い。麴の旨味と鶏肉の旨みが濃厚に絡まった味がする。外側の水分が飛んで硬くなってるところすらこの旨味を逃がさぬ為にあるんだって断言出来る。
ご飯を食べ終えてお皿を下げながら来週は僕の事をコントロールできるかな、なんてことを考えてた。
来週こそはこの私が徳に抱いてる感情に名前を付けるぞー。と心の中で決意を固めつつ向き合いたくない現実と目を合わせる。…この量の洗い物するのって何時間必要かな…?
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