苺 あなたは私を喜ばせる

私は四日前ここの使用人面接に受かって今日が初めての仕事の日。

常務内容は何も知らないが不思議と怖さとかはない。もう感覚が壊れてしまったんだなと改めて自覚する。話は変わって仕事の話。私は高校生の専属の使用人になったらしい。

その人の部屋に行く。仕事の話があるらしい。私が仕事をする人の家はとても大きい豪邸。土地の広さは山一つ分。部屋の量はわからない。多すぎて数えようと思わなかった。

私の雇い主の高校生、大平めい様の部屋は一階の左回りで二回突き当りを曲がった所だったはず。

ここに来たことは面接以来ですけど意外と覚えてる。

この家が広いからか一人も人と会わなかったのにこの扉の奥に人がいる。…怖くない。怖くない。怖くない。怖くない。

さっきまで恐怖とか一切なかったのにここに来て膝がプルプルしる。うまく動かない。体中に力が入ってるはずなのに力が入らない。何とかドアを開ける。

部屋にはベットに足を伸ばして上半身だけを起こしている女の人がいる。そのベットの傍に車椅子が置いてある。挨拶をしなくてはいけないという強迫観念が私の声帯を震わせる。

「きょうから…しよう、にんをする藤咲鈴花です」私の心とは裏腹に全然声が出てくれない。声になった音も本当に小さい。怒られる前にここから逃げ出したい。逃げ出す当てもないけど…

そんな私の自己紹介が聞こえたのか雇い主の高校生が自己紹介をし返してくれる。「自己紹介ありがと。私は、まあ知ってるかもだけど大平めい。よろしく」私の自己紹介と違ってはきはきしてる挨拶。全く違う人種なんだなと色々な感情がまじりあった感情が生まれる。

暫くして大平めいさん、様?が何か必死に車椅子に手を伸ばしてる。こういう時は手伝った方がいいと思う。後で怒られる時に行動したときはプライドとかいう何にもならないものを投げるてて謝ればどうにかなることがある。ただ行動しなかったときはこの方法では乗り切れない。

だから行動する。

「…あの…お手伝いした方がよろしいですか?」嬉しそうな顔をしてくれた。これで正解だったらしい。

手伝ってみて大変だった。そして嬉しそうな顔をまたしてくれた。

何故車椅子を引き寄せたのか聞いたら朝ごはんを作るためらしい。料理はちょっと自信がある。

「…私が、やります。」自信を持って言えた。


調理場では高級そうな卵とハムが置いてあった。なんか卵は触った感じから違うしハムは私の知ってる大きさじゃない。「すずちゃん、今何枚焼いてる?」「ぃ、いち枚です」「あー今からもう一枚お願いできる?」「は、はい」

作っている最中にもう一枚作る枚数を追加すると言う難題をこなす。


私にしてはよくできた。

そして誰か来るのかと思ったら私が食べていいらしい。こんな高級そうな物を私が食べていい?どこかに頭ぶつけたのか、何か裏があるのか。考えてもわからない。

ただ食べ終わってからの事を考えると恐怖で震えが止まらない。食器を持つのもやっと。

そもそも食器が縁に色んな柄があって、高級そうでこれ一枚でどれだけの金額がかかっているか考えられない。こんな豪華な食事一週間前だったら考えられない。


油断していたのは事実です。めい様が話さない時間が続いて他のことに気を取られた。皿を一つ割ってしまった。

言い訳の仕様がない。もう頭は諦めてるはずなのに体が勝手に謝る。痛いのはやだなーと呑気に考えてるのに体には力が入らない。

視界が狭く暗くなっていく。


「落ち着いて。大丈夫、そのお皿あんまり使うやつじゃないし。それよりもすずちゃんは怪我無い?」


私の心配?皿じゃなくて?最近考えてる事と表情が一致しない。

今だってきっとごちゃごちゃ考えているのに表情は安心し切って緩んだ顔になってるだけだろうから。


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