ヒペリカム あなたを救う

さて知らない人が自室にいるのはなにか落ち着きませんね。それも相手が年端もいかない女の子だと特に、犯罪臭が強くて。

部屋の隅にいるこの子は藤咲鈴花ふじさきすずか。すずちゃんです。この子は四日前に私の専属の使用人として雇わせて頂いて今日から仕事の子です。まあ使用人とは名ばかりで私の話し相手として雇わせてもらったんですけどね。年齢は中学1年生。もうグレーどころか真っ黒ゾーンです。

さて、この後悔のようなものをしてたらそろそろ8時になります。朝ごはんを食べる時間です。準備をしましょう。今日は目玉焼きにしましょうかそれともスクランブルエッグか。どちらにしましょう。

もしかしたらベーコンがないかもしれません。これは私のこだわりなのですがスクランブルエッグにはベーコンがないと寂しいんですよね。

冷蔵庫を確認しにいかないと。

私は足が不自由です。車椅子がないとまともに移動ができないぐらいには。

…私の自己紹介をまだしていませんでした。私は大平おおひらめいです。私は生まれつき足が人より弱くてまともに歩けません。私は今はもう高校生です。ここまでやってこれたのもお父さんとお母さんのお陰です。

私は今通信制の高校に通っています。その高校では先生が私の事を認めてくれてますし居心地がいいです。

通信制の高校にしたのは登下校がきついのとなにより教室が居心地悪いんでるよね。私はまともに歩けないので体育の授業に参加出来ないので同じクラスの人からはさぼりだなんだいわれます。それに先生は私のお父さんがすごいからって私の事を正面から見てくれませんし。

まあ私の話はこれでおしまいにしてベーコンです。それによって私の今日、一番最初に食べる物が決まるのです。

移動のためには車椅子に移動しなくてはいけません。…車椅子の位置が遠いいです。頑張って手を伸ばしたら届くでしょうか。多分1m80cmぐらいありますよね。…こんなことですずちゃんの手を煩わせるわけにはいかないのです。

「…あの…お手伝いした方がよろしいですか?」すずちゃんの緊張した声が聞こえる。…すずちゃんの方から申し出てくれたからセーフです…何に言い訳しているんでしょう。

いつもは全力を尽くしても一分ぐらいかかるのにもう既に終わってる。掛かった時間は二十秒もかかってない。朝の準備とかに時間を取られるのは私の数少ないコンプレックスになってたからこの時間が短縮されるのは本当に私の幸せに直結します。

さて、そろそろ本格的にお腹が減ってきました。

まず冷蔵庫を確認に動きます。

「…私が、やります。」初めてこの子のこんなやる気のある声を聞いた気がする。まだ会ってから四日目だけど基本的にビクビクして話してるから嬉しいです。


今日の朝ごはんはすずちゃんが作ってくれる事になりました。…緊張しているのか危なっかしいですね。見ている私も緊張してきます。今日の朝食はハムを軽く焼いてから生卵をのっけるハムエッグというものです。…そうだ、すずちゃんと一緒に食べたいです。「すずちゃん。今からハムエッグ一枚追加できる?」「は、い」声が震えています。なんかこれ犯罪じゃないですか?

とはいえ流石のすずちゃん。まだ知り合って間もないですけど。

器用にフライパンの端に一枚目をずらしてハムを焼いていきます。

まだハムを入れた段階とはいえ凄いです。手際に関心しながら鈴ちゃんを眺めながら少し待っていると出来上がったらしいです。

匂いとか見た目が特別いいハムを使っているのでいつも以上に美味しそうです。

すずちゃんがお皿にハムエッグを盛り付けてくれています。そんなすずちゃんを見ていると小動物に見えてきます。

出来上がったハムエッグを机に持ってきて貰います。

「あの…もう一つのお皿は何処に、置いたらいいですか?」…誰の分を作ってもらっているのか言ってなかった。

「すずちゃんのだよ。私が一人でのご飯寂しいから作って貰っちゃった。」緊張少しでも解いて貰いたかったからあざとい感じで言ってみましたけど…疲れたし、すずちゃんには奇妙な生物を見る目で見ていると。

私に気をつかって隠そうとしているのが逆に辛いです。ただ納得はしてくれたようで私の隣の席に座っている。ここまでして一緒に食べてくれなかったら悲しいのでよかったです。そして何故か向かい側に座られたのは私の顔を見ながらご飯は食べられないっと言う無言の意思表示ではないと願っています。

さてすずちゃんがカタカタ言っています。いつもの三倍ぐらい緊張していそうな感じです。確かにに立場にある人間との朝食はきついですね。私としてはすずちゃんにはハツラツしていてほしいです。だけどこの年で私に対してこのおびえ方は尋常じゃないですよ。相手が中学生以上なら力もそれなりにあるし、怖がる必要ないと思うんですけど…

私が考え事をしている間ずっとガタガタ震えていました…悪化してますね。無言の時間が二十秒ぐらい無言で朝食を口に運ぶ時間が続きます。隣からすずちゃんが食器を使っている音が聞こえるのが一人じゃないと分かってありがたいです。

ルンルン朝食を口に運んでいると隣、すずちゃんの方からお皿が落ちる音がしました。

「も、申し訳ありません。」顔を青くしてという表現が適切な顔色で、泣きそうな声色で、まるで不良の頭の上に釜揚げうどんをこぼしたぐらいの顔色で、謝っています。…元々はすずちゃんはつらつな子だと思うんです。勘ですが。たかが感だと侮るなかれ。感は無意識に脳が判断していることですから信憑性あるんですよ。

…どうでもいいことに話がそれましたがなんにせよ中学生がここまで人を怖がっているのは健全じゃないですし、もっと人生を楽しんでほしいですね。第一歩として…ほめましょう。自信は大切です。まあ何よりこの状態を維持してるとすずちゃんが泣いてしまいそうなので落ち着いてもらいたいですね。「落ち着いて。大丈夫、そのお皿あんまり使うやつじゃないし。それよりもすずちゃんは怪我無い?」初めてすずちゃんが安心しきった顔を見ました。可愛い。

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