百合百合の話
牛寺光
ゼリーの話
私は
この名前のせいでどれだけ苦労したか。
初対面の人にはまず間違えなく男の人に間違われるし、そもそも名前間違われるし。だから病院嫌い。
そんな私にも家族のことで自慢がある。
妹のことだ。私の妹は天才だ。そして努力家だ。これに関してのエピソードはまた今度。
話を戻すと私の妹は天才で努力家だ。ただ何の犠牲もなく手に入れられるものは無い様。それは天才で努力家の妹にも同じことが言える。
私の妹は集中すると周りのことが一切見えなくなる。話しかけるのも私以外だとキレる。
…これって私が特別?最高じゃん。嬉しすぎてなんかテンションがおかしくなりそう。この事実に気づくのはもう130回目だけど嬉しすぎ。
妹のがなんか私だと理解できないレベルの証明を始めたから。教科もわからないレベル。まだ中学2年生なのに高校生の私がわからないって…。そのぐらい私の妹はすごいのだ。自慢するのを我慢する。何故なら話が進まないから。取り敢えず自慢は後でゆっくりとする事にして今日はゼリーを作っていこうと思う。何故なら頭を使うことには糖分!これは世界の真理。
とりあえず多くの人が持っている疑問に答えようと思う。なぜゼリーを作るか?やはりこれが一番多い疑問だと思う。理由は最高に可愛い妹が果物のゼリーが好きだから。
早速作っていく。難しそうだって?大丈夫、ほんとに簡単。
まず準備するのはゼラチン、ジュース、お好みでフルーツ缶。出来ればフルーツとジュースの種類を合わせると美味しいと思う。
今回は私の可愛い可愛い妹の好きなみかんの炭酸ジュースとみかんのシロップ漬けを使う。
手順は簡単。
最初に綺麗なグラスや皿にみかんを入れる。透明な皿やグラスに入れると出来栄えが綺麗で好き。
そこに炭酸ジュースを炭酸が飛ばない様に慎重に注いでいく。
ここでようやくゼラチン登場。ゼラチンをお湯に入れ溶かす。完全に溶けきったら少し慎重に入れ、軽く一、二回かき混ぜ後は冷蔵庫に入れて冷まして終わり。
時間を見るとまだ朝の8時前。完成した頃にはお昼頃かな。
ふっと我に帰るともうお昼すぎだった。
僕は
お腹が空いたので何か飲み物と今すぐにでも食べられそうなものを探しにリビングにいく。時間が勿体ないので片手にはタブレット。そこに映し出される数学の図形。不可能であると証明されている作図の問題。この問題が不可能であると言う証明が正確では無いことの証明、これが僕が今やっている課題。今は調子がいいから時間を無駄にしたくない。
この家は2階に個人の部屋とトイレがあり、一階はお風呂、リビング、何に使うのかわからない和室がある。冷蔵庫はリビングに備え付けられているオープンキッチンにあるからリビングに行かないと。
タブレットを見ながらだから慎重に階段を踏み外さないように気を付けながら階段を降りきる。
冷蔵庫を開くと色とりどりのグラスに入ったゼリーが沢山あった。ゼリーの色は透き通ったオレンジ色。中にみかんが入ってるのが見える。その様子は琥珀のようで食べずに見ていたいぐらい。このゼリーを作ってくれたであろう僕の姉は…リビングの机で理科の問題集を拡げたまま寝てしまっている。ノートを見ると途中で答えが途切れている。大方答えが分からなくて悩んでたら寝てしまった、というところだろう。
ここはヒントを書いておくべきだろうか…。まあとりあえずゼリーを食べよう。
グラスが五つあるから…四個貰おう。
最初は果物の入っていない上のほうだけ食べる。口に入れた瞬間からシュワシュワする。
驚いたけど…これは良い気分転換になる。ゼリーの上をすくうように食べてからミカンの果実を口に入れる。…疲れた頭に利く。このシロップ漬けにしかない独特の甘さ、これには生のミカンと違う魅力がある。それに一粒一粒の触感も残っててプチプチしてる。
半分食べ終えた所で僕の姉が起きた。まだ寝ぼけているらしくしまらない顔をしている。これはとても可愛い。
「あれ~もうゼリー食べちゃった?」間延びした声で、まだ寝ぼけているのが分かる声で聞かれた。「まだだよ、全部食べていいの?」僕の姉は基本的にこういう所がある。私にどんな目線で見られているか意識しないところが。
それから暫く気分転換を兼ねて私の姉がやっていた勉強を教える。普通とは逆だろうけど僕も姉もそんな細かいことは気にしない。
普通こういう時他人のために時間を使うのやだけど姉のためならそんなことはないな、と思っている僕がいることに驚く。驚愕。
もう今日は問題考えるのは終わりにしようか。…こんな下らない課題より私の最高に可愛い姉の方が大切だもん。
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