第11話 グリューン村 アルパカファミリーとドゥルセ・デ・レチェ・ペロファミリー

アーテル国の上空は、珍しく晴れていた。

アーテル村の隣にあるグリューン村

ここは、森に囲まれ、村もアーテル村に比べて、小さくて、人口も少ない。

そんな場所は、牧場を営む家族が多く、色々な牧場がある場所としても有名である。

そんな場所で牧場を営んでいるのは、アルパカファミリーである。

お父さん、お母さんと、娘一人、息子が一人の四人家族である。

牧場敷地内に家を建て、暮らしている。

牧場の隣にもう一軒、家が建っているが、そちらに住んでいる家族も、アルパカファミリーの営む牧場で働いている。

アルパカのお父さんが牧場主で、牧場の隣に住んでいる家族、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの夫婦が手伝っている

ドゥルセ・デ・レチェ・ペロとは、犬の獣人の種族名でキャラメル色をした毛の色が特徴である。

お父さんが、牧場を手伝っている。

アルパカとドゥルセ・デ・レチェ・ペロのお母さんが二人で牧場の売店の売り子をやっている。

二家族の子供達は、二家族とも、上は小学生、下が赤ちゃんである。

アルパカさんチが、まだ、ハイハイするような赤ちゃんで、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんの方が、幼稚園に通うような年齢だ。

そんな二家族は、とても仲が良く、子供達も小さい時からずっと一緒に遊んでいる。

珍しく、晴れたこの日、子供達は学校帰りに、家の敷地内で遊んでいた。

二人の年は、アルパカの女の子が七歳、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの女の子が九歳である。

下の子達も、お姉ちゃんが遊ぶ仲間に入れて欲しそうに見てるが、お姉ちゃん同士から「赤ちゃんはダメ、小学生の子しか出来ない遊びなの!!」と言われてしまった。

アルパカの赤ちゃんは、よく分かっていないが、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんは、仲間外れにされて、泣いてしまった。

しかし、お姉ちゃん達は、慌てずにまた、遊びの続きをし始めた。

毎度の事なので、気にしないらしい。

ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんは、お母さんが働いている売店まで、泣きながら歩いて行った。




売店では、お土産を買う人で、狭い店内は一杯になってしまった。

この牧場自体、そんな大きいものではない。

ただ、動物のアルパカがいるという事で、普段触れ合えないアルパカを見れるからと、やってくる人がいる。

しかし、大半は、アルパカの毛で作られた品を求めてやってくる人がほとんどだ。

アルパカの毛は、極めて良質な体毛を具えている為、衣服などに使われるからだ。

そんなわけで今日も、アルパカの毛を使った物を目当てに、お客さんがあふれかえっていた。

子供達はアルパカを見て、大騒ぎだが、動物のアルパカは、ちゃんと木の柵の奥にいて、触る事は出来ない。

触る事が出来るアルパカもいるが、つねお父さん達の監視の元、時間を設けてお客を柵の中に入れている。

それでもはしゃいで、柵に登ったりしようとする子供がいる。

危険だからと注意しても、看板を立てていても、はしゃいで登り、落ちて泣き出す子供が後を絶たない。

親も親で、自分の子は大丈夫と思っているのだろう。

そういった親には、看板や声掛けは意味がない。

最近では、柵のせいで子供がケガをしたと、文句を言う親もいるくらいだ。

経営主としては、頭の痛い話だ。

売店でも、子供そっちのけの親が騒ぎ回り、その親が連れて来たはずの子供も、親の血を充分受け継ぎ、泣きわめいたり、奇声を発している。

そして、野放しのサルのように動く。

子供が売り物に勝手に触り、ダメにしていくケースもある。

お母さんたち二人は、ニコニコ顔で接客しながら、ハラハラ、ドキドキして客の動きを見ていた。

そこへ、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんが入って来たものの、客の騒がしさにびっくりして、また来た道を戻って行った。

その時赤ちゃんは、自分の居場所がないと感じたのだろう、悲しそうな顔をして、その場を去って行った。




結局、元の場所へ戻って来た。

姉は姉同士、仲良く遊んでいる。

アルパカの赤ちゃんも、サークル内で大人しく一人で遊んでいた。

ハイハイしか出来ず、広範囲に動きたいが、サークルがあって動けない為、中のおもちゃで遊んでるようだ。

自分はもう、赤ちゃんのおもちゃは卒業した年齢である。

赤ちゃんと呼ばれるのは、どうしてもしょうがない。

自分はまだ、赤ちゃんだからだ。

でも、幼稚園に通う自分は、少し大人に近付いたのだ。

だから幼稚園生用のおもちゃで遊んでいるのだが、一人でも遊べるが、誰かと遊ぶともっと楽しいのを知っている。

だから、誰かと遊びたいのだが、遊び相手がいないのだ。

困りものである。

自分はひとりぼっちだ。

一方、お父さん達は、まだ言う事を聞いてくれる、動物の方のアルパカの世話に追われていた。

キーキー喚く獣人の子供達と、気にせずお喋りしている親達に、いくら声を大きくして注意いても、聞き入れてくれない。

だからって“言わない”という選択肢もなかった。

ので、色々注意し、聞き入れてくれる人にだけ、頭を下げる。

動物のアルパカのがカワイイし、ちゃんと世話もすれば、上質な毛を刈る事が出来る。

そしてなにより、指示に従ってくれる、というのがありがたかった。

たとえ、獣臭がしても、連日の作業で腰が痛くても、動物達の為だ。

お父さん達、二人がかりで動物のアルパカの世話などをしている。

もこもこした物体が、辺りをゆっくりと動いている。

お父さん達は、動物の姿に癒されていた。




最後のお客さんが敷地内を出て、店の掃除や片付け、売上金の回収などを済ませて、お母さん達はようやく息をつける。

家に帰ると、家事が待っているが、店で働くより気が楽だった。

子供達がある程度、出来る事を手伝ってくれる為、少し楽が出来る。

まだ小さくて、充分、幼い子供達だが、父や母の姿を見て、成長するらしい。

自分達から動いてくれるようになった。

ただ、競争されてしまうと、やらなくて良い事や、まだ、出来ない事すら、やりたいと言ってくるので、少々、困る事もある。

なんとか言い聞かせ、勝負を止めさせるが、またいつ、どんな勝負をしたがるのかと思うと、お母さん達の負担が増えてしまう。

そんな時は、お父さんに任せるのが一番と、今度はお父さんにとばっちりがくる。

動物の世話を、子供達に手伝ってもらわなければいけないからだ。

家の手伝いや、動物の世話を手伝ってくれるのはありがたいが、まだ子供の分、知能も体力も発達しておらず、余計な仕事を増やす場合もある。

上手く出来なくて泣いてみたり。

そうなってくると、また厄介である。

慰めて、直ぐに泣き止んでくれないと、手が止まってしまうからだ。

子供をあやしながら作業すると、余計に疲れるし、普段しないミスをしたりする。

そうすると、親がイライラし始める。

悪循環になってしまうのだ。

だからこそお手伝いは、重要であり、また、不必要な勝負事でのお手伝いは、避けるべきである。

今回、今はまだ、その勝負が開催されてないらしい。

至って平和な時間が流れている。

双方の家は、牧場の敷地内と、その隣にある。

二手に別れる前、二人のお母さんは、勝負がないと良いと願っていたが、今回は無かった事に安堵した。

赤ちゃん達をちゃんと面倒見て、家の手伝いもしてくれたのだろうと思った。

家の中を見れば、一目瞭然だった。

学校や幼稚園に行っている間は、二人のお母さんが交代で、アルパカさんチの赤ちゃんの面倒を見たりしているが、学校から帰ってくると、子供達が遊びの合間に、ちゃんと面倒を見てくれているらしい。

たまに、泣いて売店まで赤ちゃんが来るのだが、今回のように、売店まで来て店の状態を見ては、家へ帰る事なんて、よくある事である。

家へ帰って来たお母さんに向かって、泣いて甘えてくれば、売店に来てみたが、家に帰った時によくそうなるので、お母さんは何があったのか察して、対応している。

ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんは、いつも通り帰って来たお母さんに泣きついた為、お母さんは「はいはい、お姉ちゃん達の仲間に入れてもらえなかったのね?」と言い、子供の頭を撫でた。

そうすると、赤ちゃんは泣き止み、自分のイスの方へ戻って行った。

このくらいの子供達というのは、しょうがない事だらけだ。

お姉ちゃんが遊んでいる仲に入れてもらえないのも、理由があるのだ。

その理由は下の子には分からないだろう。

だからこそ、泣くしかない。

母に甘えたい気持ち、甘えられない環境。

実に様々な環境がある。

それを知るのが、今の年頃の子が覚える事だ。

兄弟などいると、誰もが通過する道だったりする。

とくに下の子で起こりうる道だ。

まぁ、大体、遊んでもらえない事が、のちに兄弟、姉妹の間で、溝になったりするのだが。

仲良く遊びなさい、と、躾けた所で、難しい問題である。

一方、アルパカさんチでは、夫婦が牧場の事と、町内会の事を話し合っていた。

子供達は、それぞれの時間を過ごしている。

上の子は、宿題、下の子はもうすでに眠っていた。

昼間、沢山遊んだらしく、すやすやと寝息をたてている。

お姉ちゃん側も、一人で頭を左右に揺らしながら、宿題と格闘していた。

牧場仕事だと、動物相手になり、スムーズに事が運ぶ事が無かったりする時もある。

上手くいったと思っても、何かが起きる事はしょっちゅうだ。

なんとか一日の仕事を終え、お父さん達も帰宅したが、帰宅したら帰宅したで、それぞれのお父さんとしての仕事が待っている。

アルパカのお父さんは、牧場の事で頭が一杯である。

今度、近くの乳児院の子達が遠足に来るのだ。

サバイバルに力を入れている人達で、奥の森でサバイバルの経験をさせるらしい。

泊まりこみで、キャンプをしたりしている所で、今回は動物のアルパカ相手に、色々としたいらしく、先生に頼まれている。

動物の世話などもさせたいらしい。

実にたくましい、赤ちゃん達だと、お父さんは思った。

お母さんは、町内会の事で頭が一杯だった。

子供会の出し物や、遠足、町内会全体の出し物や、町内清掃など。

その他、もろもろの行事に強制参加させられている。

そういうのが大好きな人もいるので、なかなか声に出せないが、仕事もある為、めんどくさいの一言である。

多分、お母さんにとっては、専業主婦だったとしても、変わらないだろう。

とにかく、めんどくさいのだ。

お店でお客さん相手にお仕事なさってるんだから、うんぬんかんぬんと、言ってくる人がいる以上、そのなんとやら、である。

お母さんはため息をついた。

地味に出費もかさみ、時間もかかる。

気を遣うし、仕事より疲れていた。

そんな時、お父さんから、「なぁ、今度、国の祭りあるよな?うちは何をやるんだ?」と、言われた。

アーテル国最大の祭りが、今度、行われることになっている。

これは、国が創立して何年という、節目の祭りである。

市町村、全ての祭りで、至る所に店や飾りが飾られる、とても大きな祭りである。

毎年、同じ日に行われ、その日は祝日となっている。

その日は国全体の祭りな為、それぞれ大規模に出店したり、サービスしたりしている。

意外と行事が多い、アーテル国だが、どんより雲の多いこの国は、気分も滅入りやすい為、行事が多くなっている。

収穫祭やらなにやら、多く祭りを作って、さらにこの祭りである。

盛り上がる為、良いのか悪いのか。

楽しい反面、店側は負担もある。

アルパカ一家とドゥルセ・デ・レチェ・ペロ一家が協力して、動物と触れ合いコーナーと毛を使った商品の販売(いつも通りだが)を小規模で出すつもりである。

「毎度、同じです、牧場の売店は閉めて、ふれあいコーナーと、小さく横に出店出すだけ」

「そうか、イヤ、何か今年は、新しい事した方が良いのかと思ったが、難しいか」

「とりあえずは、問題なくやれてるしね」

村の人が手伝ってくれて、難なく出来ている、というのが、付け加えられるが。

グリューン村は住人が少ない為、やる事だらけなのが特徴である。

だから手伝ってくれる町内会の人々は、貴重なのだ。

だからこそ、大変なのだが。

お母さんは、町内会長をやっている。

村のイベントに国のイベント、お母さんは町内会長の仕事で、頭が一杯一杯だった。

国の創立記念日に開催される祭りの前に、小さな祭りが開催される。

町内会の祭りは、町内会長のお母さんが中心となる。

押し付けられる形で、少ない人数の村の町内会、会長をやらされる事になり、仕事と家事の合間に、色々とやっている。

隣に住む、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロのお母さんも、同じく副長として居てくれる為、二人で話し合う事が多くなる。

その辺の相手が、普段からよく知る人物で、助かっていた。

この村は、人も子供も少ない。

出て行く人、入って行く人がいる為、まばらな人数で、やって行かなければいけなかった。

それでも、人の為、子供達の為と、今まで色々やってきた。

しかし今回、村は一番、人の数が少ない時である。

とくに子供が少ない為、新たに子供達が出来るもようし物を用意しなくてはならない。

お母さんは、色々な国のお祭りなどを調べて、案を考えていた。

しかし、どの案も、子供がいてこそ成り立つものだ。

お母さんの案は全て消え、白紙状態が続いた。

「はぁー、国のもようし物と被らず、なおかつ少ない人数で出来て、みんなが楽しいもようし物、そんなのあるのかしら?」

ダイニングテーブルに、紙とペンを転がしたっま、お母さんは悩み続けた。




翌日、お母さんは売店の品出し中に、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロのお母さんに相談した所、「無いなら無いで、良いんじゃない?後は、出来る事をやれば、その後、国のお祭りもあるんだし、そっちを豪華にするとかすれば良いんじゃない?事情が事情なんだから、しょうがないわよ、うるさいジジババには、私から言っとくから」と返ってきた。

「そんなもんかしら?まぁ、それならそれで楽だけど、でも」

「イイの、イイの、気にしない!国のお祭りでも悩むってんなら、また一緒に考えるから、大丈夫よ!さっさっ、仕事、仕事」

そう言われると、少し気が楽になった。

アルパカのお母さんは、こうして話が出来、なおかつ一緒に作業できる相手の存在が、とても嬉しかった。

女として、母として、妻として。

お互い悩みは尽きなかった。

そこで、仲間がいる、というのは、とても大きな存在だった。

話や趣味が合うのも、とても良い。

そしてなにより、お互い、支え合えるのがとても良かった。

二人は開店前の品出しや、掃除の時に沢山話をした。

話をすると、スッキリし、また、新たに気持ちよく作業出来るからだ。




一方、お父さん達は、動物達を広場へ出していた。

そんなに一杯、いる訳じゃないが、何頭もの動物を広場に放つ。

動物はある程度まとまって動き、もこもこがだいぶ広まった。

合図一つで、もこもこが、もこもこと動き、さらにもこもこしていく。

お父さん二人で、手分けして作業し、毛を刈る時期になると、二人は張り切って毛を剃っていく。

今は、毛刈りの時期ではない為、小屋の掃除や、餌やりに精を出しているが、一番力を入れているのは、動物側が排せつした物を、いかに早く片付けるかを研究し、今はその成果を試している時だった。

体をあまり疲労させず、なおかつ俊敏さを失ってはいけない為、研究に研究を重ねた結果、今の形を作り上げた。

お父さん達は、必死になって動物の排せつ物を集めていた。

健康状態などを見なくてはならないからだ。

排せつ物は見た目が悪い為、いくらなんでも、綺麗にしておきたいのだ。

他の作業もある為に、素早く片付けたい、そういった思いもあるのだ。

一通りの仕事が終わると、少し休憩しに家へ戻る。

二人が同時にいなくなると、何かあった時に困る為、お母さん達同様、一人一人交代で休憩に行っている。

アルパカのお父さんも、お母さん同様、頭の中は仕事とその他の事で頭が一杯だった。

休憩も仕事をする上で、とても大事であると、お父さんは思っている。

家に休憩しに帰って来たお父さんは、家の中が静かでちょっと寂しく感じたが、赤ちゃんは保育園に預けている。

保育園から帰ったら、家にいてくれるのだが、目が離せない月齢の為、少しの間、保育園でみてもらっているのだ。

一人でお茶を飲み、頭を一旦空っぽにする事にした。

この時間が、お父さんにとって、リフレッシュの時間である。




子供達の通う学校では、子供の数が少ない為、学年で区切るわけではなく、普通の学校とは違うクラス分けをしていた。

アルパカの子供もドゥルセ・デ・レチェ・ペロの子供も、クラスは違うものの、合同授業を受けていた。

今は算数の授業で、丁度、一年生~三年生くらいの子達と、同レベルの物をやっていた。

二人がやっている物はちゃんと学年にあった物だが、先生は一人だ。

先生の数も少ない為、こういう処置をとっている。

学力、成績云々よりも、楽しく学べるというのを、学校のモットーとして、取り入れている。

成績云々という子は、自ら町や市の学校へ通っている子もいるが、その場合、結局通いづらい為に村を出て行ってしまう。

仕方のない事だが、多少、寂しさもある。

しかし、入れ替わりあちらこちらから人が入ってきたりする為、それとなく村は学校も廃校にせずにやれている。

保育園も同様、子の少なさから、まとめてみている。

〇歳~三歳、四歳~六歳くらいの子達がいる中で、アルパカの赤ちゃんは、0歳~三歳クラス、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんは、四歳~六歳クラスに入れられている。

ここでなら、多少、同じくらいの子供達が集まっている為、ドゥルセ・デ・レチェ・ペロの赤ちゃんは、誰かしらと遊んでいる。

アルパカの赤ちゃんは、クラスが違う為に、気が向いたら会いに行っているが、遊ぶことは出来ない為に、顔を見に行くだけである。

先生に絵本を読んでもらったりしている時もある。

ハイハイしかできない子でも、絵本を読んでもらえる時は、大人しく座り、絵本に興味を持ってくれるからである。

お姉ちゃん同士も年は違うが、姉妹のように遊んでいる為、本当は自分も仲に入りたいのだが、入れない為に、毎回寂しい思いもする為、大人がいる環境のここの方が、居心地は良かった。

みな、こうしてそれぞれの場所で過ごし、夜にはお互いの家で、それぞれの家族との時間を過ごす。

アルパカファミリーとドゥルセ・デ・レチェ・ペロファミリーの生活は、つねに獣人と動物で成り立っている。




後日、村の町内会主催の祭りは、それなりに成功した。

ある程度、不平不満は出てきたが、そこはドゥルセ・デ・レチェ・ペロのお母さんが言いくるめた。

牧場としては、近くの乳児院の遠足も問題なく終わり、平穏な日々をおくっていた。

あっという間に日々が過ぎ、村は季節の変わり目と共に、国の大きな祭りに向けて、着々と準備が進められた。

国一番の大きさを誇る祭りを開催する為、国全体、忙しそうに人が動いている。

季節の変わり目と重なっている分、やる事も増える時期だ。

次の季節に向けての準備と、祭りの準備、両方こなさなくてはならない。

新たにこの国へ来た、ペンギンファミリーも、フリントキャットファミリーの力を借りて、準備と季節の変わり目の支度をして、忙しくしていた。

子供達ははしゃぎまわっていた。

賑やかなのがすごく嬉しいらしく、いつまでもはしゃぎまわる子供達の姿が、そこら中から見られた。

久しぶりに家に帰って来た、ペルシャネコの男の子、翼も、国のお祭りで新たな女を捕まえると宣言していた。

もちろん、その横では、翼の従姉妹の小百合がぶつくさ文句を言っている。

シャグリーブロンファミリーも、三つ子が増えた為に、家族全員大慌てである。

お互い、初めのうちは、悩みまくり、再婚をするかしないか、考えていたマロンイヌのオリヴィアは、トイショップ経営が一番忙しい、稼ぎ時とあって、ジョンの店を手伝っていた。

あれから、四人での時間が増え、オリヴィアとジョンは夫婦になる決意をし、再婚していた。

オリヴィアの趣味だった小物は、今現在、インターネット販売にして、だいぶ好評である。

しかし、今回、忙しさから趣味の物を売るのを一旦止めて、ジョンのショップのお手伝いに精を出していた。

ブチウサギのお母さんも、ジュース販売のお店の売り上げアップの時期である。

期待に胸を膨らませ、張り切って美味しいジュースを作っていた。

国の祭りで良い写真を撮る、という目標を掲げ、日々、シャッターをきっているフリントキャットのお姉さん、鞠香も、シャグリーブロンのお姉さん、葉月の撮影について行きつつ、街中を歩き回っている。

ルージュ市のデパートの花屋で働く、ラッテラパンのお姉さん、アイリーンも街を出て、国の至る所、頼まれた場所に、花を飾りに行く。

アイリーンの妹、メアリーも、暇な時は手伝ってくれた。

アイリーンとメアリーの家族と叔父家族は、二家族で手分けして準備をしていた。

ルーファス、スティーブンの兄弟は、相変わらず二人で一緒にいた。

二人のお嫁さん同士も、仲良く準備していた。

スティーブンの子供達は、アイリーンの手伝いをしたり、綺麗に飾られていく街並みを見ながら、はしゃぎ回ったりしていた。

口うるさい近所の人も、今は噂話より祭りの話に対して、うるさいだの人が増えるだの、悪口を言っていた。

一番、忙しく、かく市町村を歩き回っているのは、モグラファミリーのお父さんだ。

各、市長、町長、村長、六人で集まり、話し合いと全員で街を巡り、国中の準備具合を確認して回った。

この国には、実は国王が国の頂点となる人物だが、長年、この仕事をやっていても、一回も会った事はなく、姿を見た、という人も現れてはいない。

しかし、それでも皆、あまり気にしてはいないようだ。

街中、姿を隠して、見つからないようにしていると、噂されているが、国王がそうしたいならそれでいい、というのが、暗黙の了解らしい。

モグラのお父さんも、いつか会ってみたいもんだが、無理だろうなぁと、思っている。

だいたいそんな感じで、国王の姿を絶対見たい、などと思わず、また、あまり関心が無いようだった。

その感覚は、いつでも変わらないらしい。

国王一家の事は、皆、知らない事ばかりだ。

家族の数さえ把握されていない。

国王も本当に存在しているの?しているなら見てみたいわ、程度で留まっている。

王子がいるとされるが、存在は国王と同じでいるのかいないのか、何人存在しているのかと、全く把握されていない。

実際、国王と国王の家族は、存在しているのだが、その国王の住まいは、人に見つからないよう、ひっそりと森の中にある。

その住居や存在を知る者は、この国では少ない人数しかいないのである。

王子は実はルージュ市内で働いているのだが、その事に気付いている者は、王子の側近以外は知らない事実である。


             第十一話 終わり



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アーテル国に住む者達のドキュメント 2 まるみ @marumi-tama

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