【それでも俺は】積年の腰痛が原因で国とパーティを追放された勇者、行き倒れていたところを美少女エルフ整体師にゴキャァ!と整体してもらい完治する。「ありがとう、これで俺はまた戦える――!」【世界を救う】
第139話「こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くもセントフィリア王国国王クロウ=アサミヤ陛下にあらせられるぞ!」
第139話「こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くもセントフィリア王国国王クロウ=アサミヤ陛下にあらせられるぞ!」
◇
「――というわけなんだけど」
俺が女性からの聞き取り調査の結果をアリスベルに報告すると、
「ビッグモードがそんな悪徳商会だったなんて初耳なんだけど」
アリスベルは最初は驚きに目を大きくした。
「俺は実際にこの目で見たんだ。なにより俺の勇者の勘が、隠しきれない悪意を感じ取った。なぁアリスベル、ビッグモードを調査できないかな?」
「分かった。おにーさんの勘はすごく良く当たるもんね。すぐに内偵を入れてみるね」
「さすがアリスベル、話が分かる!」
「とか言いながら、抱き着いてさも当然のようにお尻を触り出すのは止めてね。ただでさえ忙しいのに、内偵もしないといけないんだから。ぶっちゃけおにーさんとえっちっちしている暇はないんだからね?」
「……はい」
俺はアリスベルのお尻から泣く泣く手を引いた。
ビッグモードよ、俺とアリスベルとの貴重なえっちッちタイムを奪った貴様らを、俺は絶対に許さんぞ!
絶対にだ!
その後、セントフィリア王国軍の中でも潜入捜査に長けた特殊な諜報部隊から、ビッグモードに潜入捜査員が派遣された。
さらに馬車の修理や買い替えを実際に行ってみて――幸か不幸か、壊れた馬車は王宮にはいくらでもある――同じように不正な買い取りがされたのを確認する。
そして満を持して、セントフィリア王国軍が大々的な強制捜査に入った。
王都にあるビッグモード全店舗に、開店直後に大人数の捜査部隊が入り、資料の全てを押収し、スタッフを引っ立てては尋問していく。
ちなみに本店には国王である俺も――近衛騎士の軽鎧を装備して凛々しい姫騎士モードになったフィオナを伴って――直々に乗り込んだ。
「お、お前はあの時の客! まさか騎士団の手先だったのか!」
「これはいったいどういうことでしょうか! いったい何の根拠があってこのようなことをするのです! 訴えますよ!」
ビッグモード本店の店長と、居合わせた(というかいる日を狙って捜査に入った)ビッグモード会長が怒りの形相で抗議の声をあげるが、
「『お前』? 『訴える』? この無礼者めが! こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くもセントフィリア王国国王クロウ=アサミヤ陛下にあらせられるぞ!」
フィオナが凛々しい姫騎士の口調で一喝すると、途端に血相を変えた。
「げえっ!? まさか国王陛下だったなんて!?」
「く、クロウ国王陛下ですって!? なぜ陛下がこのようなところに!?」
「お前たちの悪事の噂をお耳に挟まれたクロウ国王陛下は、僅かな不正も見逃すまいと御自らご検分にお越しになられたのだ! 以降この件に関する嘘・偽り・沈黙は全て、国王陛下への不敬罪、ひいてはセントフィリア王国に対する国家反逆罪となる。死刑になりたくなければ、誠心誠意を尽くして取り調べに臨むことだ」
「そんなバカなことが……」
「お、終わった……」
「で? お前たち、いつまでそうしているつもりだ? 国王陛下の御前であるぞ! 頭が高い! 控えおろう~!」
「「は、ははぁっ!」」
ビッグモード本店の店長と会長が、血相を変えてひれ伏した。
ふふん、見たか!
いつも城を抜け出してはアリスベルたちに怒られている俺だけど、実はとても偉いのである。
今回は貧乏貴族の三男坊クロノスケではなく、クロウ国王としてやってきている。
こういう時には遠慮なく権力を使わないとな。
あと姫騎士モードのフィオナがカッコ良すぎて困る。
超カッコいい。
知ってたけど。
「ま、そういうことだ。これは国王である俺の勅命だ。もし何の問題もなければ、俺が直々に謝罪をした上で、ビッグモードを特A級の御用商人に取り立てると約束しよう。何の問題もなければ、だがな」
こうして大規模な立ち入り調査が行われたんだけど。
そうしたら出るわ出るわ、まさに不正のオンパレードが白日の下にさらされたのだった。
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