第131話 リヨンvsアリスベル、直接対決!

 俺とリヨンが服を着てから、改めて俺、リヨン、アリスベル、フィオナは、執務室で話を再開した。


「ねぇリヨンさん、ちょうどいい機会だからもうハッキリさせちゃおうよ?」


 最初に口を開いたのはアリスベルだった。


「ハッキリってなんのこと?」


 服を着たことで落ち着いたのか、貞操が守られていたことに安堵したのか。

 すっかりいつもの調子を取り戻したリヨンがサラリと返す。


「もちろん、おにーさんのこと」

「私とクロウがなんだって言うのよ?」


「埒が明かないから単刀直入に言うけど、リヨンさんはおにーさんのことが好きだよね? 昨日の夜のことだって、熱が出たせいでつい本音が出ちゃったんだよね?」


「アリスベル。なにか致命的な勘違いをしているみたいだけど、私がクロウを好きなわけないでしょう? 昨日の私はただ心が弱って錯乱していただけ」


 リヨンがきっぱりと言った。


「そうだぞアリスベル。急に何を言ってるんだよ?」

 俺もそれに同調しようとして、


「ごめんね、これはとっても大事な話だから、おにーさんはちょーっとだけ黙っててくれるかな? 話なら後でいくらでも聞いてあげるから」


「お、おう。分かった」


 しかしアリスベルにニッコリ極上の笑顔で言われた俺は、素直に口を閉じることにした。


「ねぇ、リヨンさん」

「なによ」


「さっきも言ったけど、自分の心に素直になるいい機会だと思うんだよね」

「私はいつでも素直――」


 リヨンがまたまたサラッと返したその言葉尻に被せるようにして、


「アタシもフィオナさんも、リヨンさんとなら一緒でもいいって思ってる。だからアタシたちに気を使う必要はないから」


 アリスベルがとても真剣な声色で、言葉を紡いだ。


「だから私は別にクロウの事なんてなんとも思ってないし、アリスベルやフィオナに気を使ってなんかいないわよ。全部アリスベルの思い過ごし」


「それならそれでいいんだけどね。そうだって言うんなら、アタシもこのことはもう、金輪際言わない。アタシの勘違いだったってことにするから」


「だから勘違いだってば――」


「だからよく考えて答えてね。きっとこれは一生で一度の選択。さっきのはノーカンにしておくから、全部踏まえた上でもう1度、答えを聞かせて?」


 アリスベルがそれはもう真摯しんしな声色で、リヨンに語り掛けた。

 だけど何を言おうと、リヨンはいつものようにサラリと返すだろうと、俺は高を括っていたんだけれど──。


「…………」


 ここでリヨンは黙り込んでしまった。


 深く考え込んでいるようで、言葉を発そうとしては、言いあぐねるように口を閉ざしてアリスベルやフィオナ、そして俺の顔にチラリ、チラリと視線を向けてくる。


 しばらく黙っていてと言われた俺を含めて、沈黙が4人の間を支配した。


 な、なんか空気が重いな。

 ジリジリする切迫感があるっていうか。


 って、いやいや。

 なんだよこのリヨンの反応は。

 完全に想定外なんだけど。


 だってここで悩むってことは、リヨンは本当に俺のことを好きってことになってしまうんだが――。


「リヨンさん、どう? 答えは出た?」

 しばらく沈黙が続いてから、アリスベルが優しく問いかけた。


「わたし、は――」

「うん」


 果たしてリヨンはなんと言うつもりなのか。

 俺はゴクリとのどを鳴らして、リヨンの次の言葉を待った。

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